白いバラが、招く出会い。
結亜は、通路側から、そっと、中を覗き込んで見た。通りに、面した花屋の、ショウウインドーには、季節の花が、いろいろアレンジされて、飾られていた。
「こんな所に、花屋が出来たんだ。」
結亜の通う形成外科の入る病院の、1階に、新しくこ洒落た花屋が出来ていた。
「1年前は、なんにも、なかったのに・・・。」
出来て、1周年を、知らせるボードが、出ていた。あれから・・・。結亜が、自らを傷付けようとしたナイフで、左顔面を、怪我した日から、1年が、経過していた。あの日、結亜は、自分の顔と、引き換えに、瞬を得た。瞬は、自分の責任を感じ、結亜に寄り添い、一緒に生活していた。結亜は、別の地で、大学へ、通う事を提案したが、それだけは、瞬が、拒否した。
・・・地元の、大学に通ってほしい・・・
瞬が、傍にいるならと、結亜は、承諾した。傷は、かなり、良くなったものの、化粧しても、なんとなく、わかってしまう程度に、なっていた。
「気に入ったの、ありました?」
店の中から、声がかかった。
「あっ・・・!」
思わず、いつものクセで、片手で、左手で顔を隠した。
「あぁ・・・」
近寄ってきた店員が、結亜の顔をみて、微笑んだ。
「もしかして・・・?」
結亜も、店員の顔に、見覚えがあった。
「大翔君?」
花屋の店員の顔に、見覚えがあった。同じゼミの子で、いつも、女の子達に、囲まれている。ちょっと、花とは、縁遠い感じの子だった。
「どうして?」
結亜は、顔を隠す事を、忘れた。
「あぁ・・・。姉貴の、店なんだ。姉貴・・・。これでさー!」
大翔と、呼ばれた子は、手で、お腹を、大きく表現した。
「何か、気にいった花が、あった?」
大翔の、笑顔が、まぶしくて、思わず、傷を、思い出し、手で触れてしまった。
「傷?」
怪訝な顔をした。
「そうなの。あたしの不注意なんだけど・・・。」
「あぁ・・・。そうだったんだ!」
大翔は、笑った。
「左頬を、よく、隠していたから、何かあるのかと、思っていたんだ。傷?だったんだ」
「うん・・。」
「気にしているの?」
結亜は、頷いた。
「そんな・・・。目立たないけどな・・・。俺、左頬ばかり、ついていたから、クセなんだとばかり、思っていた。」
「そんなに、見ていたの?」
「いや・・・。ハハ」
大翔は、照れるように、背を、向けた。
「今日さ・・・。たくさん。バラの花を、買ってくれた母子がいてさ・・・。もう、これしか、残ってないんだけど。」
大翔は、白いバラを、差し出した。
「サービス」
「えぇ?」
結亜は、後退した。
「当分。ここの花屋。手伝ってると思うんだ・・・。今度きたら、好きな花渡せると思う。病院、まだ、通ってるの?」
「月に、1回くらいかな・・・。」
「それじゃあ、間空きすぎるね」
意味ありげに、大翔は、結亜に、渡すバラに、小さなリボンを、付けるのだった。




