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余計なお世話です

「はじめまして、如月春夜です。えっと、趣味は本を読むことです。きょ、今日からよろしくお願いします」


 そう自己紹介をするとクラスメートは拍手をした。

 クラスメートへの第一印象は悪くなかったらしい、ひとまず胸を撫で下ろした。


「え~と、春夜の席は……大翔(ひろと)の隣が空いてるな、よし春夜、お前の席は大翔の隣な」


 そう神無月が言うと一人の男子生徒が手を上げて春夜の席を教えてくれた。ちなみに風夏の席は、春夜の左側の列の三つ後ろだった。


「よう、俺は澤村大翔(さわむらひろと)、これからよろしくな」

「あぁ、よろしく、澤村」

「おっと、俺のことは大翔でいいぞ」

「そうか、じゃあ俺のことは春夜とでも呼んでくれ、大翔」


 そう、大翔と挨拶をした。

 そしてSHR(ショートホームルーム)が終わり、次々とクラスメートが春夜の元に集い、質問を投げ掛けてきた。


「ねぇねぇ、春夜君はどんな本を読んでるの?」

「前の学校では部活に入ってたのか?」

「てかどこから来たの?」

「え~と、読んでる本は漫画ばっかりで、前の学校では帰宅部だった、どこから来たかと言うと、ここから北東に行ったところにあるどこから来た」


 春夜はたくさんくる質問に一つ一つ丁寧に答えていった。しかし風夏が心配していた関係性には、みんながみんなの出方を伺っているのか、誰も触れてこなかった。それならそれでよかったと安心したところで……


「そういや春夜は如月さんと義兄妹らしいな」


 一人の男子生徒がついにその話題に触れた。春夜の背中が少しピンとした。


「あ、あぁ、そうだが」

「ちょっと聞きたいんだが、わかる範囲でいいんだ、家での如月さんってどんな感じなんだ」


 さっきまで次々と質問を投げ掛けてきていたのに、みんなが黙って春夜の答えを待っていた。それほどまで春夜と風夏の関係性……と言うよりは風夏が予想していた通り、家での風夏について知りたいんだろう。

 春夜は悩んだ、風夏との約束があるから馬鹿正直に家での風夏を話すことは出来ない。しかし、誤魔化すとしても、学校で風夏はどのように生活をしているのかがわからないため、下手なことは言えない。

 しかし、黙っていると不信に思われてしまうと思ったので、春夜は意を決して誤魔化すことにした。


「えーとね、学校ではどんな感じか知らないけど、なんか壁を感じるかな、まぁ勘違いかもしれないけど、でもそれぐらいしか思いつかないな、家ではあまり話をしないから」


 春夜は再開した時の風夏の感じや、あの時よりも固いと言う風夏の発言から推測してそう説明した。

 何人かはそれで納得したようだが、やはり納得をしなかった者もいるようで……


「本当にそれだけ?」

「今、家で一緒に暮らしているんだろう、それなら他にも何かあるだろう」

「家では話をしていないって言ったけど本当に話してないの?」


 そう春夜に詰め寄ってきた。

 やはりこれだけじゃあ騙されてくれないか……さてどう誤魔化そうもんかと、春夜が悩んでいたら……


「全く、なんなんですか?」


 そう背後から声が聞こえた。振り返って見るとそこには氷のような、表情が読めない風夏が立っていた。それにさっきの声もいつもの明るい声ではなく、周囲を氷らすような感情のこもってなさそうな声だった。

 そんな風夏は春夜に詰め寄っていていたクラスメート達を見ていた。


「あなた達はそんなにも私の事がしりたいのですか?」

「え、あ、まぁ、知りたいかな」

「なぜ、知りたいのですか?」

「えっと、クラスメートだから、知っておきたくて……」

「ならなぜ、私に聞かないのですか?」

「だって如月さん、教えてって頼んでも教えてくれないじゃんかよ」

「えぇ、教える必要性を感じませんから」

「そんなんじゃあ、友達が出来ないよ」

「余計なお世話です、でも心配してくださることは感謝いたします。ありがとうございます」


 そう言うと風夏は一礼をした。

 場はなんとも言えない雰囲気だった。ちょうどその時一時限目開始五分前を告げるチャイムがなった。


「やべ、準備しなきゃ」

「あ、あたしもだ」


 そう言うとみんな自分の席に戻っていった。そんなみんなを見て風夏はばれないように小声で春夜に話し掛けた。


「約束を守ろうとしてくれてありがとね、はる」


 そう言うと風夏は自分の席に戻った。

 その後春夜は家での風夏と学校での風夏、二つの風夏について考えていた。家での風夏はとても明るく、一緒にいて楽しいと思う。それに比べ、学校での風夏は冷たく、とても近づきがたい。

 風夏は人見知りだから学校では家みたいなキャラではいられない事を春夜は理解していた。しかしあの態度は人見知りだけでなるものではない。

 そう考えていたら春夜はふと朝の風夏の顔を思い出した。その顔には人見知り以外にも何かがあるという顔をしていた。多分、それのせいで学校でクラスメートに心を開かず冷たくしているのではないかと春夜は思った。

 そう考えると春夜は悲しい気持ちになった。

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