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異世廻転生  作者: しかくかに
一章 首都近郊編
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一章#44 戦後処理

不滅の炎を操る導士、馬谷 良秀(うまや よしひで)は死んだ。だが、犠牲と死にゆく様から『勝利』と心の底から高らかに叫ぶ者は一人もいなかっただろう。

自分たちは勝っていない。相手が死を選んだだけだ。


何せ翔賀(しょうか)たちは奴の世怨を見ていないのだから。余力を残したまま相手が死んだ。

皆口にはしないが、こういった共通認識が広がっていた。


そして今は戦後処理の只中である。普段は戦闘を行った部隊が処理することは有り得ないくらいなのだが、今回は特別だ。延焼の被害は抑えねばなるまい。

一部の負傷者とその護衛に少数を先に帰還させ、戦後処理に当たる。


「軽症者と火傷をしたものはこちらへ!」

薬袋伊那(みないいな)はそう声高に叫ぶ。こういったことをするためにはるばる戦場まで赴いたのだ。

一人の火傷被害に対し、二人が動員される。一人が負傷者の頭に手を当て、もう一人が外科手術を施す。ナイチンゲールもびっくりな野外治療である。


燃える表皮を慎重に切り取り、えぐれた部分を『陽の水』の治癒術によって再生する。麻酔も何もないが、患者が痛みに悶えることはない。薬袋曰く、『陽の木』は強力に作用させると脳が傷を負っていないという錯覚を起こすらしい。つまりはこれがこの世界における麻酔の代わりと言える。(まさる)がどうやって施術されたのか分からなかったが、一つの疑問が解消された瞬間である。


そして思うのだ。魔法って便利だなぁ、と。


~~~~~~~~


同時刻、妹乃(せの)は消火活動に当たっている。いや、火が消せないのだから正確に文字に起こすなら『滅火』が正しいだろうか。

方針としては燃えるものをなくしてしまおう、というものだ。塵の一つまで完全に燃やし尽くし、火の元を断つのだ。


そのため、場所によれば消火のために火を浴びせるという珍妙な状況が出来上がっている。

炎が移っている場所を『陰の土』によって持ち上げ、持ち上げたそれを焼き尽くす。

妹乃は軽々と複数をそれも最小限に地面を削り、宙へと上げる。

何を隠そう妹乃は『陰の土』が最も得意なのだ。


胸を張って「任せてください!」と言える部分である。

そして最後に残っているのが導士の遺体である。それに対し、全員が躊躇する。

『陰の土』根本は『死操』である。遥か昔、神術の起こりの時代。『死』を偽装しようとした神官がこれを編み出した。それ以来『陰の土』の人、人体への使用は禁忌とされてきた。

神官となった者ならだれであろうと知っている世の中の禁忌なのだ。それの使用を彼ら、彼女らは求められている。


「皆は先に戻れ。後は私がやろう」

「ですが、(あおい)将軍……それでは……」

「よい。誹りなれば私が受けよう」


これにて戦後処理の終わりである。

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