別れを決めた朝。
「やっぱり、帰った方がいいよ」
瞬は、帰ろうとしない結亜に言った。結亜は、あのまま、瞬の部屋にいた。一度、男女を意識してしまったら、兄妹といえ、同じ屋根の下には、いられない。
「結亜。父さんも、母さんも、心配するから・・・」
「心配しないのは、兄さん・・。瞬が、良く、しっているでしょう」
結亜は、兄さんといいかけて、言葉を選びなおした。
「ここに、いたい」
「ダメだよ。結亜。さっきは、ごめん」
「どうして、ごめんなんて言うの?」
結亜は、怖い顔で、瞬を睨んだ。
「あたしは、瞬が、ずーっと、好きだった。それに、応えてくれたんじゃなかったの?やっと、思いが、届いたと思ったのに・・・。」
結亜は、そうだ。いつも、欲しいものは、手に入れてた。今回も、瞬を、手に入れようとしていた。近くにいて、手の届かない人・・・。義理の兄。いつも、優しく、自分の一番の理解者。それを、奪われるのは、耐え難い事だった。
「結亜は、大切だよ。ずーっとね。だけど、兄妹以上には、なれないんだ。判るね?」
「本当の、兄妹で、ないのよ」
「だけど、俺には、それ以上には、見えないんだ」
「瞬・・・。」
「わかってくれるね?」
「わかりたくない」
結亜は、かぶりを、ふった。
「瞬は、盗られたくない。ここから、出て欲しいって、言うなら、出て行く。けど、家には、帰らない」
「困らるなよ」
「適当に、泊めてくれる人、探すんだから」
「結亜。」
「瞬」
瞬は、根負けした。
「いいよ。ここに居て。だけど、出来るだけ、大人しくしてほしい」
「出来るだけでいいのね。」
結亜は、意地悪く、笑った。結亜は、必ず、花梨との事も、邪魔してくるだろう。でも、それは、これから、どうなるか、わからない。きっと、今頃、あの人は、諒という人と一緒に、過ごして居るのだろうから・・・。ふっと、胸の辺りが、痛んだ。何度も、諦めようとした人。手に届きそうになると、また、手の届かない所へ、行ってしまう。
・・・今度は、本当に、忘れてしまおうか・・・
忘却。全て、忘れる。そうすれば、もう、苦しむ事もなく、胸を焦がす事もない。全て、忘れて、新しい恋に、身を任せてみるのも、いいのではないか・・・。
瞬は、ベランダに出た。隣の小学校の体育館から、登校してきた子供達の声が、響いてきた。何の変わりも無い日常。この淡い光の中、自分の一つの恋が、終わった。瞬は、花梨は、自分から、離れていくと、確信していた。
「諒」
あの、諒を、みつめる花梨の顔を、今も忘れられない。花梨は、諒を、今も、愛している。そこに、自分が、割り込む隙が、ない事を、感じていた。
・・・病院に、戻ろうか・・・
そう、思ったが、すぐ、その思いを、打ち消した。
・・・もう、自分から、花梨に逢いに行くのは、やめよう。・・・・
彼女に、触れるのは、やめよう。そう思った、切ない朝だった。




