キスは、一瞬に。
こんなの、よくある話である。とにかく、花梨は、抜けている。妹の麻衣莉のほうが、しっかりしていると、よく言われる。それが、普通まら、気になるんだろうけど、花梨は、自分から、認めていた。抜けていると、いう事。仕事も、ぼーっと、している事が、多く、結構、自分で、あわてて、直す事が、目立っていた。だから、夕方の、配送の手伝いに、高校生のバイトを2、3名つけると、いわれた時、もの凄く、不安だった。自分に、人の上にたつ事が出来るのか?嫌で嫌でたまらなかった。
「いいなー!若い子達が、つくんでしょ?」
同僚の、綾に、冷やかされたが、花梨は、憂鬱そうに、答えた。
「替わろうか?」
「変わりたーい。例え、3時間でも、嬉しい!」
「かなー。」
花梨は、打ち出した宛名の一覧を、ファイルし、これから、バイト達に、依頼する仕事の、最終チェックにうつっていた。
「替われるものならさー。これから、課長と、一緒に、顔合わせなの。もう・・・。憂鬱なんだ」
「ぼやくな。ぼやくな。」
席を離れ、渋々、会議室に、向かっていった。課長が、先になって、入り、花梨に、目配せした。
「今日から、配送の区分けを、お願いする。バイト生だ。よろしく、頼むよ」
「はい」
顔を、あげて、花梨は、凝視したまま、かたまった。3人ならんだ、一番奥に、立っているのは、見覚えがある。そう。顔が、かーっと、熱くなるのが、わかった。あの男子高校生だ。
「あっ。」
課長にさとられないように、顔を、伏せた。1人ずつ、名前を紹介されたが、聞き取る余裕が、なかった。が、しっかり、あの高校生の名前だけは、聞いた。
「尾崎 瞬です。」
やはり。妹と同じ高校だった。瞬は、花梨と、目が合うと、にっこりと笑いかけ、頭を下げた。再び、花梨は、顔を赤く、染めるのだった。
「じゃあ、君達。彼女の後に、ついて行って。仕事の説明してもらって。」
容赦なく、課長は、言った。
「はい。」
高校生達は、指示に従い、花梨の、後について、階下へと降りていった。
・・・はあ・・・
心の中で、ため息を、つきながら、配送センターに、向かい、バイト達に、仕事の手順を、説明した。一通り、説明を、終え、事務所に、戻ろうとした時、瞬が、後から、追いかけてきた。
「あの・・・。すみません。」
「はい?」
ダンボールが、所狭しと積み上げられている。花梨の、背丈以上の、箱が、視界を遮っていた。
「ちょっと、いいですか?」
「何?」
振り返る花梨の、顔めがけて、瞬が、覆いかぶさってきた。
「!」
花梨の、唇に瞬が、いきなり、キスをした。
「もらい!」
「!」
「お姉さん!タイプ!」
声をあげる間もなく、瞬は、走り去っていった。
「えー!ちょっと!」
信じられない事の、展開に、花梨は、ペタンと、尻餅をついてしまった。
「なんちゅう!ガキ!」
花梨は、唇を、袖で、ぬぐうと、キッと消えていったダンボールの向こうを、にらみ付けた。




