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29 お見舞い

 どうやらベルフェの【怠惰の音】の効力は、俺たちの想定を上回る規模で広がったようで。

 援軍に駆けつけていたオルレアン傭兵団、マークハイトの軍隊すら眠りに付かせていたらしい。


 【感染支配】だけでも一大事だというのに、そこへ謎の集団睡眠まで加わったのだ。

 この一連の騒動は、【黒司教の襲撃】として記録され、今後も語り継がれる事となる。 

 

 クイーン討伐直後から火事やら空き巣やらも各地で多発し、街も終始対応に追われ。

 そうして遠方の依頼から帰ってきた冒険者たちが、事後処理に追われる羽目になっていた。


 ――当然だが、クイーンを討伐した俺たちは、ギルドから詳しい説明を求められる。


 そこでは闇の聖遺物についての言及を避け、すべてゴブリンクイーンの仕業であると伝えた。

 集団催眠については若干疑いの目を向けられはしたが、共に戦ったクランの面々が庇ってくれた。

 あの【紫剣】ゲルドルクですら、『Gランクに借りを作ったままでは落ち着かん』と訴えてくれたのだ。

 

 ギルド側も最終的にそれで納得し、俺はなんとか軍の取り調べを受けずに済んだ。

 闇の聖遺物の錫杖は【背信者の杖】と名付けられ、マークハイトで封印される運びとなった。

 再封印に成功し杖は無害となっているのだが、これに関しては説明しようがないので仕方がない。


 街を救う為に活躍した冒険者は後日、全員が代表者から謝礼を受け取る事になった。

 

 そしてクイーンを討伐した俺とリンネ、ラングラルにゲルドルクは。

 街の新たな英雄として、冒険者ギルドの室長室で各クラン代表者が見守る中、

 エステル現領主であるリーガン伯爵から直接感謝状を受け取る名誉を得られたのだった。


 Gランクが感謝状を受け取るのは制度始まって以来の快挙らしい。ついでに賞金も戴いた

 本音を言えば、名誉よりもこちらの方が嬉しかったりする。しばらくは食費に困らない金額だ。


「主様、主様。キラキラしております! これが大金貨と呼ばれるものなのですね!」


 リンネが輝く硬貨を十枚、二人分を綺麗な布で丁重に磨いている。

 ガルムとサイロが興味深そうに眺めていた。エゴームはその後ろで保護者として。

 スラネイは眠っているベルフェの首根っこを咥えて遊んでいる。みんな自由奔放だな。


「全員で勝ち取った栄光だからな。大切に使おう。……好きな物一つなら何でも買ってあげるぞ?」


「主様、我は美味しい肉料理を希望いたします! 夢のびーふしちゅうおかわりです!」

「うぅうぅ~、わおわお~ん!」

「へっへっへっ」

「ワウ」

「……ぐぅ」

「ヴルルル」


 リンネの希望にベルフェ以外全員が乗っかっていた。大体予想通りというか。

 元は神獣だし食べ物ばかりになるのは当然か。仮にも女の子の見た目をしているのだ。

 新しい服とか欲しくならないのだろうか。毎日エレナの古着で、どうにも気になってしまう。


「ご馳走に関しては【鋼の華】が大規模な宴の準備をしているから、それに期待しておこう。筋肉が頭に詰まったおっさんの事だ。どうせ肉料理で埋め尽くされるだろうしな。いい歳なんだしもっと野菜も食べろと言いたいが」


「じゅるり……ま、待ちきれません!」


 大量の肉料理と聞いてリンネだけでなく、エゴームとスラネイも反応した。

 ミルクしか飲まないガルムとサイロは首を傾げている。ベルフェは微動だにしない。


「だから報酬の使い道は別で考えておいてくれ。リンネには食べ物以外の好きな物を見つけて欲しい」


「わふぅ、難しい課題です……食事以外の趣味ですか……」


 リンネは頭を悩ませながら再び大金貨磨きに戻る。


 しかしだ、大金貨をこんなに間近で見るのは俺も初めてだ。

 最上級装備なら一つ。上級装備なら一式揃えてお釣りが出るだろう。

 ちなみにフェールも同じ額を受け取っているが、興味なさそうにしていたのを覚えている。


 それどころか『いらない、あげる』とまで言い出したので、無理やり銀行に預けさせた。

 彼女は今も自分の部屋で安静にしていて、感謝状も後日ギルドから送り届けられるはずだ。


 クイーン討伐は間違いなく、フェールの力なくしては成せなかった。

 俺たちはこれからお見舞いに行く予定だ。病人だし、手助けが必要だろう。


「アイツ、今も大人しく寝てるかな。外を出歩いていたら縛り付けてでも寝かせないと」


「ううぅ~! わう~!」


 足元でサイロが鳴いていた。尻尾を振って道沿いのとある一角を見つめている。

 花屋だった。色とりどりの花が店先に並べてあった。サイロが鼻を動かし俺に訴えかける。


「フェールに花を贈りたいんだな? お見舞いに手ぶらは寂しいもんな」


「わうっ! わうわん!」


 正解だったらしい。ぴょんぴょん跳ねながら店まで走っていく。


「あらら、可愛らしい子犬さんです。貴方がこの子の飼い主さんですか?」


 胸元までちびっ子サイロを抱えて、笑顔が似合う少女が対応してくれた。

 リンネと同じ背丈なので、店番の子供だろうか。ハキハキとした口調で堂に入っている。


「最近お世話になった子に贈りたいのですが。その子は今、体調を崩していまして」


「そうでしたか。お見舞いでしたら、こちらのガーラはいかがでしょうか?」


 見せてもらった花は偶然にも桃色で、髪色が同じのフェールに似合っていた。

 衝動的に購入して、お礼を告げて外に出る。少女はサイロが気に入ったようで安くしてくれた。


「うぅ~うぅ~! わうぅ~♪」


「サイロはお花が好きですね。もう、あまりはしゃぐと落としますよ?」


 花を一本サイロに渡すと、嬉しそうに咥えて走り出す。リンネはそれを追いかける。


「わう! わうわうわん!」


 ガルムも真似して欲しがるので、もう一本。

 エゴームは仲の良い二匹を朗らかに見つめていた。


「ヴルルルル。ハグッ」

「……ぐぅ」


 あとは、スラネイとベルフェは相変わらずだった。

 スラネイがずっと首を噛んでいるが、痛くないのだろうか。

 お気に入りらしく、ベルフェを独占してスラネイは気ままに歩いていた。

 

「あぁんフェールお姉様。無理をなさってはお身体に触りますわ! まだ体調が優れていらっしゃらないのでしょう? 丹念に、執拗に、お世話させていただきますわ!」


「……ちょっ、リリリカちん、胸を触らないでって――触るってそっちの意味!? くっ、この子、意外と力強い……!」


「これぞわたくしたちの愛の力です!」


「愛!? 私とリリリカちんにそんなものが生まれる余地はなかったよね!? えっ、私、気が付かない内に何かやっちゃった!?」


「リリリリカお嬢様、お戯れはそこまでにしていただかないと。本当の意味でお身体に障りますよ?」


 フェールの借宿まであと少しのところで、二人組と一人の騒ぎ声が聞こえてきた。

 あれはリリリリカ嬢か。逃げるフェールに密着し動きを封じ込めている。いや、凄いな。

 病人とはいえ、大の男を軽々と蹴散らせる元殺し屋を一方的に攻め立ててるぞ、あのご令嬢。


 そしてそんな彼女を諫めるのは、【鋼の華】のクロードさんだ。

 何故か黒の執事服姿で、長身な彼にとても似合っている。仕事ができる男の恰好だ。


「リリリリカですわ。リが一つ抜けております。お姉様のいじわる……でもそんなところが素敵です♪」


 頭に直接花畑を乗せたかのような、能天気な声を出すリリリリカ嬢。

 グラディオから受けた傷も完治していないのに、包帯を巻きながらも元気だった。


「……オルガぁ。私、変な子に好かれちゃったよぉ……!」


 こちらの存在に気付いてか、フェールは涙目で訴えてくる。

 この光景は以前、エレナでも同じものを見てきたぞ。悪夢の続きか?

 リリリリカ嬢は気に入った女性を見つけると、過剰すぎる愛をぶつけてくるのだ。

 

 男嫌いで女好き。つまりそういう気のある人物だ。

 そして【猫髭】はリリリリカ嬢のお気に入りが集ったクランである。 


「お嬢様のいつもの奇病が発動してしまいました。ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」


「クロードさん、その恰好は一体……もしかしてクランをクビにされました?」


「ははは、心配なさらずともただの副業ですよ。リリリリカお嬢様は御覧の通り、とても活発的なお方ですから。どうしても信用に足りる男の監視をつけたいという、雇用主であるリーガン閣下のご意向でして。結構お給金をもらえるんですよ? どうです、オルガくんもご一緒に働きませんか?」


「勘弁してください……!」


 営業のような語り口調で、クロードさんが様になる笑顔を向けてくれる。

 男嫌いな主の下で働くだけあって、精神強者の佇まいだ。同じ男として憧れる。


 そして、目の前で精神疲労を起こしている可哀想な後輩に目を向ける。


「お前も災難だったな……まぁ俺の方からも遠慮してくれるようお願いしておこう」


「ですが主様。フェール様はたった今、外出なされようとしていたみたいです。病人ですのに」


「よし、ここはリリリリカ嬢に任せよう。心配して損した。元気そうなら見舞う必要なし!」


 リンネの手を取ってそのまま帰路へ。


「やだあああ、見捨てないでえええ!! 遊びに出かけようとしたの謝るからあああ!!」


 本気で泣きつかれたので戻ってくる。


「あら、貴方は。微かに見覚えがありますわ。我が宿敵にして、憎き【鍋底】の関係者。そして何よりも、このわたくしを害しようとした罪人に付き従う下っ端様ではありませんか!」


 リリリリカ嬢は腕を組み、俺に対して攻撃的な視線をぶつけてきた。

 一応、二年前にエレナの引き抜きを辞めてもらえるよう、直接交渉した事があるのだが。

 その時に名乗っているのだが、この分だと覚えてもらえてないな。まぁわかっていたけど。

 

「俺にはオルガという名があってだな……アイツの下っ端扱いは酷いぞ。それに、俺はもう【鍋底】とは無関係だ」


 敵対されるのも面倒なので、リリリリカ嬢に俺が【鍋底】を追い出された顛末を説明する。


「まあ、それは大変失礼いたしました。わたくし【鍋底】という音を耳にするだけで、無条件に憎しみを抱くよう身体が作り変えられてしまいましたの。最近では屋敷で鍋を見かけるたびに底を切り抜きたい衝動に襲われて……一瞬ですが、お父様に病気を疑われましたわ。この包帯の痛みと耐え難き屈辱は、永劫にリーガン家の歴史に粛々と刻まれていく事でしょう……! ――あの男、いつか刻んでオークの餌にして差し上げますわ!!」


「私たちのクランが滅茶苦茶に恨まれてる……!? あと鍋の底を切り抜くって何!?」

 

 リリリリカ嬢の奇行は割といつもの事なので、置いておくにしてだ。

 元から嫌っていた人物に、身体を斧で斬り付けられたんだ。恨まれて当然だな。


「わたくしの個人的な恨みはさておき。【鍋底】と無関係なオルガ様は、フェールお姉様とご一緒にわたくしのお父様が管轄なされるエステルをお救いになった英雄様でしたわね。どうか、これまでのご無礼をお許しくださいませ。それから、わたくしからも深くお礼申し上げますわ。この命あるのもすべて貴方方のおかげです。この御恩はこの身この魂が朽果てる一瞬まで忘れません」


 急に態度を変化させて、リリリリカ嬢は優雅に、可憐にお辞儀をする。

 【鍋底】さえ絡まなければ常識人だ。……違った。女性が絡んでも変人になるか。


「わーわー! それ以上は部屋の中でやって! リリリリカちんは目立つんだから!」


 仮にも伯爵家のご令嬢が、道のど真ん中で頭を下げているのだ。

 通行人が驚いた様子で逃げていく。リリリリカ嬢は豪勢なドレス姿であった。

 

「あら、わたくし冒険者を名乗る間は、お父様の権力を盾とする卑怯者になるつもりはありませんでしてよ?」


「本人がそのつもりでも、周囲はそう思わないでしょ!」


 フェールが珍しく正論を吐いている。

 

「お姉様はそうまでして……わたくしを部屋へ連れ込もうと……!? 望むところですわ!」


 だが正論は変人に通じていなかった。

 頬を染めてリリリリカ嬢はフェールに寄り掛かる。

 フェールは素早く避けるも反転してからの抱擁を食らっていた。 


「お姉様お姉様ぁ~! ハリのある柔らかいモチ肌に滴る汗もいい匂いがしますわ!」


「ふぐぅ……オルガぁ見ないでぇ……! リンネちん、助けてぇ……!」


「あのフェール様が我に助けを求めて……!? リリリリリカ様、それ以上は――――あっ」


 密着する二人の胸が揺れている。どちらも大きかった。

 リンネは間に入ろうとして、スンッと遠い目になって停止した。


「お嬢様、そろそろ正気に戻っていただきませんと。閣下がお嬢様が女性を襲われたという噂をお耳に入れて、涙を零して嘆かれますよ」


 執事のクロードさんは一定距離を取ってリリリリカ嬢を諫める。

 多分、彼女に触れてはいけない契約なんだろう。大変そうな仕事だ。


「う~う~、わうぅ?」


 サイロが花を咥えたまま俺を見上げていた。

 ああ、そういえば俺たちはお見舞いに来たんだっけ。

 俺もリンネと同じで思考が停止していたようだ。変人は怖いなぁ。


「リーガン伯爵令嬢。いや、リリリリカ嬢。それ以上は可哀想だから許してやってくれないか」


 ◇


 『それではお姉様、御機嫌よう』と、女好きお嬢様は素直に退いて自分の屋敷へ戻っていった。

 一応、フェールが病人であるとわかっていたのだろう。それ以上に同性への愛情が漏れていたが。


 クロードさんがお詫びとして、高級果物を詰めた籠を置いてくれた。

 貧乏人には馴染みがない物ばかりで、手を加えず切って今日の夕食に並べるか。


「ねぇオルガぁ。もう一緒に暮らそぉ? 私の貞操の危機だよっ」


「泣きながら何を言い出すんだ。普通逆だろ。ほら、あとで自分で着替えておけよ」


 汗で濡れたシーツを張り替えながら、新しい着替えを置いていく。

 花屋で購入したガーラを水を張ったガラス瓶に入れて、机に乗せておいた。


「うぅ~! わうわう♪」


 サイロが椅子の上に座り、花の匂いを嗅ぎながら嬉しそうに尻尾を振っている。 

 ガルムとエゴームは床に散らばったゴミを集めて、それをリンネが袋に入れていく。


「あ、いけません、スラネイは邪魔をして。貴女だけ召喚を戻しますよ!」

「ヴヴヴッ、ワヴヴヴ!」

「ぐぅ……すぅ……」

 

 ベルフェを咥えたスラネイは、シーツを奪い自分たちの寝床を勝手に作っていた。

 リンネが追いかけ回す。集めたゴミがまた散らかって、エゴームが再度片付けていた。

 病人の部屋が多少散らかっていても何も言うまい。心配なので明日も様子を見に来よう。

 

「毎日毎日あの子に訪ねられたら死ぬ、精神が持たないよぉ」


「だったら早く元気になれ。フェールは身体は丈夫なのに一度体調を崩すと長いよな」


 そういえば昔も熱を出した時に、七日ほど寝込んでいた気がする。

 いつもいつも限界まで身体を酷使するからだろうか。鈍いんだろうな。

 

「うん。寝るまでずっと隣に居て、一人は、暗いのは寂しいんだよ……?」


 こんな感じに心細いとか言い出して甘えてくるんだ。

 いい歳して何を言っているんだと、当時から思っていたが。

 今は【守り人】として、両親に愛されず育ってきたのだと知っている。


 僅か八歳で闇夜を歩んできた彼女が、甘えられる相手なんてそういないのだろう。


「……リンネには今夜だけ、ビーフシチューを我慢してもらうか。今日だけ、特別だぞ?」


「本当!?」


 着替えてベッドに潜り込んでいたフェールが、嬉しそうに顔を覗かせる。

 

「オルガの手料理、久々に食べたい! 屋台の味も好きだけど、たまには薄味も食べないとね」


「薄味って、俺はこれでもいつも【鍋底】のみんなの健康に気を遣ってたんだぞ? 気を抜けば冒険者は肉ばかり食べるし。果物や野菜もしっかり摂らないから風邪も引くし、長引くんだ。まぁ、しばらくは食事方面の面倒も見るから。無理をさせてしまったお詫びも込めてだな」


 俺はそう言って、用意していた数々の食材たちを見せつける。

 どうせ希望されるだろうと、あらかじめ厨房を借りる許可も得ていた。

 ちなみにフェールの借家近辺に【蛇の足】のクランハウスがあるので、ホーガンに頼んである。


「厨房を借りる代わりに、【蛇の足】の分も作らないといけないから時間は掛かるが我慢してくれよ」


 どうもこの街の冒険者は自炊が苦手な者が多いようだ。

 料理ができると話しただけで、ホーガンが勧誘してきたくらいだ。

 街の料理屋がそれだけ安くて美味い証拠だろうが。それでいいのか冒険者。


「あはっ、いつも期待に応えてくれるオルガが大好きだよ」


「そうかい。偶にはお前が作ってくれてもいいんだぞ?」


「お腹を下して苦しんでいいのなら。女の手料理というのは、安くないんだよ」


「お前に女を感じたことなんて一度もないぞ。それ以前に手の掛かる子供だからな」


 というより、そういう空気を感じたらフェールの方から真っ先に逃げるだろう。

 コイツは自分に自信がなくて、自分の生い立ちを気にして他者との距離感に敏感だ。

 明るく友人が多いように見えて気が付けばいつも一人で居る。依頼も毎度俺から誘っている。 


 人見知りのエレナとはまた違う意味で、人付き合いが苦手なのだ。仮面を被っている。

 それは人造魔神の俺も似たようなもので。だからこうして長く関係が続いているのだろう。


「もー、オルガってば酷い。これでも私、男によく口説かれるんだから。大抵身体目当てだけど」


「中身はともかく外見は良いからな。騙される男も多いだろう」


「そうやって本当に騙されて欲しい人には、子供扱いされる程度だよ」


「はいはい。可愛い可愛い」


「そういうところだよっ! オルガのいじわる!」


 言葉とは裏腹に、心底楽しそうにフェールが俺の背中を叩いてくる。


「わふ……やはり主様とフェール様はどこか分かり合えている気がいたします。……羨ましいです」

「わうぅ……!」


 リンネとガルムは、ムスッとした表情で俺の服を控えめに引っ張っていた。


『フェールお姉様! お食事をご用意させていただきましたわー!! 万病に効く薬をこれでもかとふんだんに配合したお粥です、どうか一口だけでも食べてくださいまし!』


『お嬢様、ご近所迷惑ですよ。あと物凄く匂いがキツイのですが、変な物を混ぜていませんか?』


『おーほほほほ、貴方の心配には及びませんわ。しっかりと私自ら味見をいたしました』


『はて、確かお嬢様はリンゴと芋の違いがわからないほどの味音痴だったような……?』


 ドアの向こう側で、リリリリカ嬢が呼んでいる。

 あれから屋敷に帰って、すぐその足で戻ってきたのか。

 変な刺激臭がするのだが、鼻の利くガルムたちが目を回している。


「いやぁああああ、またあの子が来たあああああ!?」


「ははは、お前の希望通り、今日は賑やかな夜になりそうだな」

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