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第13話【惑星ザイイーネ】

 小一時間後……数名の供を従えたアリアンロード家の性悪女、美鬼アリアンロードがググレカス学園の接待室にいた。

「きょほほほほ……わたくしのナラカ号の目安箱が、助けを求める愚民の声をキャッチしましたから来て差し上げましたわ……きょほほっ」

 口元に手の甲を添えて笑うたびに、美鬼アリアンロードの腰の両側数センチの空間に光波の妖精羽が現れる。


 金髪シーサイドアップのツインテール髪。グラディターハイヒール。

 額の両側に半球型で別々動く目があった。

 ミニ丈の振り袖ドレスの胸元から覗く胸の谷間は……巨乳の谷間だ。

「きょほほほ……ちなみに、わたくしの下着はブランド物の蛇皮の下着ですわ」

 誰も聞いていないのに勝手に下着自慢をする、自己顕示欲が強い女だった。

 織羅・レオノーラを勝手にライバル視していて、レオノーラと張り合うように厄介事に首を突っ込んでくる。

「ナラカ号がたまたまザイイーネの近くを、スチルス航行していたので──先を越されたレオノーラが悔しがっている顔が目に浮かぶようですわ、きょほほっ」

 対応している教頭は返答に困り、学園長は学園長室にこもったままだ。

 美鬼の後方には常に美鬼と行動を共にしている従者のアリアンロード十五将のうちの三将と。

 美鬼が背に乗って移動できる高さサイズの、金属生命体の軍馬がいた。


 美鬼と常に行動を共にしているのは……第一将・軍人『ゲシュタルトン』

 ひょろっとした長身の軍服宇宙人で。灰色の肌、張りついた灰色の髪。

 切り口のような唇が無い口に、鼻は二つの縦長の穴が開いているだけに見える。

 一見すると乾燥した灰色のミイラが軍服を着て立っているようだ。

 そして、ゲシュタルトンの一番の特徴は、細目の中にある眼球に、金色の黒目が二つ並んでいて猫の針目のような瞳がある……不気味な姿の乾きモノ宇宙人だった。


 ゲシュタルトンの隣には、惑星エドの商人が愛用している、(かみしも)(はかま)姿で、目が赤いアマガエル型のチョンマゲ宇宙人、鉛筆から陽子爆弾まで調達してくるアリアンロードの御用達商人……第二将・悪商『エントロピーヤン』がいた。


 ゲシュタルトンとエントロピーヤンから少しだけ離れて立っているのが、ギリシャ神話風の服装をして。

 背中から水晶のような葉っぱの蔓翼を生やした……第三将・美神『アズラエル』だった。


 三将から、さらに離れた位置に。全身に戦傷が残る銀色の金属生命体で片方の目が傷で塞がれた、美鬼の専用移動軍馬が控えている。


 やっと口を開いた教頭が美鬼に訊ねる。

「名門アリアンロード家のお嬢様のナラカ号には、どのような通信が?」

「この学園からの救いを求める声ですわ……来たからには、しっかりと解決しますわ──『惑星ザイイーネの私立ググレカス学園に、ネットいじめを受けている女子生徒がいる』との情報……放ってはおけませんわ」

 美鬼の言葉を聞いた教頭は、腰が抜けそうなほど驚いた。

(ネットいじめを受けている生徒? そんな亜空間通信を発信した覚えは……第二放送室から発信したのは『惑星ザイイーネの私立ググレカス学園に、学園長関与の不正入試の疑いあり』で……いったいどうなっているんだ?)

 白丸目で、ポカンとしている教頭を無視して美鬼は喋り続ける。

「まずは、ネットいじめを受けている生徒を探して話しを聞かないといけませんわね……たいがい、いじめを受けている生徒は報復を恐れて何も語ってはくれないものですけれど……きょほほほっ、ゲシュタルトン! 早速、行動を開始しますわ」

 金属生命体軍馬の背中に横座りをして、部屋から出ていこうとしていた美鬼は思い出したように教頭に言った。

「そうそう、ついでに『惑星ザイイーネの私立ググレカス学園に不正入試の疑いあり』というのも二番目に届いていましたから、そちらの方もついでに調査しておきますわ……きょほほほっ」

 美鬼アリアンロード一行が部屋から去ると、教頭はギザギザ歯を噛みしめた。

(ついでに調査するだと……⁉)


  ◇◇◇◇◇◇


 校内を軍馬に乗って進む美鬼に、ゲシュタルトンが質問する。

「で、我々は何をすれば、よろしいのですかな?」

「きょほ、とりあえず今夜の宿泊する場所の確保ですわね……第四将・虫操りの『飛羽(とびは)』の虫が吐く糸で学園の適当な壁側面にテント用の宿泊する巣を張らせなさい……巣が張られている間にヒロエを見つけて接触しますわ」

「ほとんどの生徒は帰宅してしまったようですが」

 美鬼がザイイーヌの夕焼けを見ながら言った。

「まだ、学園内に残っているかも知れませんわよ……念のために探しなさい、探す役目はアズラエルが適任でしょう」

 チョンマゲをしたアカメガエルのような、エントロピーヤンが美鬼に尋ねる。


「ゲロ、必要なモノがあれば揃えるでゲロス」

「エントロピーヤンには、キャンプ道具一式をお願いしますわ」

「了解したでゲロス」

 そんな会話をしながら野外に面した通路を進む美鬼たちを、離れた樹の蔭から覗いているヤナ・ラーマと。

 さらに離れた建物の壁から、ラーマと美鬼アリアンロードを監視している『黒砂衆』の目があった。


 美鬼アリアンロード一行を樹の蔭から眺めているラーマは思った。

(ボクが第二放送室から発信した文章が、美鬼アリアンロードを呼び寄せたんだ)

 空にナラカ号が現れる前……ラーマは第二放送室が見える通路の角に立って、鍵がかかっている放送室を見ていた。

(あの放送室の扉が開いていたら、ヒロエを助けられるメッセージを数分で発信できるのに)

 そう考えていたラーマに偶然の女神が救いの手を差し出してくれた。

 第二放送室の前に歩いてきて扉の鍵を外した教頭が「チッ、面倒くさい」と、軽く舌打ちしてどこかへ行ってしまった。

 ラーマは教頭の姿が見えなくなると、急いで放送室に侵入した。

 すぐさま亜空間通信の機器回線を開いて──『惑星ザイイーネの私立ググレカス学園に、ネットいじめを受けているヒロエという名の女子生徒がいます』という文章を銀牙系に向けて発信すると。

 すぐに回線を切って放送室から出て、教頭がもどってくる前に通路の角を曲がり走り去って行った。

 ラーマにとって、まるで夢を見ているような数分間の出来事だった。

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