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仁・ラムウオッカ〔子供時代〕②

 宇宙日本刀を手に立ち上がって仁を睨む剣の鬼人。

 動じない仁に、鬼男はつかんだ刀を台にもどして言った。

「そこまで言うなら、試してやる。毎日、山を登って一ヶ月ここに来い。何も持ってこなくていい……それが出来たら、弟子も考えてやってもいい」

「わかった」

 その日から、仁・ラムウオッカの弟子入り通いがはじまった。

 

 一ヶ月が経過した、その日は朝から風雨で荒れた天候だった。

 洞窟の入り口を閉めている木製の扉が、風でガタガタ揺れる。

 焚き火の近くで、木の串に通した、ゾバットラの鼻肉を焼いている鬼男が呟いた。

「さすがに、この天候じゃ山を登っては来れねぇか」

 鬼男は、三日前に仁が仕留めて運んできた。

『ゾバットラ』を見た。

(まさか、こんな短期間で山のケモノを仕留める程の力をつけるとは……何者だ、あの小僧)


 扉に打ちつける風雨の勢いが増す。

「扉に(かんぬき)をして戸締まりしてくるか……どうせ、あの小僧も来ないだろうから」

 立ち上がった鬼男は扉に近づき、扉を開けようとグイグイ押してくる風の勢いを力で押さえつけて横棒の(かんぬき)を掛けると、さらに板を扉に打ちつけた。


「これで良しと……強風の野郎、入ってこれるもんなら入ってこいってんだ」

 扉から離れて、焚き火の近くで胡座(あぐら)をかいて。

 焼けた鼻肉を肴に酒を呑んでいると。

 外を吹き荒れる風の勢いが弱まってくるにつれて、扉を叩いたり蹴る音が聞こえてきた。


「まさか……」

 急いで閂を外して扉を開けると、吹き込む強風と豪雨の中……びしょ濡れで扉の外に立つ、仁・ラムウオッカの姿があった。

 虚ろな目で仁が言った。

「今日も来たぞ……弟子にしろ……どうして、扉を押して中に入ろうとしたら、いきなり閂で扉を閉めて……」

 それだけ言うと、仁はドッと前に倒れた。


 洞窟の中の焚き火の近くに、寝かされていた仁は目覚めた。

 額には鬼の万能薬袋が乗せられていた。

 仁を介抱している赤鬼が言った。

「オレの負けだ、本弟子にはできないが仮弟子にならしてやる……これからは、ここに通うのは三日に一回でいい。その時に何か必要なモノがあれば伝える、買って持ってきてくれ」


 鬼男は、愛用の金棒を手にして言った。

「オレは、人に物事を教える大器じゃない……仮弟子のおまえが勝手に見て覚えろ、いいな」

 仁がうなづき、その日から師弟関係の修業がはじまった。


 数日後──仁は、鬼男と並んで舟の槽で自作した木刀で、片手素振りをしていた。

 師匠の赤鬼男は、金棒を片手で軽々と素振りをしている。

 仁は素振りをやめると、鬼男が振っている金棒を指差す。

 鬼男が言った。

「なんだ、この金棒を振ってみたいのか」

 地面に金棒を置く鬼男。

「持ち上げてみろ」

 仁が地面に置かれた金棒を、両手で持ち上げようとする……金棒は持ち手の辺りが数ミリだけ持ち上がっただけだった。

 鬼男が高らかに笑う。

「おまえには、金棒はムリだ……今日は帰れ、片手素振りは疲れただろう」

 仁は素振りをしていた方の腕を擦りながら、頭を下げて去っていった。

 仁の姿が見えなくなると、鬼男は複雑な表情で、数ミリ持ち上がった金棒を見た。

(なんてヤツだ、子供なのに重金属の金棒を持ち上げやがった。何がアイツをそこまで、強く揺り動かしている復讐心か?)

 鬼男は、自分はとんでもない剣の悪鬼を育てているのでは? と、不安になった。


 数日後──鬼男の師匠は、仁を川原に連れてきて言った。

「久しぶりに大岩を斬りたくなった……村の広場には、まだオレが真っ二つにした岩があるか?」

「ある……村を守る『鬼岩』と呼ばれている」

「そうか……たまたま、立ち寄った村にあった岩を斬っただけなんだがな……今日は、あの岩を斬ってみるか」

 金棒を構える鬼男の全身から、陽炎のような剣波が噴き出し、振った金棒から放たれた剣波が大岩を真っ二つにする。


「今のが基本の剣波だ、刀の表面にコーティングをすれば、切れる刀を峰打ち刀で使うコトもできる……その逆もありだがなやってみろ」 

 仁は木刀を、少し溜めて構えると小さめの岩に向かって木刀を振るった。

 岩に変化はない。

 鬼男が軽く笑いながら言った。

「まだまだだな、初めての剣波は気力を使うからな疲れただろう……今日はこれで帰れ」

 一礼をして仁が去ると、鬼男は険しい表情で仁が割ろうとした岩に横に剣波で斬る。

 表面が無傷な岩の内部には、刀で斬ったような傷が残っていた。

「内部斬り……オレでも修得するのに、一年はかかった剣技を数日……ん!?」

 鬼男は、岩の後ろに転がっている拳大の石が、真っ二つになっているのを見て冷や汗が流れる。

(バカな……物体を通過させて背後のモノだけを斬る高度な剣技……二種類の異なる剣技を、子供が無意識に同時に放ったのか……あり得ない)

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