手作りの餃子
リビングに入るとちょうど風夏が茶碗にご飯をよそっていた。
「はる、はやかったね」
「まぁ着替えるだけだからな」
「そうだね、すぐに配膳するから席着いてて待ってて」
「いや、配膳ぐらいだったら俺にもできるから、それぐらい手伝わせて」
風夏だけに任せるのは少し気が引けたため春夜はそう申し出た。
風夏の顔は少し驚いた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべた。
「ありがとね、はる」
「礼を言われる筋合いはないよ、料理に関してはいつもなつに任せきりだから、これぐらいは手伝わせて」
そう言うと春夜はよそってある茶碗を配膳し始めた。そんな春夜の姿を見て風夏は小さく
「本当にありがとう、はる」
と嬉しそうな笑顔で言った。
「「いただきます」」
数分後、配膳し終わり二人そろって食べ始めた。
今日の夕飯のメニューは、ご飯と味噌汁それと餃子だった。ちなみに餃子は風夏の手作りだ。
「おいしい、こんなに美味しい餃子は始めてだ」
「ふふ、いつもはるがそう言ってくれるから、作りがいがあるよ、でもちょっとお世辞が過ぎるんじゃないの?」
「そんな、お世辞だなんて、本当になつが作る手作りの餃子はとても美味しいんだよ」
「本当に?普通に作っただけだよ、そんなに他と違いがでる?」
「あぁ、全然違うよ」
そう断言する春夜。そんなに美味しかったのかと嬉しい半面、本当にそうなのかなと疑う風夏。
そんなことを考えていると不意にさっき春夜が言っていた言葉に引っ掛かった。
「ねぇ、はる」
「何?」
「さっき私が作る手作りの餃子はとても美味しいって言っていたけど、私以外が作った手作り餃子を食べたことある?」
そう問う風夏。そんな風夏にたいして、春夜はためらうことなく、風夏の問に答えた。
「いや、ないよ、手作りの餃子を食べるのはなつのが始めてだよ、いつもはレンジで温める餃子だから」
「だからか、レンジで温めて作る餃子がおいしくないわけではないけど、作りたての方がパリッとしてて美味しいから」
風夏は自分の予想が当たっていてびっくりしたが、少しだけがっかりした。
「はるはお義母さんの手料理何が好き、てか食べたことある?」
「母さんの手料理ぐらいだ食べたことあるよ」
「そうなんだ、てっきり家と一緒で仕事が忙しくて、遅くに帰ってくるのかと思った」
「まぁなつの言う通りだよ、母さんがはやく帰ってくるのは稀だったよ」
「やっぱり、それでインスタント系やコンビニのものを、多く食べてきたんじゃない」
「そうだよ、小中とほぼほぼインスタント系やコンビニの弁当だったよ」
「だから始めて私の手料理食べたときもあんなに美味しそうに食べてたんだね」
なぜかそんなことを言い顔を暗くする風夏。
「なんでそんなことを言うのなつ」
「だってはるは手料理に飢えてたんでしょ、だから私の手料理をたでたときあんなに喜んだんじゃないの?」
そう卑下する風夏に春夜は笑みを浮かべながら否定をした。
「何か勘違いしてるよ、なつ」
「何を勘違いしてるって言うの?」
「俺が手料理に飢えてたってこと。なつ達と再開する二日前に母さんの手料理を食べていたから飢えてるなんてあり得ないよ」
そう言うと風夏は驚いた顔をした。
「本当に?」
「あぁ、本当だ。なつの手料理がとても美味しいかったのも本当だ」
そう春夜が断言すると、風夏の顔に笑みが浮かんだ。元気を取り戻したようだ。
「ありがとうね、はる、そう言ってくれて」
「俺は事実しか言ってないぞ」
なぜか落ち込み、突然自分を卑下したと思ったら、元気になりお礼を言ってくる風夏。そんな風夏のに意味がわからないと思いながら春夜は箸を進めていく。




