テスト勉強をしよう!!
「そうだ、お前ら、来週の月曜テストだからな」
今日は休日の前の金曜、その帰りのSHRで明日の休日をどう過ごすかでクラス中がソワソワしている中、唐突に神無月が衝撃の地獄の報告してきた。
クラスはさっきまでの話し声が嘘のように静かになった。クラスメート達の表情を見ると、「嘘だ」、「聞いてない」、「テスト嫌い」などテストを快く思っていない表情をしていた。もちろん春夜も例外ではない。クラスはなんでテストがあるか聞きたいが、なぜか聞けない雰囲気があった。
そんな中、一人の勇者がその変な雰囲気に抗い先生に皆が聞きたかった質問をしてくれた。
「先生、テストがあるなんて聞いてません、なぜあるんですか?」
「おい、お前忘れたのか。春休み前に言っといただろう、休み明けにしっかりと休み中勉強したかを確かめるテストをするって」
「え、あ、そんなこと言われていたような気がしてきました……」
神無月の呆れたような声に、勇者はあえなく撃沈した。クラスメート達も休み前に、テストを行うと言う事を聞かされていた事を思い出したらしく、なんともいえない雰囲気になってしまった。
ただし春夜だけは、転校前と言うことで聞いていなかった。テストがあるなら転校初日に言って欲しかった。
「そうそう、春夜、お前は転校してきたから前の学校とテストのレベル……勉強内容が違うかも知れないが、頑張って勉強していい点取れよ、転校してきたばかりだから出来なかったなんて言い訳、俺は絶対に聞かないからな」
「はい、わかりました」
そんな言い訳はいわないし、そう言うならちゃんとテストがあることを教えとけよ、と言いかけたがなんとか飲み込んだ。
「じゃ、と言うことでSHR終わり、皆じゃあな!」
神無月はそう言うと首席簿を持って廊下に出た。神無月は皆が席を立つより速く教室から出てってしまう。一年の頃かららしく皆はもう慣れていた。春夜も最初は戸惑ったが、半月もしないうちに慣れてしまった。
神無月が教室を出たから、ちらほらとクラスメート達が帰り始めている。そんな中、春夜は隣の席にいるこの学校に転校して始めに来た友人(風夏は転校する前から友人なのでノーカン)に声をかけられた。
「なぁ春夜、お前テストは大丈夫か?」
「まぁ、多分大丈夫かな?」
「本当か、俺はお前の学力を知らないからその言葉を信じていいかわからん」
「そう言う大翔はどうなんだ、テスト、大丈夫なのか?」
「俺か、俺は全然問題ないぞ」
「おいおい、そう言う奴ほどテストの点数が悪いって言うのがお決まりなんだが」
「本当に問題ない、だって俺、生徒会副会長じゃん」
そう言われて春夜は大翔が本当にテストに危機を持っていない事がわかった。
この学校の生徒会は少し特殊で一定の学力がある生徒が選ばれる。その中でも生徒会長と副会長は平均が95以上で100点を一教科以上取っている者からしか選ばれない、ほんの一握りの人しかなれない役職なのだ。ちなみに、生徒会に入るかどうかは自分で決められるらしい。
「チッ、そういえばそうだったな、天才はいいよな、勉強しなくても点数が高くて」
「それなら俺は勉強してるから天才じゃないな、春夜もわかってるだろう、俺のノート見たことあるんだし」
「あぁ、そうだな、あのノートを見ればお前が、天才じゃなくて、努力して高得点を取っていろことは分かるな」
春夜はぶっきらぼうに言い返したが、言ったことは本心であった。一度大翔にこの学校がどのくらいの事を教えているのかを知るために大翔の復習用ノートを見せてもらったことがあった。そのノートには教科ごとに自分が覚えやすいように工夫がされており、なんページごとに確認テストを行っていた。その確認テストで間違えた所は次ページでもう一度学習しており、次の確認テストの所に出して覚えたかを確認していた。
そのノートを見た瞬間春夜は学習の量に驚き、固まってしまった。これだけのレベルを作るのに何日かかったか分からなかった。しかもそのノートはほんの一度でしかないらしい。それだけ勉強しているのだから副会長になれて当然だと思ってしまった。
「なんかお前のノートを思い出したら、勉強しなくちゃいけない気がしてきたわ」
「そうか、なら俺が見てやろうか」
「いや、いい。図書室の本で調べながらやる」
「そう、てか俺生徒会の仕事があったわ」
「教えるもくそもないじゃん」
「スマンスマン」
大翔は悪く思ってなさそうにそう言うと、机の上に置いていた自分の鞄を持った。
「そう言うことだから、俺は先行くわ、じゃあな春夜」
「あぁ、じゃあな大翔」
そう言うと大翔は教室から出ていった。
大翔が教室を出てから数分後、帰り支度を終わらせた春夜が鞄を持ち席を立った。
ふと気になって風夏の席を見てみると、そこには風夏の姿はなかった。もう家に帰ったのだろう。多分風夏も、学校であの性格で過ごしているのだから、あまり勉強しなくても点数は取れるのだろう。
そんな事を考えながら教室を出た。
春夜達の教室は二階にあり、図書室は一階にあるため、少し教室からは遠いのだ。しかし、図書室は昇降口の近くにあるため、それほど距離はない。
どんな勉強をしようか考えていたら、あっという間に図書室に着いた。何気に図書室に入るのは、今日が始めてだった。どんな本があるのか楽しみだなと考えながら、春夜は図書室に入った。




