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女子高生、家を買う  作者: 色川玉彩
家の買い方を考えるの巻
9/42

モデルハウス①-2(サイコーホーム)


「あれじゃない?」


 長い坂道を進んでいくと、目的のモデルハウスが見えてきた。

 前まで来たらわかると言われた通り、モデルハウスの前には蛍光色の旗のようなものがなびいていて、そこにはどこぞの不動産の名前や、モデルハウス見学受付などといった言葉が書かれていた。

 と、そこで軽快に動いていた優那の足が止まり、私が追い抜く。追い抜いたところで、優那が今度は私の後ろに着くようにして歩き出した。

 ということは。


「あ、こんにちは」


 モデルハウスの前まで来た時、一人の恰幅の良いおじさんが待っていた。

 このサイコーホームという会社の営業マンさんだろう。

 優那はコミュ障なので、見知らぬ人から話しかけられるのを嫌うんです。だから直前で私に先頭を譲ったんだ。可愛いでしょ。


「白武さまですね。サイコーホームの山田です」


 と丁寧に名刺を渡される。

 うわっ。大人だ。


「あ、ども。白武怜那です。こっちは妹の優那です」

「はじめまして……えーっと、ご両親様は……?」

「あ、あのっ。お父さんとお母さんが、ちょっと急用で行けなくなってしまいまして。私たちだけで来た次第ですなのです」

「あー。なるほど……」


 あれ、全然しっくり来てない感じ!?

 困って優那を見たけど、ぷいってされた。


「かしこまりました。では本日は見学ということで。中の方へとどうぞ」


 さすが営業マンさんだ。一瞬見せた困惑顔をすぐにきりっと笑顔にしてくれる。

 モデルハウスは、すこし階段をのぼったところにあった。

 駐車場が手前で、そこから階段を10段ほど昇ってちょっと高いところに家が建ってる。


「おぉ~」

 

 玄関前で、優那と一緒に家を見上げながら声を漏らす。

でっかい家だ。一戸建てだ。綺麗だ。

 

「だいたい敷地が40坪程度で、建物自体で34坪ほどになりますね」

「……壺?」

「土地や家の大きさを測る単位」


 優那がぼそっと教えてくれた。

 私より勉強してる。


「壺が40個分てこと?」

「そう」

「壺が、40個……」


 頭の中で並べてみる。


「え、壺でかくない?」


 優那にめっちゃため息をつかれ、先にモデルハウスに入られた。

 家に入ると、正面を真っ白な壁が出迎えてくれた。


「壁の中が四角く凹んでる……おしゃれだ」

「ニッチですね。最近流行ってますよ」

「今怜那が思い浮かべてるのねずっちだからね」

「はっ、そっか」


 優那に指摘されて思い出す。

 そっか、あれはねずっちだ。


「壁の中に物を置けるので、邪魔にならないしスマートなんです。こういったところに鍵を掛けたりする人も多いですね」

「ニッチ……これいいね優那」

「悪くはない」


 玄関を上がりつつ、スリッパをはいていると、入ってきた玄関の横に、もう一つ玄関のような空間があることに気づく。そこには幅1m以上の棚がいくつも付いていて、靴などが置かれている。


「それって倉庫ですか?」

「シューズクロークですね。これも最近の流行りですよ」

「そんなに大きなスペースが必要なんですか?」

「ここは靴だけでなく、小さいお子様がいる人はベビーカーだったり、キャンプ用品だったり、家の中にしまいにくいものを置いとけるんです。ほとんどの人があってよかったって言いますね」

「シューズクローク! お母さんの欲しいものリストに入ってたやつ……これがそうなのか」


 6帖の私と優那の部屋とまではいかないけど、それに近いくらい大きいサイズだ。

 ただの靴置き場に。

一戸建てぱねぇです。


「じゃあ、リビング入りましょうか」


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