一つの恋が終わり。そして、始まる。
情けない状態を、みられたのは、その後、決定的な事になった。酔いつぶれた後、瞬は、間もなくかえったらしいが、ずーっと、花梨に付き添っていたらしい。もっとも、それは、麻衣莉から、聞いた話だが、
「まんざらでも、ないと思うよ」
イタズラっぽく、麻衣莉は、笑っていた。その後、本当に、まずいと、思った瞬間が、訪れた。
「話し合おう」
諒が、連絡してきた。どうしても、別れないという。自分は、花梨を、裏切り、同僚と結婚し、今、家庭を、裏切っているのに、今更、何をいうのか。花梨は、もう、この辺で、未来のない恋愛とやらに、見切りをつけ、新たに出直したかった。このまま、関係を、続けても、未来はない。子供のいる諒に、一緒に、なって欲しいという勇気もなかった。
・・・終わろう・・・
決心は、硬かったが、実際、話し合おうと逢っていた車の中で、大喧嘩になった。
「別れない。」
何度も、拒否する彼に、いい加減、花梨は、切れた。
「降りる。車を停めて!」
運転している諒の、腕をつかんだ。
「本当に、お願い。あたしの事を、思っているんなら、別れて。」
「俺は、できない。」
「もう、無理よ。本当に、思っているんなら、できるでしょう?」
諒の、顔色が、変わった。
「傷つかない内だよ・・・。諒。今なら、間に合う。」
「俺の気持ちが、覚悟できないんだ」
「子供の事を、思うの。お父さんが、こんな事をしてるの知ったら、かわいそうよ」
花梨は、諒をみた。綾は、嫌いだ。不幸せになれば、いいといつも、思っていた。けど、最近、子供の事を、考える事が、多くなっていた。子供に、罪は、ない。幸せになる資格が、ある。それに、自分の、している事は、なんだろう・・・。いくら、大人の事情といっても、子供にとって、両親は、かけがえのないものだ。自分は、悪だ。よくない。
「おとうさん。なんだよ」
「・・・・。」
諒は、近くのコンビニの駐車場に、車を、寄せた。花梨が、降りると、窓を開けた。
「花梨。それでも、俺は、花梨と、居たい。それは・・・。ダメなのか?」
答えられなかった。だから、手で、バツを作って、見せた。
「ダメなのか?」
頷いた。諒は、寂しそうな顔をした。
「ダメだよ。おとうさんなんだよ」
小さい声で、花梨は、言った。
「さよなら」
車は、走り出した。花梨は、背を向けた。知らないふりをした。見送らないつもりだった。いや・・・。正確には、諒に、見られたくなかったから。涙が、止まらなかった。涙だけでは、ない。嗚咽が、漏れた。とまらなかった。声を出して泣いた。本当は、諒が、好きだった。ずーっと、諒と、一緒に生きていけると、信じていた。二人、出会い。付き合ってから、何年も・・・。だのに、諒は、結婚した。自分を、裏切り、ほかの女と。それでも、諒は、花梨に逢いたいと言い、花梨も、逢いたいから、自分の気持ちに従い、逢っていた。でも・・・。何、一つ、変わらない。お互いの、気持ちだけが、便りの、恋愛だったが、もう、期限が、来ていた。新しく、人生を、始める時期だ。子供に、父親を返そう。自分が、愛した人を、不実の、人にして、ならない。辛い。人目も、はばからず、泣いた。
「・・・だから・・・」
誰かが、肩に触れた。
「終わって、良かったんだよ。」
振向いた。瞬だった。
「ごめん。声かけようと、思ったんだけど。」
恥ずかしい。走って、逃げようとした。
「待って!」
瞬が、手首を、つかんだ。
「そんな顔で、どうするの?」
くちゃ、くちゃになった顔を、抱き寄せた。いつの間にか、瞬は、あの時より、大きく、大人になっていた。
「どこから、見てたの?」
涙が、驚きで、しばらくとまった。
「揉めながら、降りてくる所から」
「話。聞いてたの?」
「ごめん。」
花梨から、鼻が、垂れそうになっていた。
「鼻。」
「えっ?」
「垂れそう。」
瞬が、ティッシュを、手渡すと人目もはばからず、思いっきり鼻をかんだ。
「ありえない。」
瞬は、笑った。それを、見て、花梨も、笑った。
「内緒ね。」
「誰に?」
瞬は、聞いた。
「妹に。」
「あぁ・・・。言わないよ。あれが、不倫の彼との別れだなんて・・。」
「ちょっと!」
花梨は、むっとした。
「冗談。冗談。もったいないよ。」
瞬は、コンビニの、袋を振り回した。
「綺麗なのにさ。不倫なんかしなくても、いくらでも、いるじゃん。」
「そう。言ってもね。」
「俺。なんて、どう?」
「はぁ?彼女。居るくせに」
「まぁ。」
瞬は、歩き出した。
「俺んち、近いの。とにかく、送って行くからさ。」
花梨の背を、押した。
「本当。どうするつもりだったの?こんな所で、降りてさ。」
「考えて、なかった。」
「ぼーっと。してるんだから」
「はい」
花梨は、黙った。
「暗くならない。」
瞬は、花梨の、手をとった。
「終わっただけ。また、次が、始まるんだよ」
優しい瞬の声だった。
「俺。待ってるからさ。」
「?」
花梨に、聞こえないよう小さく瞬は、言った。
「聞こえた?」
「聞こえない。」
「じゃあ。後で、言うからさ。」
瞬は、早足で、歩き始め、その後ろを、花梨は、小走りで、ついていった。




