一章#14 意味の分からない少女
「らりー、あの人、知ってる?」
白い髪の可憐な少女は誰もいない中、そう呟く。
(怖い怖い怖い!)
俺だけ見えていないのか、彼女だけに見える”何か”があるのか。後者なら王道のホラー展開である。
「ん?澄か、どうした?こんな所普段来ないだろ」
「お迎え、連れ戻して来いって。梓が見つけたから」
途端、勝の表情が変わる。狩りを楽しむ狼虎のような獰猛な笑みだった。
「よし!!行くぞ、澄!!」
「うるさい~」
ぷくっと顔を膨らませ、澄は勝を見つめている。
「よしよし、かわいいからな」
「うぅ~………らりーも言わないでよぉ~」
スッと首をすくめた澄の頬が僅かに紅潮しているのが見える。
「ほら、お前も行くぞ」
「え、俺も?!」
「お前連れて行かないとオレが怒られるんだよ!」
監視がどうとか言っていたのだからそりゃあそうか。勝を先頭に三人は駆けていく。
「………どうなってるんです?それ………」
「………だって足疲れたもん」
宙に浮いたまま本当に意味の分からない力で等速直線運動をしている澄さん。椅子か何かに座っているように見えるが肝心な椅子は何処にも見当たらない。足をパタパタさせて実に楽しそうである。
「勝、あれどうなってんの?!!」
「ん?一緒の戦場になったらわかるかもな。それまでは秘密だ」
現代知識をもってしても意味の分からない事象をお隣に据えながら翔賀は進んでいく。
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「あ!来たよ!」
「翔賀!お前はこっちだ!」
望門に手を引かれ、自分の部隊の元に連れていかれる。
先日よろしくの鎧へと足早に着替え、盾と脇差しを装備。
「皆、揃ったな。出陣だ!!!」
異世界生活二日目にして二度目の戦場である。
鉄と土のにおいの充満する戦場へと部隊は進む。
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「花は美しい。生まれ出る時も、開くときも、そして果てるときも」
女は愛でていた椿の花弁を一枚ちぎり、捨てる。ちぎった花弁がたちまちに萎れ、鮮やかな赤が曇ってゆく。芳しい香りが失せ、枯れ果てる。腐臭を一切発する事なく一瞬で。




