フィアのお部屋会議6(スペリア視点)
エイミー様がお帰りになられたと聞いて、俺と殿下はフィア様に話を聞きに来たわけなのですが……現在、フィア様のお部屋にて大変虚無を感じているスペリアです。
俺はここに来てからずっとフィア様に怒られる殿下を横目で見ているわけですが……そもそも何故フィア様が怒っているかといえば、殿下がエイミー様にコッソリ会いに行ったのがバレたからなのです。
ですが俺は知っています。
今回は殿下がわざとフィア様との約束を破った事を……。
「いやぁ、まさかエイミーの言葉でバレるなんて全く思わなかったよね~。これは予想外だった!」
なんだろう、絶対にこの人謝る気ないよね??
先程から殿下はわざとフィア様を怒らせてるようにしか見えないし、流石のフィア様も呆れて怒るのが面倒になってきてるのか、なんだか可哀想に思えてきましたよ。
「あ~もう!!殿下の言い方が鬱陶しくて腹が立ちますわ!それにバレた理由はそれだけではありませんのよ?ですが、おきてしまった事は仕方ありませんし、今回はエイミー様が夢だと思って下さったからまだよかっただけですわ!」
「そうなんだけど、でもエイミーが……ぼぼ僕の事を、すすす好き、好きだって!ふふふ!」
「殿下、気持ち悪っ???」
「ひ、酷い!!!?」
フィア様の言う通り今の殿下は興奮しているせいで、いつもの10倍ぐらい気持ち悪かったですね。
「本当の事でしてよ!それにエイミー様は夢だからそう言っただけで、もう殿下の事は諦めるつもりですわ。……だからこそ、殿下は一体どうなさるつもりですの?」
「あんな可愛いエイミーを見てしまったら、諦める方が難しいよ……」
正直、両思いと知ってしまったのに殿下が諦めるとか言いだした瞬間、俺はこの人を偽物認定して蹴り飛ばすところでしたよ。
きっとそう思ったのはフィア様も同じだったのでしょう。真面目な顔をしている殿下が少し可哀想になるぐらい、フィア様は凄く呆れた顔をしていましたから。
「……殿下の諦めない気持ちはよくわかりましたわ。ですがもし殿下と私の婚約が白紙に戻った場合、次の婚約者は決まってまして?」
「そんなの誰もいないよ?」
「は!?」
「全員、失脚させたからね」
「は?失脚……?」
フィア様が驚くのも無理はないですよね。
だって殿下は本当に婚約者候補の親関係の裏を暴いた上で、殿下とエイミー様の婚約を進める派閥への強制参加を強いたのですから……。
正直その才能は恐ろしいものがあります。
「と、言うわけだから後はエイミーをどうにか婚約者に添える方法を考えているのだけど、何かいい案ない?」
「そんなものありませんわ!??もう、殿下と話していると私の頑張りがちっぽけに思えてしまいましてよ!!!これだからあなたの事が嫌いなのですわ!!」
「ええっ!?それは理不尽だよ!!?」
確かにフィア様の怒りは理不尽ですけど、いつも5歳児のようにアホな殿下を見ていると怒りたくなる気持ちは凄くわかります。
「もう、もう!その話は後回しにしますわ。それよりもワタクシとの約束を破ったのですから、1日スペリア様をお借りしてもよろしいですわよね!?」
「ああ、約束を破ったのは僕だからね。そういえばスペリアといえばさ、フィアってばスペリアの事が好きなんだって?」
「なっ!?ななな、まさかスペリア様が!!?」
真っ先に疑われてしまったので、俺は頭を下げて謝っておく。
「ほら、見てよスペリア!フィアのこんな可愛く慌てた姿見たの初めてだよ!!」
「べ、別にワタクシがスペリア様を好きだから何だと言うのでして!!?」
「えー、特に何もしないよ。僕は2人を応援したい派だから安心して!」
「え?殿下が、応援してくださいますの……??」
「うん、もちろんだよ。だから1日スペリアを貸すのは問題ないけど、日にちをこちらで指定してもいいよね?」
殿下が一瞬こちらをチラリと見たという事は、ここで殿下発案の『フィア様を浮かれさせろ作戦!』を実行しろと言うことなのですよね。
正直名前がとか何で俺が、とか思いましたけど俺は言われた通りにやるだけですよ。
「フィア様……」
「す、スペリア様?どうしていきなり近づいて来ますの?」
確かフィア様の目の前まで来たら、ここで片膝立ちをして手を取る。そして目を見つめながら用意した台詞を言えば良かったはずだ……。
「今週末は、私が貴方をエスコートします。だから一日中貴女の時間を独占してもいいですよね?」
「っ!?」
後はウィンクして、手の甲への流れるようなキスをする。よし、これで終わりですね。
殿下の方をチラリと見ても、親指を立ててくれてますからどうやらバッチリ決まったようです。
でも何故かフィア様からの反応がないのが気になりますけど?
「フィア様?」
「……す、スペリア様はずるいですわ~!そんなの断れないじゃないですの!!」
「えーっと、つまり週末でいいと言う事ですね」
「そうですわ!!」
「それならよかった。それにしても、フィア様のお顔は真っ赤で可愛い事になってますよ?」
「な、ななな!!?」
あれ、何でだ?フィア様の顔が更に赤くなったのだけど、俺変な事言っただろうか……?
「す、スペリア様の天然タラシバカーーー!!!」
「タラシ!!?」
いやいや、何でフィア様は叫びながら部屋を出て行ったんだ???
「おー、フィアがあまりにも恥ずかしくて飛び出して行ってしまったな!よっ、タラシ!」
「殿下までなんて事言うのですか!?」
「まあまあ、これでフィアとの約束をどうにか誘導する事が出来たようだし良いじゃないか!」
「……まあ、確かにそうですね」
今回、俺が殿下にお願いされたのはひとつだけですから……。
それはフィア様とデートをする事ではなく、週末におこなわれる会議へとフィア様を近づけない事。
それが俺への本当の命令だったのです。
だけどその為に一日中フィア様とどう過ごせばいいのかまだ何も考えてないのだけど、これは一体どうするのが正解なんだろうか……。
「とにかく、フィアとのデートは頑張るんだぞ!そのままフィアと恋人になっても僕は何も言わないから安心しろ!」
「なんて恐ろしい事を言うのですか!!?だいたい……!」
殿下のせいでと言おうと思ったのに、突然フィア様が扉をバタンと開き慌てて戻って来たので、ついそちらを見てしまったのです。
「た、たた大変ですわ!!!?」
「フィア、そんなに慌てて一体どうしたんだ?」
「今エイミー様から密書が届きましたの。どうやらエイミー様はご実家の部屋から出られなくなっているようですわ!!?」
「……それは、エイミーが自分の部屋から出てこないだけじゃないんだよね?」
「違いますわ!どうやらエイミー様は弟さんに監禁されているようですのよ!!」
「「弟に!?」」
その情報に驚いた俺と殿下はすぐにエイミー様の家に向かったのですが、何故かエイミー様はここにはいないという理由で合わせてもらえませんでした。
ただでさえ週末までに考えなくてはいけない事が多いのに、ここにきて俺は更に情報を集めなくてはならなくなってしまったのです。




