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女子高生、家を買う  作者: 色川玉彩
もっといい家を探すまでねばるの巻
21/42

現実

忘れてない。

 お母さんは決断が速い。

 迷ってる時間が無駄らしくて、さっさと決めて次に行きたがる。

 私とお父さんは悩む方で、優那はどうでもいい派。


「住めば都よ。どれにしたって不満は出るし、どれにしたって慣れるわ。どこにせよ今より大きく住みやすくなるのは事実だし」


 と、お母さん。

 ある意味では、「なんとでもなる」という考えは、優那に通ずるところがあるのかもしれない。


「お父さんの外せない家の条件はあるの?」

「ん~。やっぱり、大きな庭は憧れるなぁ。お父さん、ずっとマンション暮らしだったから、一軒家に憧れてて。一軒家って、広くてのびのび、って感じだろ? ただ住むには今押さえているところでいいんだけど、一生で一番の買い物をするのに、帰ってご飯食って寝るだけの家を買うってのも、何か違うんだよな」

「大きい庭、か」

「庭って簡単に言うけど、後悔している人多いみたい」


 割って入ってきた優那が、そう言ってスマホを掲げて見せる。

 優那のスマホの画面を、ミラーリングでテレビに映すと、Youtubeが流れてきた。


「うわ。お父さんこういうの嫌なんだよな」


 お父さん、Youtubeとかの個人撮影系の動画が昔から苦手。


「なんか、恥ずかしくない? 見てらんないというか……」

「共感性羞恥」

「なにそれ?」

「人が失敗したり恥ずかしい思いをしているのを見て、自分も同じ気持ちになるやつ。お父さんシャイだから、プロじゃない人が全世界に向けて喋ってるのが、心配なんだと思う」


 優那が教えてくれる。

 へー。

Youtubeでは、『新築マイホームの後悔<庭編>』と題した動画が流れ始める。

小綺麗なお姉さんが、自宅の庭について語っている。


『庭って初めは憧れるんですけど、手入れがめっちゃ大変なんですよ~。ほっといたらあっという間に雑草だらけになるし、虫も寄って来るからおちおち寝転んだりもできないし』


 と、動画の中のお姉さんが、ほとんど自分を映しながらそう教えてくれる。


『結局、ほとんど使わないのに、毎週末雑草抜きに時間が潰れたり、ウッドデッキも腐ってくるから撤去するにもお金もかかっちゃって……ほんと後悔してます。皆さんも、庭を作る際には、本当に必要かをよく考えてくださいね』


 といって動画が終わる。


「だって」

「んー」


 はじめは恥ずかしがっていたお父さんも、終わりには真剣なまなざしでテレビを睨んでいた。


「庭、あっても使わないなら無駄だよ。それに、土地が大きいってことはその分値段も上がるわけでしょ? だったら駅から遠い不便なところしかないんじゃない?」

「そう、だよねぇ」


 とお父さんがガックシと肩を落とす。

 こんな落ち込んでるお父さんは久しぶりに見た。


「お父さん、大丈夫?」

「うん。ま、現実見なきゃだよなぁ。結局、いい土地をぽんと買えるくらい稼いどけばいいだけだもん。お父さんの力不足だよ。はぁ」


 としょぼしょぼと、お父さんは立ち上がってお風呂へと向かっていった。


「優那、お父さんに現実を突きつけなくてもよかったじゃん!」

「現実は現実でしょ」


 優那はぷいっとそっぽを向いてスマホいじりに戻ってしまった。

 もうっ。

 どうすれば、お父さんの希望も叶えることができるんだろう。


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