あの時に、戻ろう。
「別に、そういうつもりは、ないから」
花梨は、諒の、小さな車に、乗り込むと、そう言った。瞬は、駐車場まで、来ると、
「車のキーを、取りに行くけど、一応、聞くけど、部屋に来る?」
と、聞いたのだ。花梨は、すぐ、わかったが、断った。
「瞬君も、結構、やるのね?」
「何か、勘違い、させた?」
瞬は、気づかないふりをした。
「俺は、お茶でも、って。思ったの」
「ふうん。」
「彼氏と、あんな、話を聞いていてさ。誘う俺って、何か、ひどくない?」
「まあ。狙う子は、いると、思うけど。」
瞬は、一瞬、エンジンをかけるのを、ためらった。
「誘ったら、付いてくる?」
花梨は、返答に困った。
「答えられないって、事は、否定でもないんだ。」
瞬は、花梨の顔を見た。
「前にさ・・・。カラオケ行くって、言って、ドライブに連れて行ってもらった事、あったよね?」
「あった・・・。ね。」
「あの時さ、俺が、何したかったか。わかる?」
瞬の手が、花梨の肩に触れた。
「俺。もう、子供じゃないから」
花梨の、唇に、瞬が、触れた。最初は、優しく。そして。熱く・・・。
「思い出した?」
瞬は、車のドアを、開けようとしていた。
「降りよう」
自分の、部屋へ、行こうと誘った。
「でも。」
花梨は、戸惑った。
「帰って、思い出して、また、泣くの?」
瞬の、言葉が、花梨の、気持ちを、決めた。花梨は、車のドアを、開けた。
「あの時に、戻ろう。」
瞬は、花梨の、腕を、掴むと、駐車場からの、エレベーターの、ボタンを、押していた。




