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図書室での出来事3

 今日会ったばかりの奴に頭を撫でるなんてどうかしている。

 そういってもなかなか昔からの癖は治らない。春夜は昔、拗ねたり、気を落としたりした風夏を、焔にやった様によく頭を撫でて機嫌を直していた。その時の癖が出てきてしまったのだ。最近は昔より人の頭を撫で、機嫌をとることは少なくなったが、ごく稀にしてしまう事があった。そういう自分に少しだけあきれた。

 そんな事を考えていたら、元の話題から脱線していたことに気づいた。


「あ、そう言えば話が脱線しすぎて忘れてたけど、なんで俺に話かけてきたの」

「あ、そ、そう聞かれていたのに、私が動揺したばかりに.....す、すみません」

「いや、俺も忘れていたからお互い様だよ」


 それにしても本当になぜ焔は、俺に話かけて来たのだろう。加害者意識が強い彼女は普段なら相手に迷惑をかけないように話しかけるなんてことはたぶんしないだろう、しかし彼女は話しかけてきた。彼女が話しかけてきたと言うことは何かがあった。だからこそ春夜に話かけて来たのではないのだろうか。

 何があって話しかけてきたのだろうか。もしかして図書室の利用時間が過ぎていたとか。あり得ないことはない、図書室に入ってからスペースを探したり、本を選ぶのに結構時間を使ってしまっていた、この学校に来てまだ間もないから図書室の利用時間を把握していない、それなら焔が話かけてくることも納得できる。

 焔は一度深呼吸をして春夜の方を見た。焔の準備ができた気がして春夜は考えるのを止めて話を聞くことにした。


「あ、あなたに声をかけたのは珍しかったからです」

「はい?」


 春夜は一瞬何を言われたかすぐに理解ができなかった。珍しいから声をかけた、これが焔以外から言われたなら納得はできたが、加害者意識が強い彼女から言われるとどうも納得ができなかった。

 春夜が納得していないことに気づいたのか焔は少し不安そうな顔をした。


「め、珍しいだけではなくて、その、珍しく思ったのが一番の理由ですけど、え、えっと、す、すみません、でもそれで声をかけた理由があるんです」

「.....と言うと?」

「この学校の図書室って広いじゃないですか、広いぶんたくさんの本があって本を探すだけで利用時間が過ぎてしまう場合があるんです」


 確かに焔の言う通り、ここには本がたくさんあるから選ぶだけで時間がかかる、そう言う春夜も今、本を選ぶだけで時間がかかっている。


「入学当初は皆さん、司書の先生に聞いていたみたいですけど、先生もこの学校に来たばかりで、どこにどんな本があるのかがわからなかったらしく答えられなかったそうです」


 焔が言ったことを春夜はすんなりと納得できた。図書室に入っただけでも、司書の先生がここの本全てを把握できないぐらいの冊数があることは一目瞭然だった。


「そのうち、学校の図書室で本を借りるより、近くの図書館で借りた方が楽だと思ったらしく、一部を除いたほとんどの生徒がそっちに行ってしまうようになって、今では利用者の顔と名前とどんな本を借りるのかが分かるくらいの人数になってしまったのです、ですのでここに私が知らないあなたが来たので声をかけたのです。」


 そう締め括って、焔の説明は終了した。

 いつも決まった人しか来ないこの図書室に焔の知らない春夜が来た、それは確かに声を掛けたくはなる。


「なるほど、だから珍しくて俺に話を掛けたと」

「は、はい、それに何か困っていたようなので、図書委員として何か力になれるのではと思ったので」

「ありがたいな、勉強しようと来たものの、どの参考書がいいかわからなかったから」

「そ、そういうことでしたらお任せください、去年から図書委員をやっているので、他の方より、この図書室には詳しいですから、どの本がどんな風によいのか、オススメしますよ」


 実にありがたい申し出だった。春夜だけで選んでいると時間だけ過ぎてしまい勉強どころではなくなってしまう、しかし去年から図書委員をしている焔が手伝ってくれるなら一人で選ぶより短い時間で本を選び、勉強する時間はたくさんとれるだろう。


「じゃあお願い、どの参考書が俺にはいいか選んでくれないか?」

「は、はい、お任せください、春夜さんにあう本をオススメします!」


 そういう焔の顔は笑顔だった。人に本を勧める事が好きなのだろう。

 焔は本棚に目を向けたが、何かに気づいて申し訳なさそうな顔をしてこっちを見た。


「ん、どうかしたの」

「すみません、どの教科を勉強したいのかを聞いていなかったので.....」

「そういえば言ってなかったな、俺が勉強したい教科は地理なんだ」

「地理ですね、えっと、何か選ぶ条件とかありますか?」

「いや、大丈夫だ、橘がいいと思ったやつにしてくれて構わないから」


 そういうと焔は少しだけ緊張した面持ちになった。


「は、はい、ま、任せてください」

「あまり悩まなくていいから、橘が勉強しやすいと思う本を選んでくれればいいから」


 そういった春夜に焔はコクリと頷き、本棚の方に目を戻した。そして春夜も本棚の方に向き参考書探しに戻った。

活動報告でも書きましたが、6ヶ月も更新しなくてすみませんでした。

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