瞬を一番愛する者。
運命とか、そんな言葉は、信じてはいない。とは、言っても、それらを、感じられずにいられない事がある。例えば、どうしても、結ばれない相手と、出掛ける時に限って、雨が降るとか、体調を崩してしまうとか・・・。そんな時は、この人とは、居ちゃいけないと、思ってしまう事が、ある筈だ。瞬も、そう、思わずに居られなかった。自分の、花梨へ捧げる気持ちに、変わりは、ないが、花梨の、気持ちが、見えてこなかった。花梨にとって、瞬は、一番では、ないのだ。
「お兄ちゃん?」
瞬は、真っ直ぐ、花梨の、病院から、戻ると、マンションの、入り口に、立っていたのは、結亜だった。
「どうしたの?こんな早くから。」
瞬は、兄らしく義妹を、叱った。
「だって。ずーっと、メールしても、返事ないから・・・。心配で。」
部屋の、鍵は、持っているので、瞬の、帰りを、部屋で待っていたが、返信がないので、兄の身を、案じ、部屋と、エントランスを、行ったり来たりしていたようだ。
「どこ?いってたの?」
責める目で、結亜は、兄に聞いた。
「病院。」
イラ立つのを、抑えながら、瞬は、エレベーターホールに、向かった。
「どうして?あの人と一緒だったの?」
まるで、妻だ。
「そうだよ」
瞬は、否定しなかった。結亜は、妹だ。血は、繫がっていなくとも、自分は、そう思っている。それ以上でも、以下でもない。
「私・・・。嫌だな。」
「何が?」
瞬は、振り返った。
「あの人。」
「どうして?お前には、関係ないじゃん」
「お兄ちゃん。不幸になる」
瞬の顔色が変わった。振り返り、震える声で聞いた。
「何、言ってるの?」
結亜は、思いつめていた。
「嫌なの。あたし。お兄ちゃんが、女の人といるの。見ていたくないの。だって」
結亜は、瞬に飛びついた。
「お兄ちゃん。好きなの。小さい時から、初めて、逢った時から」
勢いあまって、瞬の体は、後ろへ、のけぞりそうになった。結亜は、瞬の首に、腕を、からめ、その勢いのまま、瞬の、唇に、重ねてきた。
「!」
瞬は、かわそうとしたが、結亜の、真剣さと、涙を堪えてる様子に、築き、力を、緩めた。
「結亜」
結亜に、されるまま、だった。結亜の長い睫から、かすかに、涙が、滲んでいた。
「ずーっと。好きだったの」
ようやく、離れた唇から、でた言葉だった。
「お兄ちゃん。気づいてくれないんだもん」
瞬は、優しく、結亜の背を撫でた。
「結亜。俺達・・・。兄妹だから・・・。」
そう聞くと、結亜は、興奮した。
「血は、繫がっていないもん」
「結亜!」
「ずーっと。お兄ちゃんを見てきた。あたしは、一番、お兄ちゃんの事を、知っている。一番理解できる。お兄ちゃんを、幸せに出来る」
「だけど・・・。」
瞬は、言葉を捜した。
「まだ・・・。早いよ。結亜。」
今、自分は、傷ついてる。きっと、誰かが、自分への、熱い思いを、口に出したら、揺らいでしまうほど、傷ついていた。だが・・・。結亜だけは、だめだ。
「まだ・・・。」
そういう事で、結亜への、答えを、伸ばす瞬だった。
・・・花梨・・・・
こんなに、長く深く思っているのは、花梨だけなのに、やはり、彼女とは、一緒に居られないのか。
「お兄ちゃん。」
再度、しがみついて来る結亜を、瞬は、拒まなかった。




