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従者として2(スペリア視点)


 現在、殿下とアルロスが暴れたせいでよくわからないまま後片付けをしてるスペリアです。


 あの後すぐにエイミー様は婚約書にサインをされたそうなのですが……。

 まさか本当にエイミー様が殿下を好きになっていたなんて全く気づいていませんでした。

 だからその話を聞いたときは驚きのあまり殿下へ、嘘だと本気で言ってしまいました。

 まあ、普通なら妄想だと思うのは仕方がないですよね。


 そして俺が後片付けを一人で任されてる理由ですが、殿下に嘘だと文句を言ったからではありません。

 俺が修復魔法の使い手である一族の生まれのため、こういった修復は得意なのです。

 まあ、ようは王子のやらかしを誤魔化す為に私はいるのですが、逆にこんな力があるせいで王子の従者をさせられているのだと実感してしまうのです。

 そして何故俺は、こんな事を考えているのかといえば……。


「スペリア、僕の話を聞いているのか?聞いていないのならもう一度最初から話をしようか……!」


 俺の横でデレデレしている殿下が、エイミー様の話をずっとしているのを聞き流す為だったわけですよ!!

 ……もう、俺としては作業の邪魔だからどっかに行って欲しいのですけど!?

 いや、いっその事殿下の頭も一緒に治せたらいいのに、とさっきから思っているところですよ。


「まさしくあの瞬間、僕とアルロスを止めに入ったエイミーは僕の前に現れた天使だったよね」


 そして本当に最初から話始めたよこの人!?

 ほんの少し構ってあげないだけこれですし、それに無限ループは嫌ですからここからは真面目に聞く事にしましょう。


「そしてスペリアも見ただろ?あの瞬間、エイミーが空から舞い降りる羽と共に現れたのを……。きっとエイミーの背中には、美しい羽が生えているに違いない!」


 ………………は?


「いやいやいや、話をよく聞いたら全部おかしいですけど!?エイミー様は普通に階段から降りて来ていましたよ!!」

「スペリア……お前の目は正常か??」


 正常じゃないのは殿下ですけど!?

 とにかく今の殿下の相手は本当に面倒なので、真面目な事を質問して話を逸らす事にしましょう。


「わかりました、とりあえず殿下の中ではそういう事にしておきましょう」

「何を言ってるんだ、僕だけじゃなくて全員がそう思った筈なのに……!」

「今はそんな事よりも、アルロスについて教えて下さい。殿下はあの後アルロスをどうされたのですか?」

「えーっと、そうだ!アイツなら気を失わせた後にとりあえずフィアに渡した。今度スペリアを貸し出す事で引き取ってくれたからな」

「……は?」


 いや何で勝手に俺をダシにしてるのこの人!?

 本当、フィア様の事がバレてからさらにタチが悪くなった気がするんだけど……。


「今の話は聞かなかった事にしますが……アルロスの処遇はどのように?」

「正直な話処刑されてもおかしくないんだが、今回はアルロスのおかげでエイミーが僕の事を好きだと言ってくれたからなぁ~」


 やっぱりこの腹黒王子は、全て計算して暴れてたのか……。

 なんだかアルロスが可哀想に思えてしまったのだけど……なんだろ俺、凄く疲れてるのかな?


「そうだな。今回の被害はこの場所だけであって、怪我人はいない。だから外部からの襲撃と言う事にして、適当に処理しておけ」

「かしこまりました」

「どうだ、この僕にしてはとても優しい判断だと思うだろ?」

「ええ、まぁ……」


 それでもアルロスは死ぬ事は逃れても、多分心が死んだんじゃないだろうか……?

 確かに性格は糞な奴だけど、今は少しだけ同情してしまうよ。


「それと気になっていたのですが、倒れていたカロスはどうしました?」

「それなら、エイミーと一緒に帰した。と言っても、まだ意識が戻ってないからな。もしかするとエイミーは一緒の馬車にいる事自体気が付かないかもしれない」

「意識がないとはいえ、途中で起きる可能性もあるのでは……?」

「まあ、それならそれで別に良いかな」


 ……ええぇっ!!?

 まさかの回答に驚きすぎて、一瞬言葉が出てこなかったんですけど!?


「よろしいのですか!?カロスはエイミー様の事が好きだったのですよね?」

「そうだが、あの男については大丈夫だ。アイツの父親の後ろには僕がいるからな、いつでも圧をかけられる」


 いや、すごい悪役みたいな顔してますよ殿下!!

 しかもカロスの親が、エイミー様だけは駄目だと言っていた原因は間違いなく殿下だコレ!!?

 こんな男に好かれてエイミー様も可哀想に……。


「それで、今後の予定は……まずは婚約発表でしょうか?」

「いや、婚約発表の前にまずは学園での噂をどうにかしなくては……。明日にはエイミーが婚約者だと言う事は皆に知れ渡っているだろうからな」


 確かに貴族の噂は広まるのが早いですから、明日ではなくもう既に知れ渡っていると思った方がいいですね。

 そして殿下が気にしているのは、以前エイミー様を守る為に殿下自身が撒いた噂の事だと思われます。


「殿下は、すでに出回っている噂の方が厄介だと言っているのですよね?」

「ああ、そうだ。僕は少し前から本命の女性がいると噂を流していたからな。そのせいできっとエイミーに対して、殿下には本命がいるのに。と、ちょっかいを出す奴らが増えるはずだ」

「それは完全に自業自得なのでは……?」

「そうかもしれないけど、違うんだ!本来なら噂の人物を徐々にエイミーに近づけていく予定だったのが、思ったよりも早く計画を進める必要が出来た為に間に合わなかったんだよ!」


 確かに思ったより早まったのは事実ですが、やっぱりこれは自業自得ですよ。なんて言えないので、俺はそれっぽい相手の名前を出しておく事にしました。


「えーっと、それはアルロスとかエイミー様の弟のせいですかね……」

「本当、その通りだよ!だからエイミーを守る為、その噂を早めに書き換える必要がある。アルロスはすぐにあの令嬢達に急ぎ連絡をしておけ」

「かしこまりました。丁度修復も終わりましたので、私はこのまま向かいます」

「頼んだ、エイミーと僕の幸せな未来はスペリアにかかっているのだからな!」


 いやいや、何でだよ!!?

 いつもそうやって私に重荷を乗せるのはやめてください……それに噂については、やはり自業自得ですから!!

 そう言いたいのをグッと堪えて、俺はその場を後にしたのです。


 それにしても二人がようやく結ばれたというのに、今後が不安で仕方がありませんね。

 まず間違いなく突然現れたエイミー様は、世間からの風当たりが強くなるでしょう。

 まあ結構心の強いエイミー様ですから、そこは大丈夫な気がするのですけど……。


 それに今の俺は、他人の心配してる場合じゃないのです……いや、本当にフィア様のデートはどうすればいいんだ!!?

 多分あの人の事だから、世間の目がエイミー様に向かっている間に仕掛けてくるつもりなのでしょう。

 こうなったら本格的にお断りをする方法を考えないと……。


 こうして俺は、頭を抱えながらとある令嬢の元へ向ったのです。

 そして馬車が止まった頃、御者さんに「唸ってましたけど大丈夫ですか?」と聞かれて「大丈夫じゃないです」と言いながら降りる俺がいました。

 いや、本当に今の俺は大丈夫じゃないですから!


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