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春夜の苦手なもの

「そういえばさ、はるは図書室で何をしてたの?」


 箸休めに味噌汁を飲んでいたら風夏からそんな質問が飛んできた。


「月曜ってテストあるじゃん」

「あるね、はるに伝えておけばよかったけど」

「それは俺もそう思った、なつは知ってたんだから教えてくれてもよかったんじゃないかなって思った」

「ごめんごめん、私も忘れてたんだよ、テストあること」


 そう言うと風夏は笑いながら味噌汁を飲んだ。


「それはそうと話を戻そうか」

「そうだな、今日は図書室で勉強をしてたんだよ」

「へー、何の勉強をしてたの?」

「地理だよ、地理」

「チリ?国の?」

「違う違う、社会の地理、てかわざとだろう」

「あれ、ばれた」

「わかるはそんぐらい」

「あらら、今度はうまくやろう」

「はぁ」


 風夏がニヤケながらそんなことを言ったため春夜は肩をすくめた。

 テストの話をしているのに、突然チリの話をするわけはない。

 呆れはしたが、風夏とはいつもこんなノリなので、春夜も風夏とのやり取りを楽しんでいた。


「そんなあからさまに呆れないでよ」

「それならあまりふざけないでよ」

「断固拒否、はるとしかこんなやり取りできないもーん」

「友達作れよ」

「無理です、人見知りだし、はる以外は素の私知らないから、私が今から友達をつくるなんて無理だよ」

「はぁ、そうだな」

「てかはる、嫌がっているふりしてるだけで、本当は楽しんでいるでしょ」

「そんなことはない」

「嘘だ~、私には分かるんだからね、はるが嘘ついているってことは」

「まぁ、そう言うことにしてやるから話を戻すぞ」

「はる、逃げた」


 風夏にはお見通しだった。これ以上続けてたら風夏がずっといじり続けて来るのが分かっていたため、強引に話を戻すことにした。

 まぁお互い離れていた期間があるが、離ればなれになる前は毎日のように遅くまで一緒に遊んでいたため、相手の嘘などは互いにわかる。


「もう一度言うけど、図書室で地理の勉強をしてたんだ」

「今度テストがあるからだよね」

「あぁ、そうだ」

「はるって地理が苦手なの」

「まぁ、うん、苦手だな」


 苦手だと認めるのは、風夏にいじり要素をあげるようで嫌だったが、話が進まなくなるので認めた。


「ふーんそうだったんだ、だから図書室で参考書片手に勉強をしてたと」

「そうだな、なつがテストあることを忘れてなくて、俺に伝えてくれてればもっと前から復習できたのに」

「うっ、ごめんって」


 風夏にいじられっぱなしというのは癪なので春夜もやり返すことにした。


「なつって昔もそうだったよな、大事な事をいつも忘れるのは」

「そうだっけ?」

「あぁ、小さい頃一緒に新作のゲームしようって約束したのに、その日の朝になって、予定があったってドタキャンしたじゃん」

「あ、あったね、そんなこと……」

「俺はあの日とても楽しみにしてたんだぜ、なつと新作のゲームが出きるって」

「ご、ごめんって」


 風夏のさっきまでの威勢がなくなった姿を見て春夜はスッキリした、そんな春夜の様子を見て、風夏は話をそらすために、さっき手に入れたばかりの春夜の苦手教科の話に戻し始めた。


「ま、まぁ、過ぎ去った話しはおいといて」

「話をそらすなよ」

「そらしたのははるでしょ」

「そうだっけ?」

「とぼけたって無駄だよ、ってまた話が長くなるからこの話しも置いといて、はるって地理が苦手だったんだね」

「あー、まぁ、そうだよ、苦手だよ」

「へー、以外」

「そうか?」

「なんかはるは何でもできそうな気がしてたから」


 そう言う風夏の顔は本当に意外そうな顔をしていた。


「俺だって苦手なの物ぐらいあるよ」

「例えば」

「団体競技とかが苦手」

「へー、これまた以外、はるって運動神経いいから、団体競技とか好きだと思ってた」

「まぁ、陸上とかの個人競技は全然問題ないけど、団体競技だと仲間とのチームワークが大切じゃん」

「そうだね、チームワークが勝利の鍵だね」

「でも俺は周りを見ずに一人で突っ込み失敗しちゃうんだよね、自分でも治さなきゃいけないって分かってるんだけど、治せないから団体競技が苦手なの」

「へーそうなんだ」


 風夏はそう言うと餃子を口に運んだ。


「なつ、俺の話を聞いてた?」

「ちょっと待って……、もぐもぐゴックン、もちろん聞いてたよ」

「それならいいけど」


 春夜は白い目で風夏を見た。


「仕方ないでしょ、餃子が冷めちゃうんだから」

「あ、そうだな、忘れてた」


 そう言うと春夜は急いで餃子を口に運び、白米を頬張った。


「とりあえず食事を先に終わらせちゃうか」

「そうだな、話しはそのあとだな」

「ちゃんと聞かせてよ、なんで地理が苦手なのか」

「あぁ、わかったよ」


 そう約束しながら、二人は食事を再開した。その後はご飯が少し冷めかかっていたためか、二人の間に会話はなく、黙々と食べ続けていた。

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