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4話 献身

天音視点を2話投下してからけーくん視点に戻します。

__天音side__



あたしとけーくんは幼馴染。

小さい頃から一緒に遊んだし、一緒にどちらかの家にお邪魔していた。


けーくんとは一緒にいて楽しいし、面白い。そんなけーくんをいつの間にか恋をしていた。


けど、いつ頃かなのか。

けーくんが徐々に距離を置き始めた。最初は照れ隠しなのだろうと思ってたんだけど、態度と言葉が荒くなっていくのがわかった。


初めて言われた時は嫌われたと思って泣いたと思う。


だけど、けーくんの事が好きで忘れられないし、けーくん以上の人なんていないと思ってる。

だから、けーくんに何言われようとしても付き添ってあげたいって思った。


そんなある日

けーくんと一緒に学校の帰り道に近所の人から言われた事がけーくんが悪化したんだと思う。


『けーくんは悪くないよ。あたしだけがけーくんを見てるから!』

『うるせぇ! てめぇにこの気持ちわかってたまるか! 消えろ!』


けーくんは自信無くしてたんだと思った。あたしと一緒だと劣等感生まれるんだと。


けど、けーくんはけーくんなんだから気にしなくていいのに。


それでも、けーくんは耳を傾けなかった。


だから、あたしはゆーちゃんと恵さんに相談しに行った。


ゆーちゃんと恵さんと話し合った結果、家族間でも同じ事が起きてたという事がわかった。


確かに、再婚して恵さんは母性溢れてて優しいし、ゆーちゃんは可愛いし恵さんに似てしっかりしてる。

傍目から見られたら比べられるのはわかった。

そして、三人での纏められた方法として

けーくんを絶対助けるって事になった。


けど、けーくんは治らなかった。


あたしには手を出して来なかったけど、ゆーちゃんには手を出したらしい。恵さんも相当嫌な事を言われたらしいが、ゆーちゃんを一生懸命励ましてた。

ゆーちゃんはボロボロと泣いていた。


あたしもゆーちゃんの頭を撫でて励ました。

一人なら無理だけど三人なら励ましながら…。


あたしのお父さんとお母さんはけーくんの豹変に驚いていたけど、事情を知って応援してくれてる。

なんでも恵さんが何度も頭を下げに来てて、それに両親が感銘を受けたらしい。

お父さんもお母さんも何かあったら助けてくれるって言ってくれたのが嬉しかった。




春休み前の終業式。

あたしはいつも通りけーくんと一緒に帰路を歩いてたんだけど


『お前ストーカーか? それとも脳が腐ってるのか?』

『…けーくんごめんね。けど…』


あたしはけーくんを追いかけるように後ろをくっついていたんだけど、それが癪に触ったらしい。


『ごめんで警察はいらねぇんだよ。頭良いなら消えろよ』

『痛っ!』


振り返って来たけーくんから、初めて手を出された。

片方は胸ぐら掴まれて、片方はあたしの手首を締め上げていた。


手首がものすごく痛い。


けーくんはそう言うと放して先に歩いて行ったが、あたしは追いかけられなかった。


もしかしたら、あたしには手を出してこないという安堵感があったのかもしれない。

だが、初めて手を出された、物理的に拒絶された。

顔がぐしゃぐしゃになって、視界が涙で見えなくなって、それでも涙は溢れて滴り落ちていった。


どうやって家まで帰ったのは覚えてなかった。

けーくんの事は大好き。だけど、もう心は折れそうだった。手首が痛かった。胸ぐらを掴まれた感触が残っているのを感じた。


『…っ…、け…ぇっ…く……ん』


いまだに涙は止まらないよ。

どうしようもなく、何も出来ない自分がつらかった。

だから、あたしはゆーちゃんに助けてとメッセージを送っていた。


今思えば、ゆーちゃんに助けを求めなければ折れていたかもしれない。


そして程なくゆーちゃんは来てくれた。


『…っ、天…姉ぇ…ごめん』

『ゆ…っ、…ちゃ…ん』


あたしはゆーちゃんに抱かれながら号泣した。

ゆーちゃんも一緒に泣いてくれた。


ゆーちゃんのお陰で、なんとか踏みとどまったが春休みはけーくんと会えなかった。

会った瞬間、思い出して折れるかも知れないと思ったからであった。





そして二年になっての始業式が始まる。


今日からまたけーくんと会ってけーくんを助けてあげなくちゃと思っていたら、あたしの携帯が鳴った。


『けーくん』


あたしは心臓が止まりそうになるかと思った。けーくんから通話なんて、もう数年あるかないか。

けど嬉しかった。どんな些細な用件でも通話出来ることが嬉しかった。


「け、けーくん?」

「天音か。今すぐ来い」

「えっ!? ま…」


すぐ切れてしまったけど、涙が止まらなかった。


けーくんが名前を呼んでくれた。いつもはお前てめぇ、陰ではあいつこいつなどは知っていた。

だから名前で呼ばれた事が涙を溢れさせた。


もしかしたら、けーくんはけーくんになったのかもしれないと思ったあたしは無我夢中でけーくんの元へと向かった。


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