従者として1(スペリア視点)
今日は殿下からの言いつけで、フィア様とデートをしているスペリアなんですが……。
横にいるフィア様はエイミー様の事が気になっているのか、朝からずっと気が気ではなさそうです。
その為、お昼にと入ったお店でかれこれ数時間もかけてお食事をされていましたから……。
「あの、フィア様?そろそろ出ませんか?」
「……ふぇっ?」
あ、これ完全に思考がどっかいってるやつですね。
「へゃぁっ!?ど、どうして目の前にスペリア様が……そ、そうでしたわ!ワタクシ、スペリア様とデートに……なのになんて恥ずかしい所を!!」
「恥ずかしいのはわかりますから、少し落ち着いて下さい!」
フィア様が突然騒いだせいで既に周りから冷たい目線で見られているんです。
実は結構お気に入りの店だったのに、もう二度と来れなくなりましたからね!?
「と、とにかくここを出ましょう!」
「ひゃっ、ててて、手……手を……手が!?」
「エスコートするんですから、手ぐらいとりますよ!!」
顔が真っ赤だけど気にしてられません!
とにかく馬車へ急ぎましょう。
「フィア様、そんなに気になるのでしたら今すぐにエイミー様の所へ向かいましょうか?」
「で、でもせっかくのデートですのに……」
「はぁ……でも上の空のままだと私への好感度は下がるばかりですよ?」
まあ、上がる予定もないですけどね……!?
「はぅ!?」
「それに、私はいつもの堂々としたフィア様の方が好きですから」
「スペリア様……」
こうして俺はフィア様と馬車に戻りましたよ?
それに、確かに俺はいつもの方がいいと言いました。
そう言ったけど……どうしてこうなった!?
「ほーっほっほっ!!さぁ、今すぐにエイミー様を助け出しに行きますわよ~!」
馬車の中でそう叫ぶフィア様に頭を抱えてる俺がいたわけで……。
誰もそこまで元気になれとは言ってないのに何故だ!?
「……っ!?ストップですわ!」
「フィア様、どうしましたか?」
「あれを見て下さいまし!」
「えーっと、エイミー様の家の前に馬車が……ってあれは王家専用の馬車!?」
「そして、さらにその手前をよくご覧くださいまし!!」
「あ、あれは殿下!!??」
しかも誰かを抱えているような……。
「はぁぁ!?なんでエイミー様を!!!」
「え、エイミー様だって!!!?どうして殿下がエイミー様を抱えて馬車に?」
今日の殿下は婚約解消をする為の会議に参加してる筈では??
「とにかく考えてる時間はありませんわ。あの馬車を追いかけますわよ!」
「ちょっと待って、よく見て下さい!!私達の馬車の前に誰かいますよ!?」
「あれはエイミー様に付けていたワタクシの影ですわ。馬車に乗せますわよ!」
フィア様が馬車の扉を開けて影を中に引き込んだと思ったら、何かもう一人付いてきたんですけど!?
「わ、悪い!俺も乗らせてくれ!!」
「貴方は……カロス・ブラストルですわね?」
「あ、ああそうだ。フィーリア様と、スペリア様ですよね。俺はさっき殿下がエイミーを連れて行くまで、そこにいる影のお姉さんと一緒にいたんだ」
「フィア様、彼に害はないかと……先程もエイミー様を助けようと必死でしたので……」
フィーリア様はじっとカロスを見て、その真剣な眼差しに何かを納得したようでした。
「……わかりましたわ。ですが時間がないので、あの馬車を追いかけながらお話を伺いますわよ!」
馬車が動き始めたのと同時に、フィア様はカロスに経緯を聞き始めたのです。
「それで、どうして殿下がこちらへ?」
「それが俺にも何が起きたのかよくわからなくて……閉じ込められているエイミーを必死で逃がそうとしてたら、突然殿下が現れて『エイミーは僕の婚約者』だってエイミーをそのまま連れ去ったんだ……」
「それは本当ですの?」
「フィア様、彼の証言はあっております」
影の言葉に俺とフィア様は顔を見合わせていた。
「スペリア様は何も知らなかったのですわよね?」
「ええ、私は今日の会議は婚約解消だけだと……」
「あのクソ王子め、ワタクシを会議から遠ざけた本当の理由はその場で新しい婚約者を決める事でしたのね!可能性はあるかと思っておりましたけど、そんなすぐにエイミー様が承認されるなんて思っておりませんでしたわ!!!」
「ひ、ひぃ……」
フィア様の怒りにカロスがビビってますけど!?
「クソ殿下め、許さなくてよ!!!」
「あ、あの……俺もついて行ってもいいか?」
「あ゛あ゛っ!?」
「ひぃ……」
フィア様!?何でカロスにまで当たりが強いんですか!
まさか、怒りのあまりおかしくなってるんじゃ……。
「貴方は既に馬車に乗っているのですから降ろすわけにも行きませんわ。てすが、一つだけ聞きたい事がありましてよ?」
「な、なんだ?」
「貴方、噂ではエイミー様が好きだと聞きましたけど?」
「はぁ!?誰だそんな噂を流したのは!!?」
それは……うちの殿下です!!
なんて口が裂けても言えませんよ!?
しかもこれは、その方がカロスの父君に圧をかけてもらえる筈だという、殿下なりの嫌がらせですからね……。
「ワタクシは知りませんが、それは事実ですの?」
「噂は許せねぇけど……エイミーを好きなのは事実だ。でも俺はエイミーが殿下を本当に好きなら潔く諦める。だけど嫌々婚約させられそうなら助けるつもりだ!」
「……貴方、なかなか見込みがありますわね!だってワタクシも同意見ですもの。だからその為にはお城に乗り込む仲間と、なにより作戦が必要ですわよ!!」
「……は?」
もう、フィア様!!
カロスが突然置いてけぼりにされて、ポカンとしちゃってますよ!!?
「ワタクシが思うに、エイミー様はまだ本当の婚約者にはなっていない筈ですわ。ですからきっとお城に着き次第、婚約書へとサインをしてもらう筈でしてよ?だからワタクシ達はその前に、エイミー様と接触しなくてはなりませんわ!」
「それなら着いた瞬間に殿下達の所へ突撃して、一旦エイミーを引き剥がせばいいわけか?」
「カロス、その通りですわ。その為にスペリア様は殿下を一瞬でも足止めしてくださいませ!」
は!!?
いや、何でいつも俺が一番大変な所なんだよ!?
しかも、フィア様の俺なら出来るっていうそのキラキラした目はやめてくれ!!
「フィア様、お話中申し訳ありません。仲間から伝言がきております」
影さんが慌てて口を挟んだ為、フィア様は突然真顔になったのです。
「ケイ、話していいですわ。何があったのかしら?」
「それが……現在お城ではアルロス様がこの間の一件を報告する為、滞在しているようなのです」
「な、なんですって!?もしアルロスがここでエイミー様と出会いでもしたら、またおかしくなる可能性がありますわ!!」
確かにアルロス様はフィア様と約束したといえども、突然おかしくなるのは変わらないと思いますからね……。
しかも3人揃ったら、今度はお城が壊れる可能性もありますから!?
もうこれは緊急事態ですし、今はフィア様に賛同するべきです。
「フィア様、私もそう思います。ここは殿下がお城に入る直前に……いや、エイミー様をお城に入れてはいけません!」
「そうですわね。これ以上混乱が起きる前に、皆で力を合わせて頑張るのですわ!」
「「「おー!!」」」
一人疑問系だった気がするけど、今の俺達にはそんな事言ってる余裕はなくなっていたのです。
もう本当、これ以上俺に迷惑かけないでくれとキリキリ痛む胃を押さえながら、俺はフィア様の作戦に耳を傾けたのでした。




