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7 旅支度とビスコッティ

7 旅支度とビスコッティ


 観光の旅に行きたいな、などと思っていたら早速その機会が巡ってきてしまった。おかみさんとだんなさんが、東の町に嫁いだ娘さんのところに急遽行くことになった。なにやら具合があまり良くないらしい。建国祭までには帰ってこられると思うけど、それまではお店を休むことにしたと言われて、これはもうそういうタイミングなんだと思った。


「知り合いのところで働けるように口を聞くかい?」

「いえ、私も実家に顔を出しに行こうかと思います」

「そうかい? 急なことで悪いね」


 店を閉めている間はお隣さんに留守番管理を頼んでいるとのことで、私の借りている部屋の荷物もそのままでも大丈夫らしい。そこまで私物は多くないけれど、旅先で持ち歩くわけにもいかないのでありがたい。

 慌ただしく準備を始める二人に、道中食べられるよう何か作ることにした。娘さんの住んでいる町までは一週間ちょっとかかるらしいので、日持ちがするように堅焼きのクッキーがいいかな。

 小麦粉に水と油、それに適当なナッツを混ぜる。甘みとして刻んだデーツを入れて、しっかりと水分を飛ばすため2回焼きしめる。以前の「私」も美味しいものを作ることは好きだったようで、色々なお菓子のなんとなくの材料は覚えている。このクッキーも昔作ったことのあるものを今手に入るもので再現している。冷めるとガリガリとした食感になるので、前世でいうところのビスコッティが近いかもしれない。

 ビスコッティの粗熱をとっている間におかみさん達に頼まれた用事も済ませていく。お店の外にしばらく休む旨記した看板を設置して、いつも仕入れをしている市場の店にも知らせに行った。娘さんのところからの手紙が早馬で営業中に届いたから、その場にいた常連さんたちから他の常連さんたちにはもう伝わってるだろう。

 しっかり冷めたビスコッティとおまけのデーツを包んでおかみさん達に渡した。デーツは栄養がたくさんだから、娘さんの滋養の足しにしてもらえればと思って。手紙ぐらいしか連絡の手段がなく、しかも医療の発達はさすがに前世には届くわけもない世界だ。どうかなんともなければいいな。


 おかみさんとだんなさんを見送って、私も旅支度を進めることにした。おかみさん達にはああ言ったけど、旅の一番の目的地は【アッシャーラ】。方向的に遠過ぎはしないので時間に余裕があれば実家にも寄りたいところだけれど、優先はあくまで聖地巡礼だ。

 実家を出て王都に来るまでの道のりは長くはなかったけれど、必要な道具はその時一通り揃えている。しまい込んでいたものたちを引っ張り出せばほとんど終わりのようなものだ。各種着替えや毛布、簡易的な調理器具に食器に火を起こす道具。それに最低限の食料と、この前もらったあのもっちりフルーツゼリーみたいなやつも荷物に入れた。あまりに重いものを背負うと機動力が落ちるので本当に最低限だ。貴重品は小さなカバンにまとめて常に離さないようにする。女の一人旅になるから、できる限り宿や旅人に開放されている専用の小屋などを使用してくつもりだ。旅人用の小屋は場所によっては男女で分かれていたりするので、これも治安維持の一貫なのだ。

 あとは、旅行に出るので数ヶ月王都にはいない予定と実家に手紙を送って……手元に残っている営業用デーツは旅の途中の甘味としてもいいし、宣伝に道中で売って歩くことも考えている。


 準備も一息ついたところで、せっかくなのでビスコッティをかじることにした。いただきます!

 思った通りガリッと音が出るぐらいの硬さだけど、ナッツとデーツが入っていることで食感に変化もあるし、香りもいい。うーん、コーヒーに合いそうだ。前世からの知識でビスコッティイコールコーヒーみたいな印象がある。浸して食べるらしいけれど、濡れて食感が変わるのが嫌でほぼやったことがなかった気がするな。この国でも一応コーヒーは存在しているのだけど、金持ちの嗜好品のようで、まだこの人生ではお目にかかったことがない。できればいつか飲んでみたいなぁ。

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