支えて欲しい。
それから、どうした訳でもなかった。花梨は、休日の間、たまっていた仕事の山を、片付け終わり、コーヒーを、飲みながら、思わず、ぼーっとしていた。
・・・・大人になっていた。・・・・
当たり前だ。自分で、突っ込みを入れて、噴出した。6年も、たっているので、ある。全てに、おいて、瞬は、大人になり、経験を積んでるらしかった。瞬と、あの時に、戻ってしまった。だからと、言って、これから、瞬と、付き合うとか、そんな事は、考えてなかった。
・・・たぶん。自分は、あのまま、一人で、居たくなかっただけ。・・・
と。思ってる。瞬とは、付き合わない。勿論、諒とも。あれから、諒から、メールも、無かった。自分から、言い出した別れなのに、物凄く、諒に会いたかった。すぐ、返信してくれていたメールも、今はない。どんなに、小さな事でも、メールしていたのに、今
、ない。来るメールは、セールの案内とか、妹からの、オノロケメールぐらいだった。
・・・瞬にでも、メールしようか・・・
でも、あんな事のあった後だから、誤解されても、困る。第一、メルアドさえ、確認しなかった。
「聞いてる?花梨?」
同僚が、声をかけてきた。
「課長が、お呼びだけど。」
「課長が?」
「何か、したの?会議室に、来るようにって。一緒に、芳賀君も、呼ばれてたけど。」
「芳賀君が?」
花梨の顔色が、変わった。芳賀とは、芳賀諒の、名前である。同じ会社で、働いていたのである。そこで、花梨とも、知り合い、綾とも、知り合った。そして・・・。
「すぐ、行った方がいいと思う。」
それを、聞いて、花梨の足取りは、重くなった。
・・・もしかしたら・・・
予感が、当たらないように、祈りながら、花梨は、会議室のドアを開けた。
「失礼します。」
ドアを、開けると、正面に、課長の姿が、見えた。そして、その脇には、うなだれた様子の、諒の姿が、見えた。瞬間、花梨は、何の話か、理解できた。顔を、上げた諒が、花梨に、目で訴えてきた。
「まあ、かけなさい。」
課長は、花梨に言った。
「実は。こんな事を、私からは、言いたくなかったが、君も知ってると思うが、芳賀君の、奥さん。まあ、綾さんからなんだが、以前から、相談されててね。」
・・ばれた・・・
花梨は、顔が、紅潮するのが、わかった。
「僕も、以前から、君達が、付き合っていたのは、知ってる。が、芳賀君は、綾さんと、結婚した。それは、わかるね?」
・・・言われなくても、判ってる。・・・
もの凄い屈辱感に、花梨は、唇をかんだ。そんな事、身を裂かれる思いで、別れたのだ。他人に言われたくない。
「まだ、続いていたのか?」
「いいえ。」
花梨は、きっぱりと言った。
「終わってます。」
諒は、首をふった。
「そうじゃないんだ。花梨。」
「離婚する事になった。」
諒は、言った。
「えっ?」
あんなに、別れないって、言ってたくせに。
「芳賀君達も、やっぱり、いろいろもめててね。綾さんに、相談されてた。子供の事を考えたら、別れない方がいい。が、」
「別れる事にしたんだ。花梨。」
諒は、花梨に、向き直った。
「もう、俺達は、だめなんだ。」
課長の目もはばからず、諒は、言った。
「ただ・・・。不倫が、原因で、別れたと、思われる。周りの、目を、無視する訳には、行かないんだ。」
「お話と、いうのは?」
花梨は、課長に、聞いた。
「綾さんの、希望というか、条件もあってね・・・。移動して欲しいんだ。」
「私が?」
「芳賀君の、移動も考えたが・・・。」
「課長。私が、移動します。芳賀さんは、今後の、事もあるだろうし。」
「花梨・・・。」
諒が、思いつめた顔になった。
「私達、終わってるし・・・。だから、それが、お互いの為になるのなら。私が、移動します。」
「ごめん。」
諒は、小さく謝った。
「わかった。後で、連絡する。もう、戻って良いよ。」
目で、諒に合図すると、花梨は、会議室から、出て行った。別れた今頃、こんな事に、なるなんて。心の整理をつけて、やっと、別れられたのに。今更、諒とやり直すなんて、出来ない。
・・・瞬に逢いたい・・・
花梨は、むしょうに、瞬に逢いたくなっていた。瞬に逢って、慰めて欲しい。そう、思っていた。




