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初秋1
校庭に向かう途中のピロティで、一人の女子生徒と目が合った。
壁に背を預け携帯電話を弄っていたが、私に気づくと
「A先輩ですよね?」
と話しかけてきた。弄っていた携帯を閉じ、さっと居住まいを正して。
「覚えていませんか?」
正直な所、見覚えはあった。
似た誰かを見たことがあるような。
いつどこで見たかの判断はできなかったが
「うん」
と瞬間的に発していた。どちらの意味かは伏せて。
「倉岡です」
あーカホちゃん。
友人の妹だった。
そうだ、中学の頃に何度も会ってたな。
この子の兄とは部活が同じで、帰りによく家に寄ってたから。