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大聖女の帰還(仮)


 大聖女の帰還と書かれた台本がある。


「……公演中止ですって」

 主役の大聖女の役を貰えていたエミーネはため息をついた。

「今回の脚本、盗作だったんですって?」

 相手の王子役だったジェンマも同じくため息。ちなみに女性である。彼女たちは役者は女性たちばかり――男な配役も男装した女優が演じることが決まりな劇団である。

 大きな劇団ではないが、そこそこ固定ファンもついている。

「何でも盗作したでしょうとインタビューで尋ねる方がいても、この作品を「盗作した覚えはないけど」と言ってるんだって」

 新しい情報を仕入れてきたのはライバル令嬢役だったナターシャだ。配役と名前が同じで、悪役なのでファンの気持ちを心配していたのが……いらぬ心配になってしまった。

「あらま」

 エミーネとジェンマはナターシャが煎れてきてくれた飲み物を受け取りながら。

 急に演劇中止になって、暇なってしまったのでお茶会だ。といってもお貴族さまのようなきらびやかなものではなく。駄菓子を持ち寄る街のお嬢さんたちのようなものでもなく。

「これは?」

「ナターシャちゃん特製、ビタミンたっぷりオレンジスムージーです!」

 彼女たちは女優。

 演劇が中止になろうと日々、体型維持と美貌のための努力は休まない。

 今日も各々、舞台にあがるときの華やかな衣装ではなく、動きやすい服。男役のジェンマだけでなく、エミーネとナターシャもズボン姿。

 お茶会やりつつ、基礎トレやストレッチ、だ。最近団長が仕入れてきたヨーガというゆったりしたストレッチがエミーネのお気に入り。

 ワシのポーズをしながらエミーネは気になっていたことを尋ねる。ナターシャは情報仕入れてるかな、と。

「演劇協会は何していたの?」

「さあ? 連絡はそれこそ本当の脚本家さんに内密に盗作されてますよと教えてくださった方もそら何人もいたんだけど。その人たちも協会に連絡はしてくれたらしいんだけど、とうのそっちからの連絡はないんだって」

「ああ、盗作さきがびびってこうやって逃げたから、終わったことにしたんじゃない?」

「ああ~」

「ま、そんなもんよね」

 ジェンマもヨーガのポーズをとる。英雄。

「まぁ、自分でネタ作れないのに脚本書きたかったのでしょうよ」

「それってどうなの?」

「さあ? 他の脚本も、どこかで読んだことあるて、バレバレだもの。大手脚本家さん達のダイジェストって、感じ。読み手さんを馬鹿にしてるのかしらね?」

「何でパクったて、バレないと思ってるのかしらね……」

「本人気がついてなくても、読んでるひとはたくさんいるのに……」

 脚本はつど、演劇協会に展示されるのだ。誰もが、年齢制限がなければ閲覧できる。

 そもそも何でそんな脚本家を起用したのかと団長を叱りたい三人娘だが、団長は副団長に叱られているところだという。


「おーい、お嬢さん方……何してんの?」

 副団長は三人娘の格好にまず驚いた。ワシ、英雄、そして荒ぶる鷹のポーズ。おい、ナターシャちゃん、それはヨーガ?

 身体柔らかいなこいつら。

「あら副団長?」

 この劇団は演者は女性ばかりだが、関係者や裏方はそうでもない。

 二人いるうちのこの副団長は男性だ。元役者で、同じ俳優に配慮もあるしあちらこちらに顔もきくと、膝を壊し舞台に立てなくなったときに団長が引き抜いてきたのだった。

 ちなみに、今回の演劇では舞台には出ないがマイクにて「神」の声を演じるはずだった。

 舞台には出ないが、裏方にこうした引退した元役者をたくさん面倒見ている。団長、やればできる男。やれるときは。

「何かありまして?」

 男役だが、実のところ貴族出身で一番物腰やわらかいのがジェンマだった。

「あー……今回のダメんなった劇だがな、他の脚本家から許可降りたのあるから早めに打ち合わせやるぞ」

「あらま」

「借りてる装置や箱がもったいないから、急いで行くぞ」

「はいはい」

「はいは1回!」

「はーい」

「ところでどちらの脚本家さん?」

「ん?」


 それは先の盗作された側。


「あらあらまあまあ」

 ジェンマが口を押さえてもぐもぐ。

「やっちゃいますかー!」

 代わりに歓声をあげたのはナターシャ。

 エミーネも同じく。

 演劇中止になって、実は怒っていたのである。役者(キャラクター)も馬鹿にするな。

「何でも、今回の出来事を急ぎネタにしたらしいぞ」


 盗作するくらいなんだ。

 ネタにされる覚悟、できてるんでしょう。


「だって」

「覚悟完了!」

「いやぁ、覚悟してなかったらまた覚えがありませんていうんじゃない?」

「むしろ覚悟ないもんがやるなよってやつだもん」

「恥を知れ、て台詞ないかしら? 男役で言いたいわぁ」

「それなら、こっちの脚本家さんも何かしら言いがかりきたら同じく覚えがありませんて返せるわね」

「いや、本当に関わりありませんよ。フィクションですよ」

「さ、早く脚本取りに行くぞ。たしか今のところは大聖女の帰還(仮)だからな、早いところちゃんと演目つけてもらわんと――」


 幕が降りた。

 アンコールにて三人娘が手を振る。

「本日の演目はこれにて。皆さまにお楽しみ頂けたら幸いでございます」


王道ネタ、テンプレート、多少のネタかぶりは当方もありうると思います。面白いのはそうして生まれる。


この話に対して、きっと皆さま賛否両論ありましょう。

ですが、心配してご連絡くださった方々に心より御礼申し上げます。その気持ちで。

残りは活動報告で。


これにて、お終いにできますように。


何のこっちゃな方にはどうぞお気になさらず、ただ楽しんでいただけたら嬉しゅうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやいや、レシピと料理は違うよね。確かにレシピは大事。でも、料理は料理人の腕次第。レシピが同じでも出来上がる料理は千差万別。また、同じ料理でも、(ここ大事)食べる人によって味の感想は違うも…
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