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女子高生、家を買う  作者: 色川玉彩
家の買い方を考えるの巻
14/42

モデルハウス①-7(サイコーホーム)

「今回ご紹介させていただいていますのが、こちらの分譲地になります」


 営業さんが、一枚の紙を広げて見せてくれた。

 そこには線でいくつもの四角い区切りがあって、その一つ一つに、4桁の数字が書いてある。


「全部で30区画ございまして、現在はまだ造成工事中ですが、この図のような形になります」

「すみません。分譲地ってなんですか?」


 営業さんの顔が、一瞬硬直したがすぐににこやかに口角が緩む。


「すみませんむっち無知で」

「いえいえ。家を探し始めるまで誰しも気にしない言葉ですからねそういうのは。分譲地というのは、我々のような不動産会社が、ある程度大きな土地を購入して、その上に家を建てられるように整備した後、いくつかの区画に分けて販売している土地のことですね。今回ご紹介しているのがそれにあたります。反対だと宅地といってお客様で土地だけを購入してその上にご自身で手配された工務店などに家を建ててもらう方法もあります。いわゆる注文住宅ですね」

「ほうほう」


 メモしておく。


「注文住宅って、全部自分で決められるやつですよね? すごい良いと思うんですけど、分譲地のメリットはなんですか?」


 また怜那が切り込む。

 鋭い、鋭い目だ!


「分譲地はご購入時点で家を建てられるようにしていますので、土地を整備する費用が抑えられます。インフラなんかもまとめて引いてしまうので、コスパがいいですね。あとは区画をまとめて売っているので、分譲地だけで暮らしやすく住みやすい環境に配慮されています。端っこに小さな公園を作ったり、同年代の人が多いなどメリットはたくさんありますよ」

「価格が抑えられる。大事ですね!」


 私は今一度差し出された用紙に視線を落とした。


「この中の数字が、値段ですか?」

「その通りです。その下に書いてあるのが区画の大きさになります」


 営業さんが差した一つを見ると、“2,340万円、33,5坪”と書かれている。


「にせんさんびゃくよんじゅう万円。ほんとだ! 思ったより高くないかも!」

「うん。安い」

「さすがぶんじょーち! しかも栄えてるA市の駅から徒歩10分でこんなおうちに住めるなら決まりだね! 早くも決まっちゃたよ」

「落ち着いて怜那」


 とはいえ優那も嬉しそうなのが顔を見て分かる。


「あ、すみません。それが実は土地だけのお値段でして……」

「え?」


 営業さんが申し訳なさそうにもう一枚の紙を出してくる。

 そこには縦にずらっと文字と、その横に価格が書いてある。


「この角地の25号地を参考に数字を入れさせてもらっているんですが、土地で2,340万の、標準の建物価格で1,980万、そのた外構費、初期費用などを合算すると……」


 営業さんの指が、すすすと下に降りていく。

 そしてその一番下に書かれていたのが。


「よよよ、4,725万!?」

「はい」

「高……」


 どうしたぶんじょーち!

 コスパがいいんじゃなかったのかい?


「おおよそこれくらいというだけですので、建てる家のサイズや、他のもう少し小さな区画を選んでいただければ土地の費用も落とせます」

「一番安いところどこですか!?」

「この中ですと……現在契約済みを除けば、この39号地ですね。土地で1,980万ですので、350万程度下がることになります」

「それでも4,350万……」

「ここは端っこの土地で、そこまで狭くないのにどうして安いんですか?」


 怜那が訊いた。


「この隣にミッションスクールが隣接してるんですよ。丁度グラウンドに面しているので、その分でお値段が下がっている感じですね」

「学校……確かにやだなぁ。ジロジロ見られそうだし。ボールとか飛んできそうだし」

「じゃあ、こっちの20号地とかが安いのは?」

「そちらは、すぐ横が線路になるんです」

「あー」

「他にも、南向きの土地が高かったり、三方を挟まれた土地なんかは日当たりが悪くなるのもあって安かったりするんですよ」


 納得しかない。

 同じ分譲地の中でも土地の大きさや場所によって価格が変わるみたいだ。

 いろいろあるんだなー土地って。


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