一章#18 対応策
「………なるほど、これが『対応策』ですか。」
「そうだ。私だけの考えだが、将軍はどう思われる」
「神術は大将軍様が最も得意とするところ。私などの反論では議論にすらなりえないでしょう」
「それもそうかもしれぬな」
「それにしてもお早い。まだ一日も経っておりませぬ」
「早いに越したことはないだろう?それに各方面の将軍が頑張ってくれているからね。私はこちらの方面に集中できる。皆のおかげだよ」
「では、例の導士は私に任されると考えていいのですな」
「そうだ。人員も可能な限り補充しよう。将軍の戦果を期待する」
「ハッ!!!」
袖を翻し、斯波嘉達は部屋を出て行った。
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ー撤退後間もなくー
翔賀は吐いていた。生肉と骨を断つ感覚が手から離れない。気持ちの悪い感覚が脳を焼いている。人の悲鳴と血しぶきを耳と目が覚えている。
「かなり酷いですね。ここまでの人は初めて見ました」
茜色の髪を揺らしながら薬袋伊那は呟いた。
「命は大丈夫でしょうか?!」
「命は大丈夫ですね。最悪の場合、精神がぶっ壊れますが」
「それ大丈夫じゃなくないですかね?!」
「最悪の場合です。そんなことは………」
見たことがないレベルの重症者を前に伊那は言うが、説得力はイマイチだ。
「横に付いた方がいいですかね?」
「………その方がいいかと」
「では、上に報告だけ行ってきます」
望門は走っていく。医局なので大きな音は立てないで頂きたい。翔賀を一瞥したのち、伊那は去る。
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太陽が照る中、『対応策』が伝えられた。
「奴は水を操る!よって次に雨が降った時が決戦だと考えよ!」
いつになるとも分からぬ日に向け、演習は行われる。いつの日かの勝利を求めて。
「おばあちゃんはね、これからとっても辛くて暗い旅行をするの。だからちゃんと翔賀たちが唱えて導いてあげないといけないの。わかるよね?」
分からない。分からないよ。なんで死んでもゆっくりさせてあげないの?どうして安らかになってくれないの?
分からない。




