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女子高生、家を買う  作者: 色川玉彩
もっといい家を探すまでねばるの巻
28/42

建売住宅

「う~ん」


 家に帰ると、お父さんが頭を抱えていた。


「どうしたの?」

「いや~。気持ちが乗ってるうちにって思って、早速有給とっていろいろ見に行ったんだよ。物件」

「お父さんいつも行動が速いねぇ」

「せっかちなのよ。この人」


 お母さんが食卓から声を飛ばしてきた。


「思い立ったら行動しなきゃ気が済まないの。昔私に告白しようとして、夜中に押しかけて来た時は笑っちゃった」

「え、そうなの!?」

「それはいいだろ今!」


 お母さんがうれしそうにクスクスと笑う。


「どんなとこを見に行ったの?」

「A市の駅から徒歩20分に範囲を広げて出てきた物件を片っ端から。あと、妥協してC街付近の安いけど広そうな建売住宅を何軒か」

「詰め込んだね~。どうだった?」

「びみょ~」

「あらら」


 それはお父さんの顔を見ていればわかる。


「とりあえず、A市近くの物件は、どれも辺鄙なところばかりで、車のすれ違いもできない道をいった先だったから微妙かな。その前にいくつか大きな道路を挟んでるから、通学のときも危なさそうだし、何より近くにスーパーも何もないから買い物も一苦労だ。売れ残ってる理由がわかる気がする。家も、まぁおしゃれなんだけど、無難というかペラペラというか……」

「それは家に理想を持ちすぎじゃない?」

「そうなんだけど、そう感じちゃったんだもんなー」

「それで、C街の方は?」

「こっちは論外かな。お値段はなんと3千万以下。家もそこまで狭いわけじゃない。田舎だから閑静だし、車通りも多くない割に広めの道で運転はしやすい」

「いいじゃん。3千万なら月々の支払いも今より安くなるし」

「だけど、建売ってあそこまで量産型ザクみたいなものとは思わなかった。3軒くらい見させてもらったんだけど、形が違うだけで、中身も外観もどれもおんなじ。聞いてみたら、安さの秘密は、同じものを大量生産して運んで組み立てるだけだからなんだって」

「それがどうして安くなるの?」

「マクドとモス違いみたいなもん」


 お母さんがまたよくわからない例えを出してきた。


「できてるものを注文されたら箱に詰めて出すのと、注文されてから一から作るのとの差よ」

「私マクドの方が好きかも」

「食べ物ならね。毎日3食も食べるわけだから、そういう選択肢があってもいい。でも例えば、明日から毎日同じものしか食べられなくなるって言われたらどうする? マクドでいいか?」

「それは……難問ですなぁ」


 マクドは美味しいけど、でも一回食べたら少し間をあけたくなるし。

 かといってモスでいいかと言われればそれはそれで……。


「あ、お父さんのカレーがいい」

「だろ? え、なんかありがとう」


 なんかさらっと言ってしまってちょっぴり恥ずかしくなる。


「ま、そういうことだ。理想の家は買ったらもう生涯二度買うことはない。仮に老後に引っ越すことになったとしても、利便性とかバリアフリーとかを意識した家選びになるしな」

「つまり、一生に一度の買い物を、量産型で済ましたくないと」

「せっかく数千万も出すんだ。どうせ苦しいなら、納得いく家を建てたい」


 お父さんはそういってまたスマホとにらめっこを始めた。

 こんな真剣モードのお父さん、久しぶりに見た。

 そうだ。だったら。


「お父さん」

「ん?」

「私、いい場所知ってるかも」

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