ここから始まる物語
自分の席に座りため息を吐き出す。
「でねでね、助けてもらったときに感謝しろ的なこと言ってきたんですよ~。しつこくご飯誘ってきましたし・・・」
誰でもいい。この隣のやかましいやつを止めてくれ。
「私は用事がありますって言ってるのに少し、少しだけだからとか言っちゃって。あのときは疲れましたよ~」
私のほうが疲れているわ!はぁこいつは何なんだ?誘わなければよかった。
「じゃかーしいわ!!ちょっとは黙っていろ」
「えーいいじゃないですか。一緒に話しましょうよ~」
身長155㎝ぐらい、黒髪ロングの大和美人みたいな見た目をしているのだが中身がこんなにも残念なんてな……
「ええい。くっつくな!離れんかい馬鹿者!」
前島はふくれっ面をして言い返す。
「私は空ちゃんと仲良くして、一緒にダンジョンで冒険したいんです~」
それを聞いた空は顔をキリっとさせて言葉を紡ぐ。
「すまんな前島。ダンジョンだけは私の力でクリアしたいんだ」
最強になるためにと!
前島はそれを聞いて雷にでも打たれたかのように体を硬直させる。
「そのためにここに来た。未来の冒険者たちが集まるここへ」
拳を握りながら話すその姿に、顔に万感の思いがこもっているように見えた。
「すごくいいね!その思い。私も空ちゃんに最強になってほしい。あんな人が最強なんて呼ばれているなんて私も少しだけ嫌だったんだよね」
そう言いながら照れたように笑う前島を見て顔が熱くなるのを感じた。
初めてだった。これまでたくさんの人に私が最強になると言ってきた。馬鹿にされた。否定された。優しく諭された。相手にされなかった。
でも目の前のこいつは、この子は私を馬鹿にするでもなし、否定も、諭すこともせず、まるで私が最強になることが当然のような顔で熱く語ってくれた。
「ありがとう。前島いや、瑠璃。私の1番近くで私が最強になるところを見てるがいい!」
空は赤くなった顔をごまかすようにそっぽを向く。
「はい。見てます。これからよろしくお願いします空ちゃん」
「うむ」
空は今一度自身に誓う。最強になると。
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