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第8話 レオノーラの決意

 ガン・ショップから出てきた。レオノーラと仁に、ドラコニスが言った。 

「銃も揃ったか……それじゃあ、莫連組の組事務所に行って土地の権利書を奪うか」

「まだ早い……ガンファイターの助っ人が一人必要だな心当たりがある、あの女だったら【野良猫亭】が開店する前のこの時間なら、ファストフード店にいるはずだから交渉してみる」

 仁の指示で、カプト・ドラコニスは町に一軒だけあるファストフード店に向かった。

 仁・ラムウオッカとレオノーラが店に入ると、カウンター席でシスター・メルセが虫バーガーセットを食べていた。

 仁がスカイブルー色のヘソ出し修道服を着た、シスター・メルセに言った。


「よっ、メルセ、久しぶりだな」

「何か用?」

 メルセは顔面ほどの大きさがあるバンズに素揚げした迷彩バッタを一匹丸ごと挟んだ、豪快なバッタバーガーにかぶりつく。

 素揚げしたバッタの肉汁がブシュゥゥと溢れる。

 食用ゴキブリから抽出したエキスから作った、茶色のシェイクをストローで飲みながらメルセは横目でレオノーラを見た。

「仮装大会……ってワケでもなさそうね」

 メルセの視線はレオノーラの太モモに装着された、レッグホルスターに収まっている黄金銃に注がれる。

「その銃は……まさか、伝説の銘銃レオン・バントライン⁉ そうか、本気でバグに」

 仁がシスター・メルセに事情を説明する。

「メルセの二丁拳銃なら、レオノーラさまの力になれるだろうからな……無法憲章に新人バグが、最初にコトを起こす時には、同種の先輩バグが一度だけサポートをする決まりがあるのは知っているだろう」

「それで、あたしのところに来たワケ……いいわよ、サポート助っ人引き受けた。報酬は……」

 メルセは人指し指を立てる。

「一億ナグルナ〔銀牙系共通の億以上の通貨単位〕で」


 仁が怒鳴る。

「ふざけるな! 天才医師剣客の要求報酬じゃあるまいし」

「冗談よ、バグ報酬の相場は知っているから……でも緒羅家の人間だったらある年齢に到達すると、個人名義の口座が作られて。それ以上の金額が、おこずかいとして毎月振り込まれていて使い放題だって聞いたけれど……では改めて希望報酬と交渉を」

 今度はメルセは、指を三本立てた。

「少し困難な仕事っぽいから、通常報酬に上乗せして三十万ナグルナで〝不殺の誓い〟を立てたバグからなら四十万ナグルナ」

 仁がメルセの示した金額を聞いて苦笑する。

「緒羅家の人間だから、金額ふっかけたな……普通ならそんな金額の提示はしないだろうに」

 レオノーラがメルセに質問する。

「〝不殺の誓い〟ってなんですか?」

「バグは三種類に大別されるの『バグ・ヴィラン』これは残虐非道の最低バグで、バグ仲間の中でも蔑まれ嫌われている存在ね。次は『バグ・ファジー』これは、場合によっては相手の命を奪ったり。ぶちのめすだけに留める中間バグね……あたしとか仁が含まれる、三番目のバグが」


 シスター・メルセが、一呼吸置いて言った。

「不殺の誓いを立てた『バグ・フリーダム』いかなる場合も相手を殺さず、ぶちのめすのみ──バグ仲間からは尊敬されるけれど、バグが不殺を貫くのは至難よ」

 レオノーラが、キツネの尻尾のような後髪を揺らして言った。

「それじゃあ、ボクは〝不殺の誓い〟を立てた『バグ・フリーダム』になる!」

「その決意、見届けてあげる」

 メルセは取り出したナイフで、レオノーラと自分の指先を少しだけ切って言った。

「汝、緒羅・レオノーラ──これよりバグの修羅道へと赴く〔おもむく〕これ以上の血を流さない〝不殺の誓い〟を今ここに……」

 メルセは傷つけた、レオノーラの指先を口でしゃぶりながら言った。

「んん……ペチャッ……あたしの傷ついた指をナメて。それで〝不殺の誓い〟の儀式は完了する」

 レオノーラは、メルセの指を口に含んだ。

 儀式が終わったメルセが言った。

「それじゃあ、害虫退治に出発しましょうか」


 小一時間後……莫連組屋敷の門を、ぶっ壊して屋敷の敷地内に突っ込んできた、カプト・ドラコニスが運転するレオノーラたちが乗ったオープンタクシーがあった。

 門が破壊された衝撃音に屋敷の中から、ピンク色の肌に青い虎縞模様がある。異界サルパ軍残党の『莫連組』の若衆が光弾チャカ〔拳銃〕や宇宙長ドスや、鎖の先端にトゲトゲの金属球が付いた武器などを手にワシャワシャと飛び出してきた。

 レオノーラたちに向かって吠える莫連組の雑魚たち。

「なんだ! おまえたちは?」

「どこの組のもんだ!」

 車から降りたカプト・ドラコニスが、からかい口調で言った。

「莫連組の駐車場は、この狭い庭でいいのかい?」

 からかわれて、怒る莫連組の雑魚。


「ふざけやがって!」

「やっちまぇ!」

 カプト・ドラコニスが口から火を吹く。

「おらおら、炙ってもらいてぇ奴は、どいつだ!」

 仁・ラムウオッカが鞘から魔刀を引き抜いた、禍々しいオーラを放つ漆黒の刀身に赤い炎の刃紋が浮かぶ魔刀の刀身表面が脱皮をするように剥がれ、中から輝くクリスタルの刀身『真・刀』が現れる──仁の剣気が刀身を包む。

 仁は長ドスを構えて囲む雑魚たちに向かって、朱ヒョウタンの救世酒を飲みながら言った。

「オレの名前は、仁・ラムウオッカ・テキーララオチュウ・ギンジョウ……」

「名乗りが長げぇんだよ!」

 雑魚たちが一斉に、仁に襲いかかる。

「チッ!」

 舌打ちした仁が振るう一閃の剣技に、雑魚たちは倒れる。

 剣気がコーティングされた刀身を、鞘に収めて仁が言った。

「ちったぁ名乗らせろ〝不殺の誓い〟を立てたレオノーラさまが近くにいる時は、剣気で刃が斬れないようにしてやる……峰打ちみてぇなもんだ、命拾いしたなてめぇら」

 シスター・メルセも光弾短銃を持った連中に向けて、腰の二丁拳銃を抜くとトリガーを引いた。

 メルセの銃からは何も発射しない……相手の生気を吸い取るのが、メルセの吸収二丁拳銃だ。

 死なない程度に生気を奪われた男たちが、次々と意識を失い倒れていく。

「バーン!」

 メルセが銃発射の擬音を発するたびに、男たちが倒れていく姿は滑稽だった。

 数十分で、雑魚たちは片づいた。


 カプト・ドラコニスが、ほどよく小麦色に肌を焼かれ、地面でのたうち回っている雑魚たち眺めて言った。

「土地の権利書がどこにあるのか聞くの忘れたな」

 仁・ラムウオッカが、剣気の峰打ちで倒れた雑魚たちを鞘の尻でつつきながら、チラッと少し離れた茂みを見て言った。

「大事なモノだ、金庫の中に保管してあるか、ボスが持ち歩いているんだろうよ──土地の譲渡書と一緒に」

 シスター・メルセも、生気を奪って倒れた雑魚をブーツの足先でツンツンしながら。

 仁と同じく、レオノーラの近くにある、風も無いのに少し揺れた茂みを見ながら言った。

「それじゃあ、牧場を掘り起こしている場所へ向かうとしますか……地下で白い洞窟と繋がっていると噂されている牧場へ」


 三人が茂みの方角に意識して背を向ける。

 何もする前に終わってしまって、唖然としているレオノーラの背後の茂みから、トゲ鉄球がついた鎖を振り回しながら隠れていた雑魚の男がレオノーラに襲いかかってきた。

「くたばれぇ! 小娘!」

「きゃあぁ⁉」

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