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第14話・学園の策略地下迷宮

 その頃……ゴージャス感に溢れる床も壁も天井も金色に輝く、学園長と教頭の専用トイレで教頭は鏡に映っている黒砂衆のリーダーと会話をしていた。

 どんなマジックを使っているのか、わからないが背後を裸眼で見ても黒砂衆のリーダーは立っていない。

 猫の目のような両目を覆面の間から覗かせている、リーダー格の男が言った。

「当初と暗殺するターゲットが変わっても、依頼を遂行していいんだな──美鬼アリアンロードを抹殺すればいいんだな」

「こうなったからには、しかたがない……計画通りに学園地下の遺跡迷路に行くように仕向ける」

 私立ググレカス学園は、衛星写真で上空から見ると前方後方墳のような四角形と台形をくっつけた人工山の四角の方に建てられていて。

 台形の方には町が広がっていた。

 そして、ググレカス学園の地下には古代遺跡の迷路がある。


 教頭が言った。

「遺跡の迷路を利用して、性悪女を始末しろ」

「わかった……しかし、このトイレは目がチカチカするな……落ち着かん」

 生徒がほとんど帰宅した学園の庭の木陰に背もたれ座り、スケッチブックにナラカ号のラフ画を鉛筆でデッサンしている、グリフ・ヒロエの姿があった。

 ナラカ号が出現した時には、スマートフォンのカメラレンズを空に向けていた生徒たちも、部活動をしている少数の生徒を除いて帰宅している。

 ヒロエがデッサンを続けていると、スケッチブックを背後から覗き込んで話しかけてきた人物がいた。

「きょほっ、上手な絵ですわね……素敵な絵ですわ」

 驚いたヒロエが立ち上がって振り返ると、そこに美鬼アリアンロードが立っていた。

 美鬼の後方には、銀色の軍馬と、神話から抜け出てきたような美少年の天使が立っている、美鬼が言った。

「さすが、アズラエルが学園に残っていた女子生徒に訊ねると──話しかけられた女子生徒は目をハート型にして、グリフ・ヒロエがどこにいるのかすぐに教えてくれましたわね……寄宿舎の部屋から学校に通っているんですって──少しお話ししましょう」


 美鬼は額の両側にある半球体の眼球をグルグル動かしながら質問する。

「あなた、ネットいじめを受けているそうですわね……相当酷いコトも書かれていますわね、書き込んでいる相手には、このまま続けてもらいたいですか? それともやめてもらいたいですか? いじめられて感謝していますか? それとも書き込んだ相手に対して憎しみと殺意を抱いていますか?」

 奇妙な選択の質問だった。

 閉じたスケッチブックを胸元にギュッと抱えたヒロエは、目に涙を潤ませると震える小声で言った。

「やめてもらいたい……相手には憎しみと殺意を抱いている」

 ヒロエの言葉に、うなづく美鬼。

「正直な返答ですわね──わかりましたわ、わたくしがなんとかしますわ泥舟に乗った気でいて欲しいですわ……きょほほほほっ」

 美鬼が手の甲を口元に添えて高笑いをしていると。

 ヤナ・ラーマが小走りで駆けてきた。

「探したよヒロエ、すごいよボクが銀牙系に発信した短文で、性悪女の美鬼アリアンロードが、この星に……あッ!」

 ヒロエの近くに立っている美鬼の存在に気づいたラーマは、慌てて軽いカウンターパンチを美鬼の頬に向かって放つ。


 これが、惑星イイーネの初対面者に対する最大の詫びの行為でもあると知っていた美鬼は、顔を歪ませてラーマの拳を頬で受け止める。

「ぎょぼぼっ、性悪女は、わたくしには最高の誉め言葉ですわ……あなたが、ヒロエの親友のラーマですわね、あなたに対する悪劣な書き込みも拝見しましたわ」

 美鬼の頬から拳を引くラーマ、美鬼がヒロエとラーマに言った。

「今日は夕暮れも近づいてきましたので、校舎の壁に張られているはずの巣に戻りますわ……ラーマも泥舟に乗った気でいてください、最後に出会えたコトを感謝して三人で友好のトリプルカウンターを」

 三角点に立った三人が、三竦みのパンチを互いの頬に当てる。

 バキッ、ボゴッ、ドガッ。

 頬を赤くした美鬼が笑う。

「なかなか、いいパンチでしたわ……きょほほほ」


  ◆◆◆◆◆◆


 翌日……美鬼のところに第九将・悪食『バハムート』がやって来た。

 後ろ足で立ち上がった赤土色のカバのような姿をしていて、体には幾何学模様が浮かんでいる。

 美鬼がバハムートに言った。

「胃腸の調子はどうかしら?」

 バハムートの近くの空間に厚みがない電子通訳板が現れ、バハムートの言葉を通訳表示する。

「バフッ(すこぶる好調です)」

「それは良かったですわ、あなたも念のためにエントロピーヤンが用意した万能薬の小ツボを、受け取りなさい」

 校庭の端にある、盛り土のような場所の。

 鎖と錠で立ち入り禁止にされている地下迷路へ続く扉の前で、美鬼が集まった迷路突入者たちに言った。

「迷路突入の目的は、深部にある秘宝ですわ」

 ヤナ・ラーマとグリフ・ヒロエの他に呼び出された数名の生徒たちの中には、クラス長のジモ・ルーンも混じっている。

 不機嫌そうな顔で腕組みをして立つ、ルーンが言った。

「こんなに朝早くから、クラス長のあたしまで学園に呼び出して……迷惑です、いったい何ですか……この呼び出されたクラスの数名はどんな理由で」

 美鬼はルーンの質問を無視してアズラエルに指示する。

「きょほほ……アズラエル、封印された迷路の鎖を切断しなさい」

 美神アズラエルは血管のような赤い葉脈が走る、結晶葉の一枚をパキンと折ると扉の鎖を寸断した。

 扉を開けると、迷路へと続く階段と通路の両側には『永久照明石』が点々と埋めまれていて迷路内を照らしていた。


 美鬼が言った。

「最近、誰か別の入り口から迷路に侵入していますわね……長い年月、密封されていた空間の臭いではありませんわ……それでは古代遺跡迷路の探検をしましょうか」

 一行は石の階段を下りて迷路内へと入った。

 美鬼から離れた列の後方から、しかたなく迷路に入った教頭の困り顔は昨日から続いている。

 逃げ出したくても一番最後を歩くバハムートの視線があるので無理だ。

(どうして、こんなコトに……わたしまで)

 迷路の深部に不正の証拠があるというのは、美鬼を迷路に誘い込む教頭の嘘だった。

 教頭は背後に視線を感じて振り返る、黒い霧の中に黒砂衆の目だけが見え、迷路の壁にそって分散したのがわかった。

(この先で列を分断させるつもりか……迷路のトラップを使って)

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