5話 大好き
天音視点2話目です。
けーくんの家に到着した。リビングには恵さんとけーくんがいた。
するとけーくんは
「け、けーくぅん!」
「急に呼び出して悪いな。天音に大事な話があるんだ」
「……うん」
「天音には悪いことをしたと思ってる。今までごめん」
「…っ、けーっ、……くぅ…ん…っ」
けーくんが今までの事を謝罪してくれた。
涙が止まらなかった。以前までの悲しい涙じゃなく嬉しい涙だった。
あたしはその流れでけーくんに抱きついてしまった。けど、もしかしたら拒否されるかもしれないと不安になったが、けーくんは受け止めてくれた。
久しぶりにけーくんと触れ合えた事で涙腺が止まる気配はなかった。
ちなみにけーくんは暖かかった。どれくらい時間が経ったのか。やっと涙が収まった。
「…あたしこそ、ごめんね」
「天音は悪くないよ」
「けーくんに迷惑かけるよ?」
「俺が全部受け止めるから大丈夫だ」
「…これまで以上にベタベタするよ?」
「天音が望むものは聞くさ」
「…絶対離さないよ?」
「あぁ。天音は俺のモノだ」
「……しゅき♡」
__天音は俺のモノだ
抱かれて耳元でそんな事囁かれたら、あたしは崩壊するに決まってる。
今まで好きだという事を我慢して助ける事に捧げて来たのに、いきなり愛を貰ったら溢れるよ。
例えで言うなら、ビーカーいっぱいの表面張力された液体にダムの放水された水が降ってきたら…。
つまり、そういうこと。
「ほら、天音。一緒に学校行くぞ」
「うん!」
いつも通りの学校への道程。
今までと違うのはあたしとけーくんの距離。
あたし達の歩幅は全く一緒。
「ほら、腕貸すよ」
「えっ? いいの?」
「良いに決まってるだろ」
「…ありがと」
「そのな、こちらこそ今まで支えてくれて、ありがとう」
「…っ」
やばかった、また涙腺が崩壊するかと思った。
けーくんはわかっていたんだ。あたし達が助けようとしてた事とか支えてくれた事が。
そんな事を思ったら涙腺が崩壊した。
「け…っ、…ぇく…ん」
「ほら、泣くなよ」
「……ぅ…ん」
すると、けーくんが頭を撫でてくれた。
今日だけで何回泣くんだろうか、あたしは。
けーくんの手は初めて手を出された時とは違う優しい手だった。
「…けーくん…好き」
「俺も天音が好きだよ」
「…ぅん」
「ほら、また泣く。俺が言うのもなんだけど…これまでの事は気にしなくていいから、これから思い出作っていこうな」
「うん!」
今までの辛かった事が全部吹き飛んだ。
けーくんの言う通り、これまでの事は気にしなくていい。
これからけーくんと一緒に思い出を作っていこうと
始業式も終わってクラス表が貼ってある掲示板前にやってきた。
(けーくんと一緒のクラス! けーくんと一緒のクラス!)
あたしは祈った。
学校外ではけーくんにベタベタするつもりだし、せめてクラスが別々にはなりたくない。そんなの寂しいよ。
(あった! けーくんと同じクラス!)
見つけた時は歓喜した。
けーくんと一緒はやっぱり嬉しい。
ちょうど近くに居た、あたしとよく話す親友が
「天音さん! 私と一緒のクラスだよ!」
「本当!? 嬉しい!」
これから楽しい学校生活になりそうだなぁ。けーくんと一緒だし。
遠くの方でけーくんと翔くんと三春さんが騒いでるのが見えた。
あたしも、あの輪に入る事が出来るのかなぁ。
「………天音っちぃぃぃぃっ!! 健ちゃんのモノになったの!?」
「えっ!? ええぇ!?」
誰かに呼ばれてすぐ反応してしまった。
すると、集まってた人達がモーセの海割りのように割れると三春さんが突っ込んできた。
「天音っち! お前、健ちゃんのモノになったの!?」
「三春さぁぁぁぁん!! 揺らさないでぇぇぇ!」
両肩をがっしり掴まえられて大きく揺さぶられて目が回りそうになった。
「あー、ゴメンゴメン」
「…吐きそう」
「いやー、うちの彼ピが言ってたんよ。天音っちが健ちゃんのモノだって」
すると、あたしの周りが騒ぎ始めたのがわかった。
三春さん、恥ずかしいからあまり言わないで欲しいです…。
「三春ーーっ!! お前の彼ピが俺の天音に手を出すらしいぞ!!」
「なんですって!!」
けーくんが俺の天音とか言うから周りがもっと騒ぎ出した。
あたしの顔は真っ赤になってると思う。本当に恥ずかしいよ。
そしてまたモーセの海割りのように三春さんは戻っていった。
その奥にいた、けーくんの顔は今までで1番の笑顔だった。
けーくんと一緒になれて本当に良かった。
諦めないで本当に良かった。
折れないで本当良かった。
けーくんこれからもよろしくね。
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