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婚約書1


 どうしよう……。

 混乱している間に、もうすぐお城に着いてしまうわ!?

 馬車の中で殿下は全く私に話しかけてこないし、本当にこの後私にどうしろと言うのよ!

 それに殿下ってば、私の事を婚約書だなんてふざけた事言ってたわよね。

 もうあれは夢か何かじゃないかと思ってるけど……え、本当にあれは夢よね?


「そうだ。言い忘れていたけど、お城に着いたらエイミーには婚約書にサインをしてもらうよ?」


 突然喋り出したと思ったら、何?

 こ、婚約書!?


「え?婚約ってどう言う事ですか!!!?」

「あれ?さっき言った事、覚えてないのかな。エイミーはね、僕の婚約者に選ばれたんだよ」


 僕の婚約者に選ばれ───?

 はぁぁ!?何がどうなったらそうなるのよ!?

 私みたいなのが婚約者に選ばれるわけないじゃないの!!

 そうよ、もしかすると今も現在進行形で夢かもしれないのよ!?

 頬をつねって確認しましょう!


「これは夢よね、えいっ!!って痛いわ!!?」

「ふふ、エイミー何でそんな可愛い事をしてるのかな?」

「か、かかか可愛い!?」

「でもダメだよ。エイミーの可愛いほっぺたが赤くなっちゃうから、ほら撫でてあげる」


 な、撫でて!?

 ひぃ……殿下の手が私の頬に触れて───。

 そんなの耐えられるわけないでしょう!!


「だ、ダメです!!」

「どうして?こんなに顔を真っ赤にしてるのに……?」


 だ、ダメ……殿下の事諦めなきゃいけないのに、こんなに意識してたら好きだってバレちゃうじゃない!!?


「ま、まって!?」

「あ……残念だけど、お城に着いてしまったみたいだ。エイミー、この続きは後でとっておこうね」

「あ、いや……」


 え!?これ現実なのーー!!!?


「じゃあ、馬車から降りるのは僕が降ろしてあげようね」

「へ!?」


 待って、なんでお姫様抱っこされてるの私!?

 どうにか抵抗しないといけないのに、混乱しててもうダメ!!?


「ほら、エイミー着いたよ。そうだ僕の部屋までこのまま連れて行ってあげるよ」


 このまま!?

 流石に人目が気になるから、もう許して!!


「お待ちなさいませ!!!!」


 突然の声に驚いてそちらの方を見ると、フィア様達がこちらに向けて走ってきてたのだけど……。

 いや、何そのメンバー!?

 フィア様にスペリア様、カロスに影のお姉さん。

 あなた達は一体何処で出会ったのよ!!?


「おーほっほっほっ!殿下、ようやく追いつきましてよ!」

「ちっ、フィアに邪魔されないようにと今日中に全てやるつもりだったけど、流石にバレたか……」


 えっ、それはどういう事!?


「クレス殿下、エイミーを離して下さい!」

「そうですよ殿下!どうして俺に何も言わずにこういう事をするんですかー!」


 カロスとスペリア様が殿下に何か文句を言ってるけど、私の耳にはフィア様と殿下の話しかよく聞こえてこないわ。


「殿下は混乱しているエイミー様を無理矢理婚約者にするおつもりでして!?エイミー様の気持ちはどうされるのですか!!」

「ふっ、残念だが僕はエイミーの気持ちをもう何もかもわかってるつもりだ!」


 え?私の気持ち……???

 もしかして、もうすでにバレてるの!!?


「それはいつもの病気ですわよね?」

「びょ、病気!!?いや、フィア。これは病気じゃなくて本当に……!」

「いえ、ワタクシは殿下の言葉なんて信じませんわ!それにエイミー様はどうしたいのでして?既に気持ちを決められているのでしたら、ワタクシはもう何も言いませんわ!ですがまだ迷っているのでしたら、ワタクシはエイミー様の意思を尊重しますわ!」


 私の意思……。

 そうよね。私は確かに殿下の事がまだ好きだけど、私じゃ釣り合わないと思ってわ。

 だけど殿下はどうやったのかわからないけど、私を婚約者にまで押し上げたのよ……。

 それなら私は本当に諦める必要があるの?

 私は諦めなくてもいいんじゃ……。


「わ、わたし……私は!」

「エイミーーー!?」


 あれ、大事な事を言おうとしたのに私を呼ぶ声で全部吹っ飛んだじゃないの!?

 私の邪魔したのは何処の誰!!?

 声がした方を見るとお城の方から知ってる顔が、こちらに向かって走ってきているような……?


「あれはアルロスですわ!!?」


 ……あるろす、えっ!?アルロス!!?

 どうしてここにアルロスが?


「どうしてあの男がここにいるんだ?」

「殿下、本日彼は前回の事で最終報告に見えたようです」

「何でこんなタイミングで!!!?」


 しかもアルロスは目の前までくると、わかっていたけどあからさまに怒り出したのよ。


「おい、貴様!エイミーを抱っこするのを今すぐやめろ!!」

「そう言いながら、君は相変わらずエイミーごと魔法で殺すつもりかな?」


 アルロスは既に魔法を放とうと、手のひらに赤く燃え上がる炎を纏っていた。


「それにアルロス、君は俺が誰だか本気でわかってないのか?」

「貴様が王子だとしてもエイミーに手を出した事は絶対に許さない!!」

「知ってるのに、そんな事していいと思っているのかな?」

「うるさい!!!」


 いや待ってアルロス、本当に炎をこちらにむけて放つなんてどうかしてるわよ!?

 でも殿下は右手でその炎を軽くはたき落とすだけで、その魔法は簡単に消えてしまったのよ……そうよね、やっぱり殿下って本当に強いんだわ。

 って、何惚れ直してるのよ私は!!?


「残念だけど、君の魔法は僕には効かないよ?」

「……何故だ、こんなのあの時の護衛野郎ぐらいしか……まさか、お前!?」

「そのまさかだったら、どうするのかな?」

「それならお前を倒して、エイミーを手に入れるまでだ!」


 いやいやアルロス!?

 流石にそれは王子暗殺になるわよ!!

 このままじゃ死刑まっしぐらよ!?


「殿下、なにしてますの?さらにアルロスの怒りに火をつけてどうするのでして!?」

「大丈夫だ、コイツは頭に血が上ってるほうが弱い。それとここは危険だから、エイミーは先にお城の中で待っててくれないか?」

「は、はい?」


 ようやく降ろしてもらえたけど、私はどうしたら……?


「エイミー様、今がチャンスですわ!!とりあえず殿下から逃げますわよ!」

「ええっ!!?」


 フィア様に手を掴まれたと思ったら、既に走り出しているのですけど!?


「おい、フィア!!このタイミングでなんて事をしてくれるんだよ!?」

「おーほっほっほっ!エイミー様を離したのがいけないのですわ!さあ、エイミー様急ぎますわよ!」

「ま、待て!!」

「おい、貴様!?俺と戦ってるのに余所見をするな!」


 どうやら殿下はアルロス様につかまっているのか、追いかけて来れないようね。

 そしてフィア様はお城へと入ると、人が入ってこなさそうな資料室へと飛び込んだのよ。

 それなのに逃げるのに必死で、私は何でフィア様とここに来たのか忘れたのですけど???


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