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匿われて2


 これは夢、よね?だってそうじゃないとおかしいわ!?

 ここは屋根の上だし、何故か私の隣には殿下がいるんだもの……こんなのって夢以外の何物でもないじゃない!

 それに夢の中だからかしら、それとも雲で月が隠れているからかしら?殿下の顔がよく見えないわ。

 それなのに殿下はいつものように私に愛を呟いたのよ。


「何度だって言うよ、僕はエイミーの事を愛しているよ」


 ……もしかして最近余り言われてないせいで、私の願望が出ているかしら!!?

 ダメよ、エイミー!!諦めると決めたのに、愛を囁いて欲しいなんて贅沢だわ!

 

「エイミー、顔を赤くして可愛いね。僕の事、意識してくれてるのかな?」


 ああっ!もう、夢の中の殿下もやめて!?

 そんなカッコイイ顔が近づいてきたら、さらに顔が赤くなるじゃない!!

 これ以上は流されちゃう……いえ、もういっその事ここは夢だと割り切って流されて見ようかしら?

 どうせここは夢の中だもの。現実で言えない事を殿下に伝えたってバチは当たらないわよね?

 寧ろ、喋ったらスッキリするかもしれないわ!


「わ、私……殿下の事、凄く意識してます……」

「えぇっ!?」


 なんで真面目に答えて驚かれるのよ!?

 夢の中なんだから、素直に受け止めてほしかったわよ!!

 ……でも私のイメージの殿下ってこうかもしれないわ。


「あの、そんな事言う私は変ですか?」

「いや、変じゃないよ!!」


 変じゃないのはわかったから、顔を近づけるのはやめて!?

 それにさりげなく手を握らないで……これも私の願望でしょって言われたら、そうなんですけど!!

 だけど自分の願望を見せられ続けるのは、流石に恥ずかしいわよ!?


「あ、あの……殿下?」

「……ごめん、少し驚いただけさ。でも寧ろ僕はエイミーに意識してもらえて凄く嬉しい。まさか素直に言ってくれるなんて思っていなかったからね。もしかして今のエイミーなら、答えてくれるかな?」

「は、はい……」


 突然、殿下が真面目な顔をしたせいで少しドキッとしてしまう。


「エイミーが僕の事、どう思ってるのか知りたいんだ」

「どうって……」

「僕の事、好き?」


 えぇっ!?いや待って、これは流石に直球すぎるわよ!?

 でもよく考えて、ここは夢なのよ。

 ……それってつまり、本当は私が殿下に好きって言いたいって事じゃないの?

 だって現実では絶対に言えないんだもの、だから夢の中だけでも殿下にこの想いを伝えるのよ。

 ここは深呼吸して、頑張るのよエイミー!


「ごめん、エイミー。流石に答えられないかな?」

「待って下さい、あの……その」

「エイミー?」

「で、殿下!わ、わた、私は……」


 夢なのにその一言を言うのがこんなにもドキドキするなんて思ってなかったわ。

 殿下はいつもどんな思いで私に好きって言ってたのかしら?同じようにドキドキしてくれてたらいいのに……。


「エイミー落ち着いて、ゆっくりでいいから。僕は逃げたりしないからね?」


 殿下が握っている手を優しく撫でてくれてるから、なんだかその手が凄く暖かく感じるわ。

 ……でも、確かにそうよ。殿下はいつだって優しくて、私をいつも見ていてくれたじゃない。

 それなのに私は王子という肩書きだけで敬遠して、殿下自体を全く見ていなかったのね。

 だから今ならわかるわ。

 殿下と護衛さんは、本当に同一人物なんだって───。


「私は、殿下の事が好きです」

「……エイミー、それは本当に?」

「やっぱり信じられないですよね、今更そんな事いっても」

「そんな事ない、僕は嬉しくて感情を抑えられないよ!」

「きゃっ!いきなり抱きしめないで下さい!!」

「エイミー!エイミー!!大好きだよ!」


 抱きしめられて凄く恥ずしかったけど、でも少しだけなら殿下を抱きしめ返しても良いわよね?

 それに、ここは夢だもの。

 こんな幸せは目が覚めたら忘れてしまうわ。


「これで僕たちは恋人同士だね」

「……でもそれはこの夢の中だけですよ、殿下」

「夢??」

「ええ、そうです。だって現実の私は殿下とは釣り合わないし、王妃なんて向いてないですから。それに悪女になってまで殿下のそばにいたくありません」

「…………成る程、エイミーが積極的だった理由はそう言う事か」

「そうですよ、夢じゃないと殿下にこんな事言えませんよ!!」


 もう、夢なんだから愚痴もでるわよ!

 それなのに殿下は私をギュッと抱きしめ続けてくれた。その優しさにどうしても甘えたくなるの。


「それならエイミーの本心はどうなのかな?僕を本当に諦めたいと思っているの?」

「それは……」

「大丈夫、ここは夢だから何を言っても僕が受け止めてあげるよ」


 さらに私をギュッとするから、その温もりが愛しくて離れたくなくて私は涙が出ていたのよ。


「ご、ごめん!僕はエイミーを泣かせるつもりじゃ……」

「ち、違うんです。本当は私だって殿下を諦めたくない!でも気がついたら殿下の事をこんなにも好きになっていて……。どうせ諦めなくちゃいけないのにこんな気持ちになるなら、最初から好きなんて感情知らないままが良かったのに……それなのに殿下の事が好きで好きでその気持ちが溢れてしまうんです、これも全部殿下のせいですよ!!」


 何を言っているのかわからないけど、とにかく涙が溢れてしまってこれ以上何も言えなくて、殿下の胸に顔を埋めてひたすら泣いてしまったの。


「エイミー、少し顔を上げて?」

「……?」


 こんな酷い泣き顔を殿下に見せたくないけど、夢だからいいわよね?

 それに何故かしら、殿下の顔が凄く近い気がするのだけど……?


「エイミー、目を閉じて」

「んっ」


 言われた通り目を閉じたら、何か唇に当たったのだけど…………?

 待ってもしかして、今の私って殿下とキスしてないかしら!!??


「っ!?」


 驚き過ぎて目を開けたら、殿下の眉目秀麗なお顔が目の前にあって更に心臓が飛び出るかと思ったのだけど!?

 

「ま、まった、まって、待って下さい!?」

「いいところだったのに、どうして突然離れてしまったのかな?」

「いやだって今……き、キス、キス……!?」

「でもここは夢だから何しても大丈夫だよね?」


 確かにそうだし、きっとこれも私の願望が反映されてるのよね?もう、なんて恥ずかしい事を望んでいるのよ私ったら!!


「でもエイミーの気持ちはわかったから、僕はもうエイミーを手放すなんてできないよ」

「……殿下」


 夢の中だけど、殿下にそう言われるのは凄く嬉しい……。


「でもこの夢が終わったら、私は現実の殿下に酷い事を言わないといけないんですよ?」

「大丈夫、現実の僕もエイミーへの愛はそれぐらいでは揺るがないからね」

「もう、諦めてもらいたいのにそれだと困るんですけど!……でも諦めが悪いのは、とても殿下らしい、ですよね……あれ?」


 何故かしら、安心したら突然眠くなってきたわ。

 夢なのに更に眠くなるなんておかしな話ね。


「エイミー、眠そうだね。ここで寝てもいいよ、ベッドには僕が運んであげるから」

「は、はい……ありがとう、ごじゃいましゅ……」

「おやすみ、エイミー。僕は何があっても君を愛してるよ」

「わ、私も……殿下の、ことを……」


 ───愛しています。

 私はその言葉を最後まで言い切れず、睡魔に負けると殿下にもたれかかるように眠ってしまったの。

 でもこんなにも幸せな夢が見れるなら、ずっと夢の世界で生きていたいなんて思いながら、朝方に目を覚ました私は……。

 夢の内容を覚えていたせいで、とても絶望してしまったのよ。


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