どうしたんだ
一時限目の授業が終わり、また春夜の周りにクラスメート達が集まってきた。ちなみに風夏は、自分の席で本を読んでいた。
「授業は大丈夫だった?」
「まぁ、なんとかついていけるかな」
「そうか、ならよかった」
クラスメート達は、春夜が授業についていけるかが心配だったようだ。元いた学校よりもペースははやいが、ついていけないほどではないため問題はなかった。でも心配してくれたことは嬉しかった。優しいクラスメート達でよかったと春夜は思った。
そんな雑談をしてると、先ほどの話しになった。
「はぁ、やっぱり如月さんには近づきにくいな」
「その、なんかスマンな」
春夜は風夏の義兄妹なため、一様謝った。
そんな春夜を見てクラスメート達は「大丈夫だよ」と言ってくれた。その答えに春夜はホッとした。
「まぁ、風夏ちゃんは冷たいし、近より難いけど、普段は優しく応答してくれるから」
「そうなのか?」
一人の女子生徒の発言に、何人かの男子は驚いていた。春夜も驚いた一人だ。さっきの様子だと、普段から周囲を氷らすような、感情のこもってなさそうな声で、学校を生活しているのではないかと思っていたからだ。
「うん、風夏ちゃんは困っている人がいると、助けてくれるの、それに風夏ちゃんの事じゃなければ、結構相談とかにも乗ってくれるんだよ」
「そうなんだよね、私、前に如月さんに、重い荷物を持ってもらったことがあるの」
「私は、今度買う服の種類について、相談に乗ってもらったことがあるんだ」
「そういや俺、如月に歴史を教えてもらったことがあったな」
次々と、風夏に手伝ってもらったことや、相談に乗ってもらったことなどの学校生活での、クラスメート達との関わりが聞けた。
それを聞いて春夜はさっきよりも安心をした。風夏がクラスメート達に邪険にされていたり、クラスに馴染めていないことなどがなかったからだ。クラスメート達の中では、風夏の事を深く検索しなければ、悩みや相談に乗ってくれる気が利く人、と言う感じだろうと思った。
そう思いながら、クラスメート達の話を聞いていたら
「如月は容姿がいいからな、俺さ、最初如月を見たとき、無茶可愛いい、彼女にして~と思った」
と一人の男子生徒が言った。その男子生徒の発言に、同意する生徒が何人かいた。
「わかる、俺も如月の性格を知るまでは、彼女にしたかった」
「まぁ、性格が悪いって訳じゃないけどな、告白しても、断られそうなんだもん」
「そうそう、無理です、なぜ私なんですか、意味がわかりません、でもありがとうございます……とか言いそうだもんな」
「あはは、絶対に言いそう」
「他のクラスの奴は、性格を知らないから、告白しようとする奴がいるらしいぞ」
「そうなの、でも誰かが風夏ちゃんに告白したなんて、聞いたことないけどな~」
「それはそうだろう、だってまだ誰も告白してないんだもん」
「なんで誰も告白しないの?」
「なんか、如月のファンクラブって言うかなんと言うか……まぁ、抜け駆けしないように作られた、組織があるらしいぞ」
「へ~、そーなのか」
そんな会話を聞いていた春夜は、胸の奧がなぜだかイヤな気持ちになった。春夜はなぜ自分がこんなにもイヤな気持ちになっているのかがわからなかった。それに、風夏に恋人がいないと知って、安心している自分もいた。それがさらに困惑の渦に、拍車をかけた。
ちょうどこのタイミングで、授業開始五分前のチャイムがなった。みんながみんな自分の席に戻っていった。
春夜も気持ちを切り替えて授業に挑もうとして、ふと気になって風夏の方を向くと、さっき見たときと変わらずに本を読んでいた。そんな風夏を見ていたらクラスメートの『彼女にして~と思った』と言う言葉を思い出し、またイヤな気持ちになってしまった。春夜はそんな自分にまた困惑をした。
(はぁ、どうしたんだ俺……)
結局、その次の授業は、悶々とした気持ちが、授業の後半になるまで続いていた。