妖精さん・・・
「それで私はお前と契約したら本来の力が発揮できると?」
「ですです! なので契約してくださいです!」
キラキラと目から星が出てきそうな感じで私を見つめてくる。
まぁ、私もこいつと話していて気に入ってしまったから契約は構わない。だが、私にはテイマー系のスキルがないのだ。というか、そもそも私にはスキル欄そのものがなかったわ! なんか、悲しくなってきた・・・。
違う違う。今はこいつとの契約の話だった。
「契約は別に構わなが、私はそれ系のスキル持ってないんだ。すまんな。それじゃ!」
またダンジョン探索に戻ろうと歩き出したのだが、目の前に妖精が飛んできて焦りながら話してきた―――
「ちょいちょい。なんで先に行こうとするですか!私の話を聞いてから行動しろです」
「分かった。で? どうすればいい?」
「その顔止めろやです。めちゃくちゃ腹立つです」
なんだよ、私渾身のポケー顔をこいつは何も分かってないのか・・・。残念な子だな。
話をしていて分かっていたが、そもそも語尾に~です。を付けるアホの子だ。私のかっこよさが分からなくても仕方ないか・・・
「契約はスキルを必要としてないです! なのでスキルを持ってなくても大丈夫です」
「おーそうなのか! それはお得だな!」
「アホです。こいつ。私がこれから面倒を見なくちゃと考えると選択ミスしたかもです」
「なんだって?ちょっと聞こえなかったわ」
「何でもないです。今から契約するから、はいと答えてくれるだけでいいです」
「分かった。じゃあ始めてくれ」
空の中では契約とかちょっとかっこいいと思って、ワクワクしながら妖精の言葉を待った。
「契約!! はぁああああ! 今!」
「はい。えっ?」
「ふぅー。終わりましたです。これで契約完了です」
「ざけんじゃねぇー!!」
「ホゲラッ!!」
空は心のままに妖精を殴り飛ばしていた。
「ねぇ。契約の儀式ってさ、もっとこうかっこいいはずじゃん! 魔法陣とかいっぱい出てきてさ。かっこいい感じにさ。なのに、なんだよこれは! お前が叫んでただけじゃん。私なんかはいって言っただけだったぞ。契約する側って、汝契約せん。とかそれっぽいこと言うはずじゃん。てか言いたかったわ! 今気がついたけど、はいだけっておかしいだろ!!」
「ははは・・・」
「おい!聞いているのか!」
「きたきたです~これこれです~」
「おい!」
「ひーいいいいいいひひひ」
ぶちぶちと何かがちぎれる音が空の耳に聞こえてくる。布が千切れるような音ではなく、肉が千切れているような鈍い音だ。
「ふぅー。進化が終わったです!」
「お、お前妖精なのか?」
「はいです。私は空と契約した妖精です!」
「お、お、おお。随分と見てくれが変わったからびっくりしたぞ」
一回りほど大きくなりボブヘアで髪色は黒。体のすべてが私に近い造形に変わっていた。
「やったです! 魔術が使えるようになったです」
「何だと! 見せてくれその魔術を!」
「いいです。何なら勝負するです」
「いいだろう。受けて立つ!」
お互い正面で向かい合う。2人とも相手を睨みあい合図を待つ。
空が右手で100円玉を弾く。空中を回転しながら落ちていき地面についた瞬間に空は走り出した。
「ふっ」
「そう来ると思ったです。空!」
妖精は笑顔で空に向かって右手を左側から右側へ横向きで振り抜いた。
空の進行方向の空間に亀裂が入りだす。
「剣線」
「あっぶな! なにがスラッシュだ。スラッシュはもっと弱いし剣を振らなけれ・・・」
「剣線」
またしても空中に向かって手を振る妖精。
「ちっ」
空は空間の亀裂に向かって刀を振るう。
刀と亀裂がぶつかり合って鈍い音がダンジョンに響く渡った。
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