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匿われて1


 結婚式から逃げ出したのが昨日の事なのにもう遠い記憶のような気がして、あれは現実だったのかと私は今ボケーっとしていたの。

 それなのに目の前にいるフィア様は、ずっと心配してくれて本当に申し訳ない気分なのよ!

 だって私、驚きはしてるけどもうモリモリ元気ですからね??


「エイミー様、体調はいかがですか?」

「全然大丈夫です!それなのになんだかこうしてご迷惑をおかけして申し訳ないです」

「迷惑なんて、悪いのはアルロスを押し付けたワタクシだと何度も言いましてよ?」

「でも……」

「でもも、へったくれもありませんわ!だからエイミー様はもっとしっかり休んで下さいまし」


 フィア様は優しいからこうして庇ってくれるのだけど、でも悪いのはアルロスであってフィア様じゃない筈なのだけど……でもそう言ってもフィア様は自分が悪いって言いだしそうなのよね。

 そうだわアルロスといえば、攻撃を受けた殿下は無事なのかしら?

 昨日は混乱して聞けなかったもの、少しぐらい確認しても大丈夫よね。


「あの殿下は……アルロスの攻撃で仮面が壊れた筈なんですけど、他にも怪我とかはされてなかったですか?」

「え、ええ!?エイミー様が殿下の心配を!!」


 そ、そんなに驚かれる事なの!?

 もしかして今のでフィア様に私の気持ちがバレたりしないわよね……?


「一応助けてもらいましたので、少し気になっただけですから!本当にそれだけですからね!?」

「本当にそれだけですの……?」

「ほ、本当に本当ですって!」

「ふーん、確か殿下は少し火傷しただけでほぼ無傷でしてよ?」

「ならよかった……」


 凄い大怪我をしたのじゃないかと心配だったのだけど、フィア様が言うのだから安心ね。

 

「そのホッとした顔……もしかしてエイミー様、本当に殿下が好きになったのでして……??」

「わーーーー!!!言わないで、聞かないで下さい!!?」

「エイミー様、流石にその反応では無理がありますわよ!?」


 もう、やっぱり私ったら隠すの下手くそじゃないの!!?

 こうなったらフィア様には打ち明けて、殿下にバレないように手伝ってもらう事にするんだから!


「絶対に誰にも言わないで下さいよ!?本当に、私も信じられないんですから、あんな嘘つきおバカ最低男を好きになってたなんて……!!」

「すごいゴミクズみたいにいいますわね!?」

「だってその通りじゃないですか!!」


 フィア様のゴミクズもだいぶ酷いですけどね!?

 ても、殿下はそう言われても仕方がないと思うのよね!


「正直、殿下についてはワタクシもあまり擁護はできませんが、エイミー様のその好きと言うのは護衛の姿をしていた殿下だけではなく、普段も含めてと言う事ですわよね?」

「うぅ、そうなんです。そこが本当にあり得ないと思ってしまうのに、今も殿下の顔を思い出すだけで何故か胸が痛いんです……私は騙されていたはずなのに怒りよりも、先にドキドキが来るなんておかしいですよね!?」

「それは確かに、おかしいですわ」


 そんなきっばり言うなんて、やっぱりおかしいのは私の方なのかしら?


「……ですが、それが本当の恋でしてよ!」

「ええ!?」

「ワタクシも恋をしていますから、よくわかりますわ!!相手の全てを肯定しそうになったり、さりげない仕草に見惚れてしまったり……」


 頬に手を当てながら恥ずかしそうに言うフィア様は、本当に恋する乙女なのね……。

 もしかして、今の私もこんな感じなのかしら?


「あらいやですわ、ワタクシの話ばかりになってしまいましてよ!?」

「いえ、でもフィア様のお陰で少し頭が冷えました。フィア様だから言っておきますけど……私はこの気持ちを殿下に伝える気持ちはありません」

「え!?せっかく両思いなのにエイミー様はそれでいいのでして?」

「いいんです。だって今のままだと、私はフィア様から殿下を奪った悪女になってしまいます……!」


 そんな悪女がこの国の王妃になるなんて、いつか天罰が下るわ。

 それに私が望んでいたのは平和な日々と、幸せな家族だけ。

 だから殿下の事は諦めた方がいいのよ……。


「……悪女はそんなに嫌な事でして?」

「そんなの誰だって嫌ですよ!」

「ワタクシは好きな人の為でしたら悪女になる事も厭わないですわ!前にワタクシは殿下と婚約破棄する為に、没落を望んでいると言いましたわよね?」

「もしかして本気なのですか!?まさかフィア様は、たかが恋で人生を棒に振るつもりじゃないですよね!?」

「たかが恋ではありませんわ!!ワタクシの生涯をかけた恋愛でしてよ!?ここで諦めたらワタクシは一生恋なんてできませんわ!」


 ……フィア様が言うと言葉の重みが違うわ。

 だってフィア様の場合、諦めてしまったら殿下との結婚生活が待っているだけなんだもの。

 だからもう二度と恋なんでできないのはわかるわ。でもその為に安定した暮らしを捨てるなんて私には無理よ……。


「あら、ワタクシったら少し熱くなってしまったみたいですわね……ですがエイミー様が殿下を諦めようが、諦めなかろうがワタクシは殿下と婚約破棄する事に変わりありませんわ!!それにもう、その為の準備は既に出来上がっておりましてよ」

「……え?」

「だからワタシクの婚約破棄も秒読みでしてよ!ですがエイミー様、これだけは覚えておいて下さいまし。もしワタクシと殿下が婚約破棄をしたとしても、きっとすぐ殿下には新しい婚約者が出来るだけですわよ?」


 言われなくてもそんなのわかってる。

 それなのになんで一瞬でも、私にチャンスがあるかもなんて期待したのよ。

 私って本当、馬鹿……。


「……いいんです、私は諦めると決めましたから」

「なら仕方ありませんわね。エイミー様がそう決めたのでしたら、ワタクシもその気持ちは胸にしまっておきますわ」

「ありがとうございます」

「ですが、もし本気で殿下を誰にも邪魔せずに奪いに行くのでしたら、ワタクシは絶対に味方になって差し上げますわ!」

「フィア様……」


 その気持ちは凄く嬉しいけど、絶対にそんな日は来ないと思うわ、私の意思はとても固いのだもの!


「それはそうとワタクシは今からアルロスのところに行って、もう少し話し合いをしてきますわ。あの子は何故かエイミー様の事を、なかなか諦めてくれませんのよね~」

「そんなに、ですか?」

「ええ、それはもう駄々っ子のようで……ですがここはワタクシに任せて下さいまし!だからエイミー様はこの部屋からでてはいけませんわよ?」


 駄々っ子のアルロスとか考えるだけで面倒くさそうだわ……。でも、私がいた方がもしかして話が進むのじゃないかしら?


「本当にエイミー様は絶対に部屋から出ないと約束して下さいまし、いいですわね!」


 どうして心の声がバレたのかしら!?

 先程の事といい、フィア様は心が読めるとか?


「エイミー様は全て顔にでてましてよ?」

「顔!?」

「まあ、とにかく部屋から出ない事を守って下さればそれでいいですわ!」

「わ、わかりました……」

「それからエイミー様は悪女になんてならなくていいのですわ。だって悪女は一人でいいのですもの」


 ……悪女は一人って、それは誰の事?

 そう思っている間に、フィア様は部屋から出て行ってしまったのよ。

 そして私は、フィア様に言われた事を考えながら布団に入ったわ。


 殿下に新しい婚約者……何故かその単語だけで私の胸は張り裂けそうなほど苦しくなってしまったの。

 そして、私は夢を見たわ。

 それは殿下と屋根の上に並んで座りながら月を見る夢だったの。


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