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はじめての出来立て手料理

「おぉ、うまそう」


 着替えて戻ってきた風夏はてきぱきと昼食を作った。その内容は、ご飯と味噌汁、野菜炒めとハンバーグだ。どれも出来立てほやほや、正真正銘の風夏の手料理だった。


「いただきます」


 最初に味噌汁を飲む。飲んだ瞬間に驚いた。味噌の旨味が口の中に押し寄せてきたのだ、今度はワカメと豆腐を口に運んだ、どちらとも味噌の味をしっかりと含んでいたが変な主張はしていない、いい具合にワカメと豆腐の旨味を引き立てている。味噌汁だけでもこんだけうまいんだからと他の料理にも手をつけてみることにした、次に選んだのはハンバーグだ、ハンバーグは口に入れた瞬間にハンバーグの美味しそうな匂いがした。肉汁がとても旨い、しかも噛めば噛むほどハンバーグの旨味がました。ハンバーグの旨味を忘れないうちにご飯を食べた、このハンバーグならご飯が進むこと間違いなしだ。なんならここ最近していないお代わりをしそうなぐらい旨かった。野菜炒めもどの野菜が変な主張はしてないなくて全部が全部旨味を引き立ててご飯を進ませた。野菜炒めでご飯が進むなんてはじめてだった。

 夢中になって昼食を食べていたら不意に視線を感じて、手を止めて風夏の方を向いた。風夏と視線がぶつかった。風夏は少し気恥ずかしそうにしていた。


「どうした?」

「いや~、よくうまそうに食べてくれるな~って思って」

「実際にうまいんだから、美味しく食べてるように見えるだろう」

「えへへ、ありがとうはる」

「突然どうした、礼なんか言って」

「私、はじめてうまいなんて言ってもらったから」


 こう言う風夏の顔は少し影が掛かったような顔をしていた。そんな風夏の顔を見るのは嫌だった。


「うまい、美味しいなんて言葉はいくらでも言ってやる」

「え?」

「さっきも言ったが、実際に美味しいんだから美味しいくらいはいつでも言ってやる」


 そう春夜が宣言すると、風夏は驚いたような顔をした。しかしすぐに笑顔になった。


「本当にありがとう、はる」

「いや、俺の方が礼を言いたい、こんな美味しい料理を作ってもらったんたから」

「そんだけ美味しいって言ってもらえたら、私明日からもっと張り切って作っちゃうよ。でもうまさは変わらないと思うけど」

「別にうまさが変わらなくてもいいよ、こんだけでも十分美味しいから」


 本当にこれだけでも十分美味しいのだ、もしこれよりも美味しくなったら絶対に太ることだろう。


「本当にうまい、残り物のコロッケでもあんだけ美味しかったから、作りたてならもっと美味しいだろうなと思っていたけど、想像以上に美味しいわ」

「気に入ってもらえて私は嬉しいよ」

「気に入ったて言うより、今まで食べた中食事の中で一番美味しい」

「本当にはるは嬉しい事を言ってくれるね」

「くそ、散歩なんてしないでなつと一緒にご飯を食べていたら、もっと早くにこの美味しい料理にありつけていたのに……」


 風夏とオセロをやって、一緒に食事を食べた以来春夜はよく散歩もとい近所の探検に行っていた。そのため、食事はレトルトか風夏の作り置きだったのだ。


「でも必要なことだったと私は思うよ」

「まぁ、確かにコンビニやドラッグストア、スーパーそれにレストランの場所などが把握できたからよかったと思うけど……でもやっぱりなつの料理を食べたかった」

「はるは本当に私の料理が好きになったんだね」

「あぁ!」


 本当に俺はなつの料理が好きになった。て言うかなつの料理を食べた人は絶対に好きになるだろう、断言できる。


「俺だけじゃないと思うぞ、なつの料理を食べたら絶対になつの料理が好きになる」

「いや、それはないよ、私の料理を嫌いな人はいるもん」

「なつ……」


 否定をしたかったが、なつがとても暗く何かを思い出して傷ついているような顔をしていたためなにも言えなくなった。前に誰かに料理についてなんか言われたのだろうか、それなら誰に、こんなに美味しい料理に何を言ったのだ、何を言ったらこんなになつは傷ついた顔になる。

 春夜が風夏の過去について考えている事がわかったのか、風夏はあわててなんでもないような明るい顔をした。


「あはは、ごめんごめん、変な勘違いさせちゃったかな、ただ単に世界にはたくさんの人がいるんだから私の料理が気に入らない人がいるんじゃないかなと思っただけだよ」

「そうなのか……」


 春夜は納得しなかったが風夏が誤魔化したため、風夏の過去について検索することをやめて食事を再開した。

 その後、会話をしないで昼食を食べた。

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