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第50話 血戦と大蛇 その7

『グ……グオォオ――ッ!』


 滑り落ちた拍子に我に返ったのか。ポチの一声で大地が斜面を作り出すも、いつもの特大と言える大きさではなかった。

 それでもどうにか着地すると滑り落ちていき。

 ぼくたちは草原。


 そう――()()の地を踏みしめた。


 崖下にいた時よりも、体が軽く感じられたのは高揚感のせいだろうか。

 それでも……浸るのは後だ。

 ちょうどよく崖上に来れたからさようなら――なんて大蛇(やつ)は納得しないだろうし、ぼくたちも同じだ。


「上がる手間が省けたな……! 後は大蛇(あいつ)を倒せば全て解決だ……ッ!」

『グルッ!』

『ヴォーゥッ!』


 上空からぼくたちを睨む大蛇(やつ)は、その身に血化粧を纏い、滴り落ちる血の雫は雨と見間違えるほどの量だ。さらに言えば、


「プチのおかげで戦い続けられそうだな……」

『ヴォゥ~!』


 プチが焼き続けた羽は四枚のうち一枚が千切れている。

 もう一枚も根本が焼き尽くされ、羽ばたくという動作すらできていない。

 大蛇(やつ)は下部付近の羽で飛翔しているが、明らかにバランスを崩し高度を下げ始めていた。


「ビビって空からずっと竜巻を打たれ続けでもしたら手が出せなかったからな……傷口も癒える気配がないし……」


 と言ったはいいが、こちらも状況はそう変わらず、傷を負っていない箇所を探すほうが難しい。

 さらに言えばポチもプチも口にしないが、あの状況で魔力を放出し続けた以上、さすがのふたりでも魔力が枯渇しはじめているはずだ。

 そして……ぼくの武器もあの二本は刺しっぱなしである以上、残るは背の一本と短剣のみだ。


 大蛇(やつ)はここにきてなお極大の竜巻を放ち、優雅さの欠片も見せず大顎をあらん限りに開き、ぼくたちへ急降下を繰り出した。


「もう大蛇(あいつ)もなりふり構わずだよなぁ……どっちが早く限界を迎えるか……――行くぞッ!」

『グガアァーッ!』

『ヴォオォゥッ!』


 大地に牙を立てるや否やその巨躯を生かし尾で地上を薙ぎ払う。

 ポチがその勢いを逆手に岩の突起を作り待ち受けるが、大きさも強度も足りず、粉砕されると同時に弾き飛ばされる。


「ぐっ! ポチィィーッ!」


 とっさにポチを受け止めるも衝撃を殺すことができず、地を削りながら吹き飛ばされていく。その間隙をプチが突いた。

 羽の付け根の焼け爛れた鱗を貫き灼熱の魔力を叩き込む。内部を焼き尽くせるほどの魔力がすでに残されていないのか、大蛇(やつ)が全身をうねらせるように転がるとプチは勢いにのまれると同時に放り出されていった。

 互いに命を燃やした攻防はまったくの互角ではない。どちらに天秤が傾くかは明白だった。


「――ぎっ! く――そッ!」


 魔力が尽きかけたポチとプチ。そしてもともと魔力を放出できないぼく。体格差を覆す有効な手段が魔法や魔術だ。

 その有効な手段が限られてきた以上、この圧倒的な体躯は覆しがたい差となってぼくらに降りかかっていた。

 単発で背に攻撃を入れることができても決定打にならない。

 このままじゃジリ貧だ。

 現にぼくの長剣(きば)も、いつ折れてもおかしくないほどに斬るたびに軋みを響かせている。


「決め手に欠けてる……何か強力な一撃……全てを斬り………貫くような……――!?」


 脳裏に立ち込めていた霧が晴れたかのような感覚。ないものはねだっても出てこない。

 だから。


 ここにあるものをねだろう――


 それが……相手のものだとしても。


「ポチィッ! プチーッ!」


 ぼくの声の張りから理解したのか。ふたりはぼくへ視線を向けた。


「あれを狙うぞ――ッ!」


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