モデスハウス②-4(選取住宅)-吹き抜け-
「あ、これ! さっきの家もあった!」
他のことに気を取られていて反応してなかったけど。
リビングから二階までぐーんと天井が突き抜けてるやつ。
「吹き抜けですね。最近はどこも吹き抜けを付けてますよ」
「これいいです! つけたい!」
「メリットとデメリットは?」
うう、優那がすべてを怪しむマンになってる。
そんな乾いた瞳で私を見ないで。
「メリットはやはり開放感ですね。人間の目というのは左右ではなくて上下で広さを感じるんですよ。なのでこうして天井を抜くことで、狭い部屋でも自然と広く感じやすいんです。日々リラックスする場所だからこそ、少しでも開放感のある環境を作れるのがメリットです。が……」
と、営業さんは一拍置いた。
「実は吹き抜けは私も反対です」
「そうなんですか?」
営業さんなのにそんなこと言っていいんですか。
「吹き抜けを作ると、冷暖房効率が悪くなるんですよ。温かい空気というのは上へ上へと逃げますし、上に溜まった温かい空気も、断熱性が悪いとすぐに外に逃げてしまいます。ということは、一生温まらない部屋を延々と温め続けるわけですね。電気代が目が飛び出るほどの額になるなんてこともありえます」
「ほえ~」
「怜那、わかってない」
わ、わかってるもん!
理科の授業で習ったもん!
多分!
「ですので吹き抜けをするなら、同時に断熱材のレベルも上げていかないといけませんが、そうなると建築費が百万単位であがりますし、吹き抜けにするとその部分の掃除も素人ではできないので業者を呼ぶことになり、その管理費も乗っかってきますので……」
「うん。吹き抜けやめよう」
「どうせ私たち背が低いからこの天井でも高いし」
「確かに」
「あははは。そうですね。いまこの天井が2m60cmありますので、これで十分高さはありますよ」
「うちってどれくらいなんだろ」
「おそらく通常ですと2m40cmだと思います」
「20cmでこんなに変わるんだ」
「20cmあったら私の身長も166cmだよ! モデルだよ!」
「あとは顔だけね」
同じ顔のくせに!
むきー!
「でもこの家の感じ好きかもです。木の感じが優しくて」
「家のスタイルもご調整はいただけますよ。今はアッシュ系の木目をベースに、白と調和させて家具なんかも同系色でまとめてますけど、若い人に人気の北欧風のカラーも選べますし、和風やアメリカンスタイルなんかも壁紙は用意してます。どんなのがお好みですか?」
「好みのスタイル……?」
優那と目を合わせる。
なんだろ。
何も考えてない。
「インスタなんかで、こんな感じの家にしたい! と見せていただけたら、合わせられますので、それでも大丈夫ですよ」
「本当ですか?」
「言葉で伝えるより、その方が画として共有できるので間違いがないのでむしろオススメです」
なんて便利なんですかそれは!
インスタ万歳!
その後、洗面所とかお風呂場。2階の寝室なんかを見せてもらった。
その辺りは、1つ目のとことそんなに変わらなくて、だいたい同じ感じ。
同じお風呂でも、いろいろメーカーがあって、好みがあるんだって。
それをトイレとキッチンも考えなくちゃいけないし、そもそも家の雰囲気とか間取りとかいろいろいろいろ考えなくっちゃいけないみたい。
ん~。大変だなー家作り。
って思った。