仲間ができたよ
「はい。皆さん席に着きましょう」
教室に入って来るなり加藤 雪音先生は笑顔で言う。
加藤先生は、クラスメイト全員が席に着くまで待っていた。
「ではホームルームを始めます。今日は皆さんにお知らせがあります。今日は事前に言っていた、学園ダンジョンに潜ります」
この冒険者学校には15歳になっていなくても学園のダンジョンに入れる仕組みだ。1年待てば全員15歳になるのだが1年生のうちからダンジョンになれるために特別処置がされている。
スキルの使い方や戦い方それらをすべて合わせてダンジョンになれると言う。
「さっそくですが、武器と防具に着替えて校庭に集まってください」
ホームルームが終わったら、それぞれが思い思いの行動をし始める。その中でも1人だけ私のほうに近寄ってくる子がいた。
「空ちゃん一緒に行こう!」
笑顔で話すその姿は何も知らない、無垢な子供のようだった。まぁ、子供なんだけどさ……
「うん。行きますか」
瑠璃は私の返事に鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「あれ空ちゃん、口調が崩れてるよ」
ああ、なんだそんなことか。ちょっと心配して損した。
「瑠璃の前は気を張らなくていいかなと思っただけ。ずっとあの口調だと疲れるしさ」
何だろう私は前島 瑠璃という子を思いのほか気に入ったみたいだ。私の目標を馬鹿にしなかっただけなんだけど。さすがにチョロすぎだな私。
「嬉しいです!空ちゃんと仲良くなれて私も嬉しいです」
満面の笑顔で嬉しいを連呼している。ていうか眩しいわ!その笑顔!
「ほら行くぞ!」
私は赤くなっているだろう顔を瑠璃に見られないように隠しながら校庭に向かった。
校庭では私たちのクラスだけが集まっていた。なんでもほかのクラスは先に行ってしまったみたいだ。
なんで先に行くかなー。こういうのは全クラスが集まってから行くものだと思ってたよ。まぁ他のクラスのことなんてどうでもいいけどさ・・・
「空ちゃん。ダンジョンに入るの楽しみだね!」
「うん。私がここに来た理由の1つでもあるからね」
「空ちゃんが来た理由?」
「この学校内ダンジョンと冒険祭のために来たようなものだからね」
「あーやっぱりその2つなんだ~」
「学校内ダンジョンは言わずもがな。冒険祭は私が最強だ!ってアピールするためだね」
「おーー」
瑠璃は満面の笑みで驚くという器用なことをやっていた。
えっ?すご!なにその表情。可愛すぎ……。私の恋愛対象ってもしかして同性なのか。今気にすることでもないか。
「みなさーん。それでは1組全員揃っているのでお話を始めます。まず今日やるべきことは2つあります。1つは、ダンジョンの恩寵。すなわちステータスを貰うことです。そのステータスのスキルを使ってスキルの使い方を学んでもらいます。そしてもう1つは、実際にモンスターと戦ってもらうことです」
加藤先生は本日やることを1組にのみんなに話している。大事な話なのだが、私の耳にはあまり入ってこなかった。
よし。今日もダンジョンに入れる。昨日はボスゴブリンとの戦いで少し満足したが・・・。心の中でまだ戦いたいと思っていた。そんな不完全燃焼だった気持ちがここにきて高ぶりだす。
はやく昨日みたいに戦いたい。昨日は初めてのダンジョンだったけど楽しかった。戦うことが楽しい。もっと強くなりたい。あの人の背中に追いつき、そして越えるんだ。
いつか言ってやる。私が最強だと。
「それでは皆さんダンジョンに向かってください。今日はパーティーを組まずに1人で行くこと。それでは気を付けてくださいねー」
加藤先生の話が終わると同時に何人かが学校内ダンジョンに向かって走り出す。
「俺が1番乗りだ!」
馬鹿なクラスメイトの一部が走り去っていった。それに続くようにほかのクラスメイト達もダンジョンに向かう。走りではなく歩きでだが。
最後の1人になってしまったが構わない。1回で学校内ダンジョンをクリアしたらどうなるのだろう。実に楽しみだ。
きっと私の今の顔はひどい顔をしているのだろうなんせ口角が最大まで上がっているのだから。
防具は無い。普通の服だ。だが左手に握られているものが異彩を放っていた。
ドオオォォォォォォォオオオオ!!
私は左手に持っている愛刀を地面に叩きつけて立ち上がる。地面に叩きつけた勢いが強すぎてちょっとしたクレーターができてしまったが関係ない。
まだ校庭に残っていた先生たちが何事か!とした様子で空を見た。そして校庭の地面にちょっとしたクレーターができていることに目をぎょっとさせて驚く。
私はそんな様子も気にせず歩き出す……。
さてと、私も行きますかな!ダンジョンに!!
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