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第1章  第2話「謎の遺跡」

【更新日程変更のお知らせ】


毎週、日曜日の12:00更新の予定でしたが、話の始まりと終わりが見えましたので


毎週、日曜日と水曜日の18:00更新

となります。


よろしければ是非。





   第1章 Beginning

   

   第2話「謎の遺跡」



 翌朝。

 ユーミとユンに見送られながら、俺は家を出た。


 「いつものいる?

 ユンを優しく抱いたユーミがそう尋ねてきたが


 「夜には帰ってくるからいいよ。」

 と言って、俺はユーミの申し出を断った。

 泊まりになるなら、絶対にもらったがな。


 「気をつけてね。」

 ユーミはそう言って、熱いチューをしてくれた。

 続きは夜のお楽しみだ。


 俺はユンのかわいい、ぷにぷにほっぺにチューをしてから、家を出た。

 西の洞窟は俺達のスィートホームから、歩いて20分ほどの所にあるので、夜までには帰るつもりだ。



 俺とユーミが辺境にある、このクレア村に住んだのには訳がある。

 俺とユーミが、二人の愛の巣を探していた最中、偶然立ち寄ったこの場所を見て、俺達二人はいっぺんに気に入ってしまったのだ。


 俺達のスィートホームは、鬱蒼とした森の中のわずかに切り開かれた場所にあり、近くにはきれいな川が流れている。

 森の中にも関わらず、なぜかこの辺りには猛獣が近づいてこない。


 近くにゴブリンが住んでいないのも、かなりポイントが高いな。

 あいつらはバカだが悪知恵が働くし、なにより群れをなして、本能のまま動きやがる。

 学習能力ってやつがないから、何度やられても、逃げたふりして何度も襲ってきやがるしな。

 威嚇の通用しないバカは、本当にたちが悪い。



 家自体は木造ではなく石で出来ており、台所と風呂場を除いても、4部屋もあってかなり広い。

 建築に関しての知識はないが、一目見ただけで手の込んだ造りの家なのは、俺やユーミでもわかったほどだ。


 何しろこの家は村の外れにあり、多少大きな声を出しても誰にも聞こえないし、何をしても迷惑はかからないだろう。

 まさに新婚向きの物件ではないか!

 そもそも、宿屋の壁が薄すぎるんだ!

 ベッドの中くらい、自分を解放してもいいじゃないか!


 

 喜び勇んだ俺達は、村長に話をつけてこの家を購入した。

 村外れという事もあり、家の相場としてはかなり安かったと思う。


 この村は若い村民が少ないので、俺達みたいな若い夫婦が来るのを歓迎してくれたんだと思う。

 村の人達はよくしてくれるし、俺達も村の行事やお祭りには参加するし、率先して自警団にも入った。

 よい関係を築けていると思うのだが、どうだろうか?



 俺達は村の宿に滞在しながら、二人でこの家を改装した。

 一ヶ月ほどで改装が終わり、俺達はこの家に移り住んだのだが、村の人達の話を聞くと、元々は気難しげで無口なじいさんが一人、この家に住んでいたそうだ。


 じいさんは月に何度か村にやって来ては、食料や生活必需品を買っていったそうだが、ほとんど口をきかなかったという。

 そのじいさんも5年ほど前に出て行き、そのまま空き家になっていたのだ。


 住み始めて3年にも満たないが、住み心地はいい。

 ま、ユーミとユンがいてくれれば、あばら屋だって楽しい我が家になるんだがな。



 俺は鬱蒼とした森の中を抜け、垂直に切り立った岩場にたどり着いた。 

 かなり大きな岩場の前を歩きつつ、俺は目印を探す。

 しばらくすると岩の壁の前に、大きな石を見つけた。


 あった!


 あの石が目印だ。

 あの石の少し奥に、もう一つの石がある。


 俺は岩壁の前に立つと地面の小石を拾い上げ、目印にしている石と石の間の壁に向かって投げた。

 石は岩壁にぶつからず、そのまま岩壁をすり抜け、しばらくすると


 カツン。


 と小さな音がした。


 どういう原理で、そうなっているのかはさっぱりわからないが、外から見ればただの岩壁にしか見えないこの場所。

 実は洞窟の入り口なのだ。


 俺はトレードマークの赤いバンダナを締め直すと、そのまま岩壁の中へと入っていった、


 このわけのわからない入り口は、自分で探した訳では無い。偶然見つかったのだ。


 この場所に住み始めてからしばらくして、俺とユーミはデートがてら、この辺りを散策していた。

 ちょうどこの場所にさしかかった時、俺達はかなり雰囲気がよかった。ラブラブってやつだ。

 

 「なかなかいい場所だな。」

 岩だらけの殺風景な場所で俺は言った。

 近くに人影もなく、二人っきりになれる場所は、俺にとってはどこであろうが、とてもいい場所である。


 「そうだね。誰もいないね。」

 ユーミも嬉しそうに答えてくれた。

 同じ想いという事だろう。


 「ちょっと休憩するか?」

 「うん。」


 俺とユーミはそう言って、岩壁を背に地面に腰掛けた。

 俺が何気なく岩壁にもたれかかった瞬間、俺はそのまま後ろに倒れた。


 「え?」

 「え?」


 あまりに予想外だった俺は、受け身もとれずに、そのまま地面にゴロンとひっくり返った。


 「ガボ!」

 ユーミは大きな声をあげた。


 「なんだなんだ?」

 俺は慌てて立ち上がりながら、辺りを見渡した。

 後ろの岩壁はどこにいったんだ?

 

 「大丈夫?ガボ?」

 ユーミが慌てて俺に駆け寄り、心配そうに声をかけてくれた。


 「大丈夫。しかしなんだここは?」

 俺は辺りを見渡しながら言った。


 そこは1m四方はある、大きな四角い石を積み上げて出来た石のトンネルのようだった。

 馬車が余裕で通れるほど広い。


 だが石にしては何かおかしい…。

 手で触れた質感が石や岩ではないし、何より驚くほど表面が滑らかだ。

 かと言って、金属でもなさそうだが。


 俺は今まで、かなりの数の遺跡に入ったが、大半の遺跡は石や岩で出来ており、古ければ古いほど、壁はゴツゴツとしていて、苔が生えていたりするのだが、この壁は苔どころか傷ひとつ見当たらない。


 俺は立ち上がるとすぐに、壁に手を当ててみたが、やはり石や岩とは違う感触だ。

 何が違うかは上手く説明出来ないが、石でも岩でもない気がする。

 確かめる為に壁を何度かさすってみたが、とんでもなく滑らかで驚いた。

 王宮の大理石よりも、滑らかなんじゃないだろうか?

 

 「ねぇガボ。これを見て。」

 ユーミが壁のつなぎ目を指さしながら言った。

 俺はユーミに言われるがまま、壁のつなぎ目を見た。


 「なんだこれ?」

 俺は我ながらおかしな声をあげた。


 壁と壁とのつなぎ目が、髪の毛一本分くらいしかない。

 

 「なんだよこれ?こんな事が出来るのか?どんだけすげぇ技術だよ?」

 

 「石壁の上から、平らな石を貼り付けてるのかな?」

 ユーミも石壁に触れながら言った。


 「そんな手間のかかる事をするか?1個が1m四方もあるんだぞ?このサイズの岩をここまで研磨するのには、とんでもない時間がかかるぜ?それに見てみろよ。岩を研磨したなら、表面がまだらになるはずだろ?こいつは全然、まだらになってない。そもそもいつの時代の遺跡なんだ?こんなの初めて見たぞ。」

 

 「なんだか気味が悪いわね…。」

 ユーミは不安そうに、辺りを見回しながら言った。


 俺は奥に続く通路に目をやった。

 夜目が効く俺が見ても、通路の先が見えない。

 どうやらかなり、長い通路のようだ。

 

 「なんだか怖いわ。出ましょうよガボ。」


 「いや、調べて見る価値はあるぜ。」


 「え!」

 ユーミは驚いている。


 「こんな造りの遺跡は見たことがないだろう?てことは、見たこともないお宝がある可能性もあるしな。」


 「でもその分、危険なんじゃ…。」

 

 「だから、ゆっくり時間をかけて攻略しようと思う。家からも近いし。」


 「グレン達を呼ぶ?」


 「いや、まずは俺一人でやってみようと思う。空振りになる可能性も無いとは言えないだろ?ある程度マップを調べて、人手がいるようなら、グレン達の手を借りよう。」


 「一人でやるつもりなの?」

 そう言って、ユーミがほっぺを膨らませた。


 「なにしろ初めて見るタイプの遺跡だ。何があるかわからねぇからな。」

 

 「嫌よ!わたしも手伝うわ!」

 ユーミは怒った。


 「いやそれは…。」


 「いくらなんでも、一人で遺跡の攻略は無理があるわよ。それに…。ガボは新婚の奥さんを、ほったらかしにするつもり?」


 「ユーミ…。」

 俺の胸は熱くなった。

 なんてかわいい事を言ってくれるんだもう!

 ギューッと抱きしめて、ブチューってしちゃうぞ?

 ブチューって!


 「剣士の私じゃ、出来ることは限られているだろうけれど、ガボの背中は守ってみせるわ!私に任せなさい!」


 なんてかわいい事を言ってくれるんだ!

 辛抱たまらん!


 「ユーミ!」

 「ガボ!」


 俺達は激しく抱き合うと、そのまま滑らかな地面に横たわった。


 

 結局その日は、そのまま家に帰り、翌日から二人で遺跡の攻略に入った。

 だって、気がついたら陽が落ちかけていたんだもの。

 夜中に遺跡攻略は、さすがに危ないだろ?

 ちぃっとばっかり、頑張りすぎてしまったんだな。

 もちろん、その日の夜も頑張ったけどな。



 俺達はお弁当片手に、ピクニックに行く振りをしながら、三日に1度のペースで遺跡を調査をした。

 毎日だと、さすがに人の目につく可能性が高いからだ。

 時間はあるのだから、焦る必要はないしな。



 しばらく二人で攻略をしているうちに、ユーミの体に新しい命が宿っていることがわかった。

 俺達は遺跡攻略を中断して、ユーミの体調を気にかけながら、生まれてくる赤ちゃんを、迎え入れる準備に入った。

 初産という事もあり、俺達は生活の中心をユーミにしたのだ。


 何せ初めての事だから、俺達にも迷いがあった。

 いろいろと試行錯誤もした。

 俺はまず、頑張って本格的に料理を覚えた。

 少しでもユーミの負担を少なくしたかったからだ。


 頑張った甲斐もあって、ユーミは俺の作るシチューは美味しいとまで言ってくれるようになった。

 洗濯も掃除もしたが、薪割りだけはユーミの仕事だった。


 「いい運動になるし、鍛錬にもなるから。」


 ユーミはそう言って、お腹が大きくなっても薪割りをしようとしたので、さすがにそれは止めた。

 それでも毎日、素振りはやめなかったが、それは容認した。

 割った薪がお腹に当たる事を考えたら、素振りの方が万倍マシだ。


 なにより剣士のユーミにとって、体を動かせないのは欲求不満にしかならない。

 毎日、素振りくらいはしないと、一気に煮詰まってしまうだろう。

 実際、ユーミにとっては、良い気分転換になっていたしな。


 

 俺は俺で家事をこなしながらも、三日に1度は遺跡を攻略しに行った。

 1回の攻略時間は1時間程度と決め、帰りに薪を集めたり、木の実やキノコを採って帰った。

 ゆっくり時間をかけながら、コツコツと攻略をしたのだ。


 遺跡攻略は、俺自身の気分転換にもなってよかった。

 万が一の事を考えると、不安に押し潰されそうになったが、おかげで煮詰まらずに済んだ。

 遺跡攻略はそんな俺の不安を取り除いてくれたのだ。


 こうしてユンは、無事に俺達のところに来てくれた。

 力強く産声を上げるユンは、まさに天使だった。


 『背中の羽は、お腹の中に置いてきたのかな?』

 俺は真剣にそう思ったくらいだ。


 ユンは生まれたばかりだというのに、髪の毛がフサフサしており、サルどころか天使みたいな顔をしていた。

 取り上げてくれたヒルデ婆ちゃんも


 「こんなに綺麗な赤ちゃんは初めて見た!」

 と言って、しきりに驚いていた。

 わかってるじゃねぇかヒルデ婆ちゃん。

 かわいいじゃなく、綺麗と言ってくれた所が気に入った。


 俺は、生まれたばかりのユンの髪の色をみて安心した。

 ユンは赤毛だったのだ。


 俺は黒髪だから、黒でもいいだろうと思うかも知れないが、生まれてくる赤ちゃんが、男の子だろうが女の子だろうが、俺には似て欲しくはなかった。


 だって、世界一かわいい嫁さんに似たほうがいいじゃないか。

 


 俺は2年近い時間をかけて、遺跡を攻略した。

 遺跡の中は思った以上に広く、迷路のように入り組んでいたが、時間をかけて一つづつ潰していった。

 ある時俺は、遺跡を攻略をしながら、ある思いが浮かんだ。


 この遺跡には、何もないのではないだろうか?


 なにしろこの遺跡には罠が一つもなく、遺跡とセットになっている、死霊や悪霊、スケルトンといった類いの魔物もいない。

 猛獣どころか、トカゲや虫すらいないのだ。


 普通、遺跡には作った人物の痕跡が残されている。

 壁に彫られたレリーフなどが、権威の象徴として残されているのだが、それすらない。


 中には金や銀で作られたものもあり、それらがあれば墓荒らし(トレジャーハンター)からすると、大変ありがたいのだが、金銀どころかレリーフ自体が見当たらない。


 かなり控え目な権力者なのかも知れないが、そんな奴はいないと断言してもいい。

 権力者にとって権威とは、ひけらかすためのものだ。


 この遺跡はどこを見ても、いつもとは違うのだ。

 ヘタすりゃ、お宝はないかも知れない。

 俺はそう考えたが、不思議と残念だとは思わなかった。

 グレンが聞いたら、眉を顰めながら「おまえは相変わらずの甘ちゃんだな。」と言うだろう。

 

 だが俺は、この遺跡攻略が楽しかったし、遺跡攻略はユーミとの、夫婦の会話のネタにもなってくれた。

 俺が遺跡攻略をして、財宝を要らないと思ったのは初めてだが、悪い気分ではなかった。



 俺は遺跡の中を、地図も見ないで目的地へ向かって進む。

 目的地は地下三階にある扉だ。

 この遺跡には部屋が一つしかなく、あとは全部行き止まりだった。

 変わった遺跡だろ?



 俺は20分ほどで扉の前についた。

 巨大な石の扉の右横には、大きなスイカを半分に切ったような、半球体のものが付いている。

 あとはこの扉をあければ、本日の仕事は終わりだ。


 しかし、この扉の開け方がさっぱりわからねぇ。

 押しても引いても、うんともすんともいわねぇ。


 だってこの扉。

 鍵穴一つあるわけじゃねぇし、叩こうが斬ろうが、傷一つつかないほど硬いんだもの!

 ベヒモスの皮より硬いんじゃないだろうか?

 さすがにそれはないな。


 とにかく。でかいハンマーで何度殴っても、へこみもしやがらねぇんだから正直、お手上げだ。

 

 『どうすっかなぁ~。』


 俺はランタン片手に頭を捻ったが、残念なことに、捻ってどうにかなるほど、立派な頭は持ってねぇ。


 すると突然、右のほうから何かが光りはじめた。


 「ん?」


 俺が右を見ると、半球体が青白くほんのりと光っていた。


 「光ってる…。」


 ここが光っているのは初めて見た。

 俺は五感を研ぎ澄ましながら、半球体に右手を押しあてた。


 前に押した時は押し込めた。

 あの時はなにも起こらなかったが、今なら何かが起こるかも知れない。


 いや、ひょっとしたらこれは、何かの罠のかも知れない。

 だとしたら、たまったもんじゃない。

 ここまで来てヘタこくなんざ、まっぴら御免だ。


 とはいえ、やらなきゃ何も起こらないし、いつまでも光っているとは限らない。

 俺は覚悟を決めて、半球体を壁に向かって押し込んだ。

 

 ゴゴゴゴゴ!


 大きな音をたてながら、扉が左右にゆっくりと開いていった。 


マジカルリンリンとは全く違うお話ですが、ロボットは出てきます。


ちょっとHですが、細かい描写は一切書きません。

と言うか、書く技術がありません。



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