モデスハウス②-3(選取住宅)-土間からのリビング-
車で移動すること15分。
A市とB市の丁度間にあるC町の駅前に分譲地があった。
普通列車しか停まらないこの町は、知ってはいるけど降りたことのない駅ナンバー1で、私ははじめてこんな町だったのかと知る。
駅前はさすが無人駅という感じで何もない。
でも一本道を入ると、そこには先ほどのA市と同じくらい綺麗な分譲地があった。
「ここも現在売り出し中でして、7割くらいは埋まってるんですよ」
「誰も気に留めないような場所にも、人は暮らしているんだなー」
「急にどした」と優那。
「んー。なんとなく思っただけ。えへへ」
いつも高速道路を走っていて思う。
山の間に突然現れる家がぽつぽつといくつか並ぶところは、どんな人が住んでいるんだろうか。
私には背景にしか見えないけど、あそこには人が住んでいて、いろんな人生を歩んでるんだろうなーとか。思う。
当たり前か。
「こちらがモデルハウスですね」
「お~」
また一風変わった、横に長い綺麗な白い家。
「なんか窓が少ない?」
「そうです。最近はプライバシーを守るために、道路側に大きな窓をつけないのが主流なんですよ。結局道路側にでかい窓を付けても、人目が気になって開かずの窓になりがちなんです」
「へ~。なんかおしゃれ!」
「窓が最低限だと、スタイリッシュですよね」
「すたいりっしゅ!」
いい響き!
「では中へどうぞ」
「は~い……って、おお?」
入口は狭い。でも玄関が奥の方へぐーんと長く続いていて、その先がガラス窓になっている。
「長い! ……しかも、えっ」
「うわ」
優那がうめいた。
それもそのはず。
なんと靴を履いたまま入っていって、そこから靴を脱いで上がると廊下も何もなくリビングが広がっていたから。
「廊下が、ない?」
「これも最近流行りの形ですね」
「なんか、変」
「こら、優那」
営業さんの前で失礼でしょ。
「わかりますよ。違和感ありますよね。でも最近は廊下が無駄じゃないかって考え方も出てきていて、こうやって廊下がない間取りが増えてるんですよ」
「でもお客さんが入ってきて、いきなりくつろいでいるところに来られると困るんじゃ?」
「そういう考え方もありますね。でもこうすることで、廊下分リビングを広くしたりできますし、小さい土地の中で予算を抑えて間取りを広く取ろうと思うとこうするのが合理的なんですよ。それに、最近はあまりお客さんを家に招く過程も少なくて、他人からの見栄えより自分たちの快適さを優先する人が多いんです」
「快適……」
なのか? と優那が言いたげにぼやく。
でも確かに、玄関からそのままリビングというのは、抵抗がある。
匂いとか大丈夫なのかなって。




