2話 俺のモノ
俺は起きた。
「あー。うん。生まれ変わったのかな?」
朝起きると俺は普通に自分の部屋にいた。
確かに死んだはずなのに自分の部屋にいる事は驚く事だが、そんな事気にしてたら時間がもったいない。なっちゃう系2周目主人公もビックリだわ。きっと。
「時間は…。二年の始業式か」
ちょうど半年前ぐらいまで遡ったらしい。
「よし! 関係修復に行きますか!」
とりあえず、まずは夕理から改善していこう。
夕理とは、俺の一つ下の同じ学校の義妹。
諏訪夕理
俺の父親と母さんは再婚で母さんの連れ子だったんだ。
青髪のツインテールで、少し華奢だが目鼻はくっきりと凛としてて、しかも母さんに似て可愛い。
文武両道でしっかり者でいわば完璧超人。
いつもお兄ちゃん!お兄ちゃん!ってくっついてたし、だから、俺も夕理とはまた一緒になりたいと思ってた。
そんなわけで、いつもくっついていたせいなのか、昔の俺と結構比べられてきたんだけど、もうこれは昔の話だから気にしない。
俺はすぐさま制服に着替えて夕理の部屋に向かった。
そして、恐る恐る夕理の部屋を覗くと、夕理はまだベッドに包まって寝てた。
「まだ寝てたか」
だから俺は夕理のベッドにダイブした。
「ぐへっ!」
「起きたか? 夕理」
「はっ!? お、お兄ちゃん!?」
「お兄ちゃんだぞ!」
「ちょっ!? 待って!?」
「それでな、夕理に大事な話があるんだ」
「い、今!? ここで!?」
俺に気がつき驚いて、ベッド上でジタバタする夕理だったが俺は抑えつけた。
だって逃げられたら謝罪する機会失うもんな。これは仕方ない。
こんなの謝罪じゃないだろ!って思われるかもしれないが気にしない事にしよう。うん。
「夕理、今までごめんな。改心したから」
「……ほんと?」
「本当、これからは仲良くして欲しいなって思ってな」
「…ぅぅぅぅぅ」
夕理は、布団から顔を見られないように隠して嗚咽し始めた。
そんな夕理の頭を撫でてやろうとすると、夕理の体が震えたような気がした。
そういえば、昔の俺は夕理のツインテールを無理矢理引っ張ってた記憶がある。あまりにもうるさくて手を出したんだよな確か。けどそれは昔の話だから気にしない事にしよう。
「ごめんな。夕理」
「ぅぅ…。…許す。で…、その、もしかして…?」
「あー。天音も母さんにもちゃんと謝罪はするよ」
「ぁ…。うん」
「夕理もごめんな」
「あ…。名前…」
こうして俺は夕理とちゃんと謝罪?をして許してもらう事が出来た。
嬉しくなった俺は時間の許す限り夕理の頭を撫で回した。
リビングに降りていくと母さんが朝食の用意をしていた。ちなみに俺の家は一階にリビングと風呂トイレ。二階には俺らの部屋が並んでいる。
俺は母さんに全身全霊の謝罪をした。
もちろん土下座だ。…これを上回る謝罪はないはずだからな。
「あら…まぁまぁ」
母さんの名前は諏訪恵
父さんの再婚相手なんだが、本当に夕理を産んだのかというぐらい若々しかった。
その母さんは、何か察したように微笑んでいたんだよな。
俺の隣には撫で回したせいで髪がぶっ飛んでボサボサで瞳は真っ赤になった夕理がいる。
ちなみに土下座した時に感じたのは、私と態度全然違くない!?…みたいな膨れ顔をしてる気がするのは気のせいだろうか。
「それで、夕理ちゃんは許したの?」
「うん。許した」
「じゃあ、天音ちゃんが許したら私も許そうかしら」
決まったな。関係修復の鍵は天音次第って事だな。
という事で善は急げ。
俺は携帯を取り出して天音と繋がってる通話アプリから通話ボタンを押した。
「け、けーくん?」
「天音か。今すぐ来い」
「えっ!? ま…」
よし。舞台は整ったな。
「…お母さん…。あれいいの?」
「ふふ…いいんじゃないかしら。良い方向にはなってるはずよ」
「というわけで、母さん! 腹減った」
「はいはい。健くんは夕飯何が食べたい? お祝いだから頑張るわよ?」
「なんでもいい。母さんの手料理が食べたい」
そういえば母さんの手料理を全く食べてなかったなぁ。
久しぶりに食べたくなったし家族団欒というのもしてみたくなった。
「お兄ちゃんってさぁ…頭打った?」
そんな俺を怪訝そう顔で見つめてくる夕理。
「おう! 全身打ったわ」
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫だ。それよりも夕理、時間大丈夫か?」
「あぁ!? お兄ちゃんのせいで遅れちゃうじゃんか!」
なんか喚きながら夕理が自室に戻って行ったがまぁ気にしなくいいよな。
それから夕理と入れ違いに天音がリビングに突入してきた。
急いで来たのだろうか、少し顔が赤っぽいし艶やかであった。
「け、けーくぅん!」
「急に呼び出して悪いな。天音に大事な話があるんだ」
「……うん」
「天音には悪いことをしたと思ってる。今までごめん」
「…っ、…けーっ、……くぅ……ん……っ」
俺は見事なまでの90度で頭を下げた。それに対して天音はとても大きな涙を流しながら抱きついてきた。
受け止めた瞬間、天音はふわふわ茶色ショートボブからの微かな香りを感じて撫でてあげた。
普段は明るく、誰にでも隔たてなく接するいい天音なんだけど
そんな風になるまで、今までの俺が酷かったんだなぁやっぱり…
「……っ、うっ…、……っ」
とても長い時間を天音は静かに泣いていた。そしてやっと収まってきて
「…あたしこそ、ごめんね」
「天音は悪くないよ」
「けーくんに迷惑かけるよ?」
「俺が全部受け止めるから大丈夫だ」
「…これまで以上にベタベタするよ?」
「天音が望むものは聞くさ」
「…絶対離さないよ?」
「あぁ。天音は俺のモノだ」
「……しゅき♡」
天音って意外と重たいんだな。今回になって初めて気づいたわ。
俺と天音がいちゃついてると身嗜みを整えた夕理が降りてきた。
「…お母さん。あれいいの?」
「振り切ってるぐらいだからいいのよ。それにね、今までは零から百掛けても零だったじゃない? けど今は零以外に百掛けてるのよ? これから楽しみだわ♪」
「うげ…。まじか」
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