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再会

 翌日、カスミの再婚相手……義父と義妹に会うために、春夜は電車の中にいた。


「眠い」


 重いまぶたをなんとか開けたまま、電車のイスに座っていた。

 昨日、カスミの再婚話について考えていたら眠れなかったのだ。

 しかも、今朝カスミから


「私は光間さんが迎えに来るから、春夜は先に光間さんの家に行って娘さんに挨拶しておきなさい」


 と言われていた。

 迎えに来るなら、自分も一緒に連れていってほしいと思ったが、言っても無駄だと思ったので、春夜は仕方なく一人で先に義妹に挨拶しに行く事にした。

 目的の駅に着くと春夜は今朝、カスミから渡されていた手書きの地図を見ながら、目的の家に向かった。




「ここだ」


 数分後、春夜は目的の家に着いた。

 春夜は地図から顔を上げ、家を観察した。

 茶色い壁に青い屋根、六畳程度の庭があり、玄関隣には車庫がある二階建ての家だった。


「ここが明後日から住む家か」


 春夜は明後日から義父達が住んでいるこの家に引っ越すとカスミから聞いていた。荷物詰め、運送は明日やるらしく今日は挨拶だけらしい。

 春夜は恐る恐る手を伸ばしては引っ込めてと繰り返していた。

 春夜は緊張をしているのだ。


「くそ、こんなところでためらうな俺!」


 春夜は覚悟を決め、勢いよくインターホンを押した。

 すると玄関のドアが開いて、女の子が顔を出した。


「はい、どちら様ですか?」

「え、え~と、あの~、あ、挨拶に、来た者、ですが……」


 春夜はさらに緊張した。そんな自分を恥ずかしく思い、下を向いてしまった。


「挨拶に来た?あ、父の再婚相手の息子さんですか?」

「そ、そうです」


 一方女の子……義妹は緊張した様子もなく、笑みを浮かべていた。


「お待ちしておりました。ささ、父とお義母様が来るまでリビングでお待ちください」

「あ、はい」


 春夜は言われるがままにリビングに案内されイスに座った。


「今、お茶を入れて参りますので、少々お待ちください」


 そう言って義妹はキッチンへ向かい、お茶の準備をし始めた。

 春夜は改めて義妹を見た。

 春夜より背丈が頭一回り小さく、髪は肩にかかるぐらいの黒髪だった。

 そんな彼女をみて春夜は疑問を覚えた。

 彼女の様子がどこか変だ。何となくだがどこか固さを感じる、言うなればメイドみたいだった。

 それに今日合ったばかりなのに、なぜか既視感を感じる。

 昔、どこかで合ったことがあるような、そんな懐かしさに春夜は囚われていた。

 そんな事を考えていたら、お茶の準備が出来たらしく、義妹が戻ってきた。


「そう言えば挨拶がまだでしたね。私は如月風夏(きさらぎ ふうか)と申します、以後よろしくお願いします」


 そう言って義妹……風夏は笑みを浮かべて頭を下げた。

 そんな風夏の様子を見て、春夜はやはりメイドみたいだなと思っていた。


「え~と、俺は令月春夜、こちらこそよろしく、それで質問なんだけどさ」

「はい、なんでしょう?」


 春夜は挨拶をしてから風夏をみて感じた懐かしさを聞いた。


「俺達って昔、どこかで会ったことがあるっけ?」

「え、いえ、私にはそのような記憶はございませんが」


 風夏は一瞬、驚いた顔をしたがずくに元の顔に戻り春夜の質問に答えた。


「ご、ごめん、変な質問しちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。私もあなたと会った記憶はございませんが、どこかであなたと会ったことがあるような気がするのです」


 春夜が謝ると風夏は笑顔でそう答えた。

 風夏のその笑顔もどこかよそよそしいと春夜は思った。

 出されたお茶を飲みながらそんなことを考えていると、玄関のドアが開く音が聞こえ、二つの足音が近づいてきた。


「あ、来たようですね」

「そうだね」


 そんなことを風夏と話していたらリビングのドアが開き、カスミと男性がリビングに入ってきた。

 風夏の面影がある顔やカスミと一緒に入ってきたことから、この男性が風夏の父でカスミの再婚相手、そして今日から春夜の義父(ちち)になる人だと思った。


「はじめまして、令月春夜です。今日からよろしくお願いします」

「はじめまして、如月風夏と申します、今日からどうぞよろしくお願いいたします」


 春夜は義父に、風夏はカスミに挨拶をした。

 二人の様子を見て義父とカスミはフフと笑っていた。

 そんな二人の様子に春夜は首をかしげた。

 その春夜の仕草をみて義父はあごを触り、ニヤッと笑った。


「それにしても春夜くんは大きくなったな~」

「風夏ちゃんの方も大きくなったわよ」


 義父とカスミは昔から、二人を知っていたみたいなやり取りに春夜と風夏は困惑を隠せないでいた。

 義父はあごを触るのをやめ、腕を組み春夜を見て挨拶をした。


「まぁ、いちよう挨拶はしておくか、俺は如月光間(ひかる)、春夜くんこれからよろしくな」


 そんな義父……光間に続きカスミは風夏をみて挨拶をした。


「じゃあ私も、私は令月カスミ、まぁ、婚姻届けはもう受理してあるから今は如月カスミかな、これからよろしくね、風夏ちゃん」


 そう挨拶をした光間に春夜は思い切って質問をした。


「あ、あの、義父(とお)さん、俺って義父さんと会った事って、ありましたっけ」

「私も聞きたかったのですが、お義母様と私って、どこかで会ったことがありましたっけ」


 春夜は光間に質問をすると、風夏も春夜に続いてカスミに質問をした。

 そんな質問をした二人をみて、光間は腕を組んだまま、カスミは口元を手でおさえて笑っていた。

 そして光間は風夏、カスミは春夜を見て、


()()、まだ分からんのか。」

()()、あなたもまだ分からないの?」

「は?」

「え?」


 春夜は驚いて風夏の方を向いた。それは風夏も同じだった。

 春夜は風夏の顔を見ながら、光間が呼んだ名について考えていた。

 その名は、春夜が幼いころいつも一緒に遊んだ、とても仲が良かった少女を春夜が呼ぶときの名だったからだ。

 そして春夜は恐る恐る風夏に確認をした。


「もしかして……なつか?」

「まさか……はるなの?」


 風夏も春夜と同じことを思ったらしく、春夜にそう聞いてきた。

 これが春夜と風夏、昔、離ればなれになった親友同士の再会だった

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