第15話・迫る陰謀
先頭を金属生命体の軍馬に乗った美鬼・アリアンロード、そのすぐ後ろをグリフ・ヒロエ。
少し間を開けて、美神アズラエル、ヤナ・ラーマ、ジモ・ルーン。
さらに少し間隔を開けて軍人ゲシュタルトン、悪商エントロピーヤン、ネットいじめの加害者生徒たちが続き。
最後に、少し離れ気味に教頭と悪食バハムートが続く。
一行がアミダくじのような、横道がある通路を進んでいた時……突然、天井や壁が美鬼たち一行を分断するように遮断してきた。
「うわぁ⁉」
「危ない!」
さらに、教頭とバハムートのいた位置より前方の通路も動いて、迷路の構造も変わる。
列は美鬼アリアンロードとグリフ・ヒロエ。
美神アズラエル、ヤナ・ラーマ、ジモ・ルーン。
軍人ゲシュタルトン、悪商エントロピーヤン、ネットいじめの加害者生徒たち。
教頭と悪食バハムートの四つに分断された。
後方の者たちと分断されてしまった、美鬼が言った。
「おやおや、大変なコトになってしまいましたわね……先へ進みましょう、目的地は同じですから必ず合流しますから」
そう言って美鬼は先へと進み。
他の一将から三将が含まれる分断されたグループも、それぞれの横道で最深部へと向かった。
一番後ろを歩いていて、後方の通路が塞がっていない教頭が嬉しそうに、バハムートに喋りかける。
「これは、もどった方がいいな……君もそう思うだろう」
生徒を平然と見捨てる教頭だった。
「バフフフッ」
悪食バハムートが大口を開く──バハムートには、食べた物を完全消化する胃袋と、さまざまな空間へ繋がる胃袋の二つがある。
その空間に繋がる胃袋の方から、たくましい体躯をした青い甲殻種族の宇宙人がニュッと出てきた。
テッポウエビのような風貌で、両手が長いボクシンググラブの形をしていて腰布を巻いた。
第六将・怪力者『爆殻』だった。
背中には月うさぎ種族が持っている、杵のような打撃系武具を背負っている。
バハムートが爆殻に電子通訳板を通して言った。
「バフゥバフゥバハハハ(迷路で美鬼さまと分断された……壁を壊して活路を)」
うなづいた爆殻が壁を軽く手で殴打すると、壁に衝撃波が広がり破壊される。
壁に潜んでいた黒砂衆の数人が、衝撃波を受けて吹っ飛び気絶する。
腰を抜かした教頭にバハムートが電子通訳板で言った。
「バフッフフフッ(これで前へ進む道ができた……行くぞ、おっさん)
爆殻が衝撃波で壁を破壊していた時……ゲシュタルトンとエントロピーヤンと、ネットいじめ生徒集団のグループは『黒砂衆』の襲撃を受けていた。
黒い霧の中に浮かぶ、不気味な目の集団に取り囲まれたゲシュタルトンとエントロピーヤンは、グルグルと周囲を回りはじめた黒砂衆を警戒する。
エントロピーヤンが言った。
「ここで生徒たちを一人でも傷つけられたら、美鬼さまから大目玉でゲロス」
「久しぶりに、アリアンロード十五将の実力を見せてやるか」
ゲシュタルトンの片腕が殺傷力を抑えた光弾マシンガンライフルアームに……片足が膝から弱い衝撃弾を発射する、ミサイル弾フットに変わる。
ゲシュタルトンの体は、禁断の科学で別の場所にある機械体を空間転移して、生身の肉体箇所と一時的に交換するコトができる。
ゲシュタルトンの光弾マシンガンアームと小型ミサイル弾フットが、黒砂衆を蹴散らす。
「なかなかやるでゲロスね、ゲシュタルトン……こちらも負けていられないでゲロス」
エントロピーヤンが口に巻物のようなモノをくわえ、忍者の印を結ぶと白煙の中から五メートルほどの人型ロボットが出現した。
頭に金属の五右衛門チョンマゲを生やして、フンドシ一丁でカエルしゃがみをしたロボットの背中に乗ったエントロピーヤンが。
レバーとハンドルで操作をすると人型ロボットは太い腕の張り手と、両目からの怪光で黒砂衆を次々となぎ倒していく。
「あ、絶景かな、絶景かなで……ゲロス」
エントロピーヤンは人型ロボットの上で歌舞伎のような見栄をきった。
迷路を進む美神アズラエルとヤナ・ラーマ、ジモ・ルーンのグループは。手で持てるサイズの錆びた金属棒が通路の端に散らばる場所へとやってきた。
レンガ積みされた壁の欠けた部分から覗いている、錆びた歯車のようなモノを見てアズラエルが呟く。
「どうやら、放置されている古代金属の棒は、迷路のカラクリに使うための部品廃材のようだ」
アズラエルの後ろから歩いていた、ジモ・ルーンが不機嫌そうな口調で言った。
「いい加減、説明してくれないかな……どうして、あたしがこんな陰気な場所にいないといけないのか……天使のあなたなら説明できるでしょう」
アズラエルが歩みを止める。
「本当にそこまで言わないとわからないのか──自分が今まで陰で行ってきたコトが、誰にもバレていないと思っているのか」
「いったい何を言っているのか、あたしにはサッパリわからないんですけれどぅ」
美神アズラエルが厳しい目でルーンを睨み、ルーンは一瞬たじろぐ。
「美鬼さまが直接伝えるまで黙っているつもりだったが、もう我慢できない──おまえだろう、グリフ・ヒロエへのネットいじめを先導している主犯格は」
ギクッとした表情をするルーン。
「何を証拠に、あたしはクラス長として、クラスのみんなと仲良くするように……ヒロエさんに助言を」
「とぼけるな、美鬼さまが言っていた『この銀牙系に性悪女は二人もいらない』と……匿名の書き込みだから、人物特定はできないとでも思っていたのか」
アズラエルの言葉に、ルーンから含み笑いがもれる。
「ふふっ……バレていたならしょーがない。そうよ、あたしが先頭に立ってヒロエをインターネット内でいたぶっていたのよ──それがどうした」
ルーンのふてぶてしい態度に、拳を握ったラーマが震える声で言った。
「やっぱり、そうだった……ヒロエに積極的にクラスに馴染むように、しつこく言っていたから怪しいと思っていた」