風夏と焔の関係
「で、聞きたいことってなんだ」
風夏にお茶をいれてもらい、一口飲んでからそう切り出した。
当の風夏は、お茶をいれたついでに持ってきたお菓子を頬張っていた。
「お菓子を食べるなら、ご飯をおかわりすればよかったじゃん」
「あはは、そうだよね、私もそうしたかったんだけど、ご飯の残りがなかったんだよ」
「今度は多めに炊いとけばいいんじゃないか」
「うーん、そうしよっかな」
そう言いながら風夏は、次のお菓子に手を伸ばしていた。
まぁ、せっかく風夏が持ってきたのだから、春夜もお菓子を食べることにした。
「そう言いながらもはるも食べるんじゃん、はるももっと夕食を食べたかったの?」
「そういうわけじゃない、ただの間食だ」
「次から、ご飯の量を増やすことにするよ」
そうしてもらえると正直ありがたかった。今まで足りなかったわけではないが、もう少し主菜などを食べたくなるときがあるからだ。
「で、話を戻すけど、聞きたいことってなんだ」
「あ、そうだったね、まず、はるは図書室でなにを借りてきたの」
「俺が今回借りてきたのは、地理の参考書だぞ、見るか?」
「見たい!」
「じゃあちょっと待っててくれ、今からとってくる」
そう告げて、春夜は自分の部屋に借りてきた本を取りに戻った。取りに行くだけなので、時間がかからずすぐに戻ってきて椅子に座った。
「これを借りてきた」
「これってはるが自分で選んだの?」
「最終的に選んだのは俺だけど、探したのは図書委員の子だよ」
「じゃあ何冊かおすすめされたんだね、その中でなんでこれを選んだの?」
「いや~、四冊おすすめしてくれたんだけど、最初の二冊しか説明を聞かなかったんだよね、その中で視覚的にわかりやすく、丁寧っていうからこの参考書を選んだんだ」
「ヘ~そうなんだ、確かに見やすいね」
そう言いながら風夏は、参考書をめくっている。十分読んだらしく、参考書を春夜に返してきた。
「見せてくれてありがとう」
「勉強しやすい参考書だったでしょ」
「確かに勉強しやすいね、……数学にもこんな参考書があればいいのに」
「ん?なつ、なんか言った?」
「い、いや、なんでもないよ」
「そうか」
なんか風夏が言った気がするが、気のせいだったようだ。
そんな風に思っていると、なぜか焦っている風夏が質問をしてきた。
「あ、あのさはる、参考書をおすすめしてくれた図書委員の子がいるって言ってたじゃん」
「あぁ、言ったな」
「その子ってもしかして橘さん?」
「そうだが、知っているのか?」
風夏から焔の名前が出てきて、ビックリした。まさか知り合いだったとは……
「知ってるもなにも、私がいつも図書室に行く時、橘さんしかいないもん」
「え、そうなのか?」
「そうだよ」
風夏の言葉にまたしてもビックリした。図書委員は、焔以外にもいるはずなのだが。
「はるってさ、うちの図書室の利用状況がどうなってるか知ってる?」
「橘から聞いてるぞ、ほとんどが図書館の方を利用して、学校の図書室の利用者が少ないって」
「それを知ってるなら話が早いよ、図書室を利用してないのは、図書委員もそうなんだよ」
「マジかよ」
この短時間で、風夏の言葉に三度も驚かされた。まさか図書委員も利用していないとは……
「ただ、橘さんだけは去年から、毎日のように図書委員として、放課後に図書室にいるの」
「橘って、真面目なんだな」
「そうだよね、私もそう思う」
風夏も焔が真面目だということに同意をしてくれた。去年から毎日のように、放課後に図書委員をしているとは、本当に真面目だ。
「図書室に橘さんしかいないし、私以外に利用者がいないから、話すようになったんだ、まぁ最初はちょっと怖がられていたけど」
「なんで怖がられていたんだよ」
「学校の時の私って確かに少し怖いもの」
そう言いながら風夏は笑った。
「でも今は、怖がらずに話をしてくれるよ」
お茶を飲みながら風夏はそう言った。
風夏は学校では友人がいないと思っていたが、それは間違いだったようだ。もしかしたら、春夜が知らないだけで、他にも友人がいるのかもしれない。
「それはそうと、もう聞きたいことはないからゲームしようよ」
「ずいぶん急だな、まぁいいけど」
そう言うと、二人してコップとお菓子を持ち、テレビの前に向かった。
それからはいつものようにゲームをした。




