スキルがなかったんだが・・・
「これがダンジョンの入り口か…」
そこには一軒家建っていた。入り口には笠懸ダンジョン入り口と書かれており、その一軒家の近くには受付があった。そこで冒険者カードを見せてようやくダンジョンに入ることができる。
受付は混んでおらずスムーズに進んだ。受付のお姉さんは愛想が良くいろいろなことを教えてくれたのだが、ダンジョンに早く入りたくて、ほとんど内容は頭に入ってこなかった。
(すまん。受付のお姉さん。次はしっかりと聞くから、今日は許してくれ…)
心の中で受付のお姉さんに謝りつつも反省はほとんどしていなかった。
受付を済ませダンジョンへと足を動かす。1歩1歩歩くたびに心臓の鼓動は早くなり、次第に手も震えだす。だが歩みは止めない。そこに目指すものがあるから。
小さいころから夢見てきたものがあるから。
最強という2文字を我が物にするため少女は1歩を踏み出し、ダンジョンの中に入っていった。
ダンジョンの中は洞窟型になっていた。視界は良好、体のどこにも異常は無い。近くを見渡してみても敵や人影はなく、気配も感じられなかった。
さっそくステータスを出した…
「ステータスオープン」
ステータス
名前 :小鳥遊 空
レベル:1
称号 :刀の道を歩き出した者
「えっ、少な!スキルがないじゃん…」
空は自身のステータスが調べていたステータスと見比べて、明らかに少ないところやスキル欄がないところを見て、つい口走ってしまった。
「いや、おかしいじゃんこれ、明らかにほかの人と違うし…ま、まぁ最初からスキル使うつもりなかったから、気にしてないんだけどさ・・・・・」
私は誰に言うでもなく言い訳を繰り返して言い続けた。
スキルを使わないとは考えていたが無いとなると少し残念に思ってしまった。
(よし、気持ちを切り替えて行こうかな…)
スキル欄がないステータスなど聞いたことがなかったが、気持ちを落ち着けてダンジョンの奥へと歩き出す。
武器も防具も何もない。何も持っていない時点でおかしなことだが、私はそれらを気にしていなかった。
ダンジョンの中は明るいな。今まで調べてきてダンジョンの中は明るいということは分かってはいたが、電気も何もないところで明るいとなると、ワクワクしてきてしまう。
ファンタジー的な力が働かないと、女は男には勝てない。私は最強を目指しているが、ファンタジー的な力がないと何もできずに負けるだろう。だが、だれでも頂点を目指せるダンジョンがある。
頂点になれる。そのことを考えるだけで体がうずいてくる。
考え事をしていたら、目の前から緑色の体躯の人型モンスターが歩いてきた。
ゴブリンだ!身長は150㎝ぐらいで私よりも高い。手には棍棒を持っている。
「ははは、ゴブリンか。私の最初の相手には物足りないが…まぁ良かろう。私の最初の糧になれ!最強になる者の初めの糧にな!!」
私は勢いよく走り出した。近寄ってきた私にようやく気が付いたゴブリンは、右手に持っている棍棒を私に向かって勢いよく振り抜いてくる。だが・・・
「遅い!」
棍棒を右側に体をそらして攻撃をかわす。右手を引き絞ってゴブリンの顔目掛けて振り抜いた。
「オッラァ!!」
『ぐぎゃーー』
ゴブリンは、鼻から勢いよく血を吹き出しながら倒れた。倒れたゴブリンに馬乗りになり、ひたすら顔を殴り続ける。
「フッ!はぁ!たりゃ!私の!糧になれ!!」
ゴキ!
ゴブリンの首から変な音が鳴った。しばらくすると光の粒子となり消えていった。
ゴトンッ
近くで何かが落ちた音が聞こえたのでそちらの方向に目を向けると宝箱があった。
「おーー。これが最初の武器箱かー」
宝箱の近くに歩いていき、何も考えずに開ける。宝箱の中には一振りの太刀が入っていた。
その太刀を手に持ち鞘から少し抜いて刀身を見てみた。刀身は鞘と同じで黒色だった。
「はは。最高だね!」
私は嬉しすぎてつい笑みが出てしまった。
あの最強を目指すと決めた日からひたすら木刀を振ってきた。太刀とは違うがでも嬉しかった。武器は刀がいいとずっと考え修行をやっていた。
私は腰に太刀を差し奥に向かって歩き出した。
「刀があれば負ける気がしないね!」
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