モデルハウス①-3(サイコーホーム)
「ひろーい!」
リビングに入ると、右手にキッチン、左手にソファとテレビがあった。
窓の向こうには小さな庭が見え、窓からは明るい光が差し込んでいる。
「うちは平日はシャッター閉め切ってるから暗いんだよねぇ」
「眩しい……」
「見てみて優那! こっち畳もある!」
「それうちもあるじゃん」
「でもなんか畳が白いし四角いよ! パズルみたい!」
「いいですよね。琉球畳と呼ばれるやつですね。最近はこういう四角い畳がほとんどです」
「そうなんですか? でも確かに可愛い……畳のいい匂いがする~」
「イグサの匂い」
「いえ、実はそれイグサなどの天然のものは利用していない、当社オリジナルの和紙畳というやつなんです」
「え……」
「まるで本物みたいですよね? 皆さん気づかないくらい本物に近く作られているんですが、天然ものとは違っててカビにくくて手入れがしやすいのが特徴なんです! 匂いも、一応ないのが特徴なんですけど……」
営業さんのフォローが痛い。
ごめんなさい。和室の匂いとか言っちゃって。
「ど、どどどーりでなーんかちょっと違うなぁって思ってたんだ。ね、優那?」
場を和まそうと優那に話を降ったけど、優那は顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
イグサの匂い、とかぼそっと言ってたもんね。
「あ、見て窓おっきい!」
気まずくなり、リビングのソファ側面の窓に向かう。
営業さんも察してくれたのか、笑顔を作り直して窓の方へと寄っていった。
「この掃き出し窓はですね、大開口のものを使用しておりまして、通常1間分のおよそ1800程度の幅のものが多いんですけど、これは2500のものになります。もちろん断熱性能も基準を満たすためにペアガラスを採用していますし、サッシ部分も外側がアルミ、内側が樹脂のハイブリッドになってます。すべて標準仕様です。でもこのサイズになってくると窓が重くて開けづらくなってきますので、オプションで補助ハンドルなんかを付けられる方も多いですね」
「はきだし窓ってなんですか?」
「へ?」
あれ。
空気が固まった。
私なんか変な質問したかな、と優那を見ると、優那はいつも見せるやれやれと言った感じで小さくため息をついた。
「えーっと……掃き出し窓というのは、リビングとかに接している床まである外に出られる窓のことですよ。そっちの壁にある腰の高さくらいから始まってる窓のことはその通り腰窓って呼びます」
「へ~そうなんですねぇ」
「はずい」
優那が私にも聞こえないすごく小さい声で何か言った。
でも聞こえないからわからない。聞いても優那絶対教えてくれないし。
まぁいいや。
「でも大きい窓いいですね! 私これがいいな!」
「気に入っていただけてなによりです! ではキッチンの方見てみましょうか!」
営業さんのスマイルが、少しだけ引きつっていたような。
いないような。
そんな気がした。